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異世界でも魔法少女となら大丈夫だよね!?  作者: 古土師 弥生
~ 魔法少女編 ~
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【Side:ステラ】黒衣の魔法少女!?近衛隊長vsステラ!

挿絵(By みてみん)


 その場にいた全員の視線がわたしに集まる。


「魔法少女……ステラ!?」


 女魔剣士ゴールドの口から疑問とも驚きとも取れる言葉が溢れる。


 近衛隊長ゲシュタルトをはじめ近衛隊が抜刀する。騎士団長ヴェイロン、魔法院長マビノギは注視し、他の7名の勝者たちは戸惑いながらもヴェイロンから動くなと命じられ動かない。いや動けない。


「魔獣王の御前であり耐え忍んだが、最初から殺しておくべきだったな……人間ふぜいめ。」


 ゲシュタルトが合図をすると近衛隊が取り囲み、躊躇なく襲い掛かってくる!既に出来ていた覚悟とデネブへの感謝を胸に、わたしは右手を高く上げ、高らかに言葉を紡ぐ。


「星々の煌めき、この身に集えっ!マジカル☆バースト!!」


 右手のリングが輝き、無数の星々の光がわたしの身体を包み込む!


「キター!このカンジ♪」


 ボロ布を身に巻いた貧相な姿は一瞬にして気高い衣装へと変わった。


「これが『魔法少女ステラ』です!」


挿絵(By みてみん)


 その場にいる者全てがその変貌に驚いたようだ。ふふん~♪


「変身した!?それは魔法少女、なのか?」


 まばゆい純白の衣と天使のような翼をたたえたその姿に、きっと女魔剣士ゴールドの視線は釘付けになっていたに違いない。


 そんな魔法少女に変身したわたしに躊躇しつつ、2名の近衛隊員が斬りかかってきた!しかし、わたしは微動だにしなかった。近衛隊員の振り下ろした刃はわたしに届く直前で魔術刻印が施された障壁に阻まれる。


「残念でした。星々の流れに飲み込まれちゃいなー!『シューティングスター』!!」


 広げた両手から放たれた輝く流星……のハズが、違和感を感じる。2名の近衛隊員は漆黒の濁流に飲まれ壁に激突する。


「何、これ!?あれ、衣装が黒い?えぇー!?」


 そう、魔法少女ステラといえば純白が映える天使のような姿なのに、今の姿は魔法少女の衣装だけど色が黒を基軸とし、かろうじて白が入っているモノクロ基調な出で立ちであった。何より天使の翼はまるで悪魔のような黒い翼に!


「そんな……ステラは純白で天使なイメージなのに。こ、これじゃあ堕天使だよー!!」


挿絵(By みてみん)


 戸惑っている間に別の近衛隊員4名が回り込み斬りかかる!しかし、これもまた魔法の守りを通ることはなかった。


「今は迷ってる場合じゃないよね!雑魚にかまっている時間はない。一気に決めさせて貰いますよー!!『ティンクルスター・ロッド』!!」

 

 愛杖の名を叫んだ瞬間、嫌な予感が脳裏をよぎる。そう、魔獣の森海で魔法少女に変身した時も愛杖『ティンクルスター・ロッド』を顕現させようとして変身が解けた。そして今も。


「あうわぁ〜、しまったっ!?」


 『ティンクルスター・ロッド』は膨大な魔力を使うため、今のリングに注入された僅かな魔力を一気に消費し、結果『ティンクルスター・ロッド』はおろか魔法少女の変身も解けてしまった!


 そんなことはお構いなしに襲い来る剣戟を無様なカッコで逃げ惑いながら何とか避けるが、多勢に無勢でわたしは追い詰められる。


「先程の力は消えたようだな。人間が調子に乗りおって。死ねぇっ!!」


 さっきまで動揺していた近衛隊員たちは、魔法少女の変身が解けたわたしが弱くなったと理解し、小動物をいたぶるようにじわじわと距離を詰めてくる。


「落ち着け、わたし!」


 両手で頬を叩くと、自分としてはできるだけ早く呪文を詠唱した。


「火よ水よ、互いに反する力を押し示せ!『フリアティック・エクスプロージョン』!!」


 近衛隊員が突っ込んで来たと同時に火と水の複合魔法『フリアティック・エクスプロージョン』を目の前で発動させる。わたしを爆心とした水蒸気爆発が起こり近衛隊を吹き飛ばす。初級複合魔法で殺傷力はほぼ無いが、相手の隙を作るには十分だった。


◇◇◇


 近衛隊といえばこの国でもきっての精鋭であるのだが、その近衛隊複数を相手に一人で立ち回るステラに、大会を勝ち残った他の7名はその死は確実と思いながらも、どこか心踊るのだった!自分なら近衛隊相手にどう挑むかをいつの間にか考えながら傍観していた。


「ステラ、スゴイ!!」


 人狼キリコはステラが人間だということを忘れ、純粋にその勇気に感動していた!


◇◇◇


 水蒸気爆発から飛び出したわたしは、再びあられもない姿になっていた。そう、好色な魔界亀の赤い盾の力を解放し、衣服は消滅して真っ赤な荒縄がわたしの全身をきつく包んでいた。


 近衛隊を振り切り一気に魔獣王に向けて突進する。しかし、正面に立ちはだかるは近衛隊長ゲシュタルト。でも、わたしの視線はゲシュタルトではなく魔獣王を見つめていた。魔獣王もまたわたしを直視していた。


 ゲシュタルトは鞭を捨て、異様な剣と盾を手にわたしの突進を受け止める。盾と盾の激突、火花が散る中、ゲシュタルトの剣がわたしを襲う!


 さすがは近衛隊長の剣は格が違い、速さ・正確さ・威力が段違いであった。鋭い突きは赤い盾の防御結界をいまにも突き抜けようとしていた!そんな攻撃をスコールのように浴びて、微かな衝撃波だけで細かい傷となり全身から鮮血が滲む!


「(強いっ!ヴェイロンと同格だから当たり前かっ!!)」


 しかし、ヴェイロンに比べ攻撃力は劣るものの、凄くバランスの取れた戦士であり、機械のように正確で無駄のない動きは、総合的にヴェイロンを上回ると感じさせる凄みがあった。そんなゲシュタルトの冷酷さが相まって、氷のように冷たく不気味な恐ろしさを醸し出していた。


「魔界の公爵の御力は把握した。次で最期だ。」


 ゲシュタルトが言いながら、禍々しいオーラを纏わせた突きを放つ!!


「打ち砕け!『ゲシュタルツァフォール』」


 わたしは明らかにいままでと異なる危険を感じ、赤い盾の中心、最も強固な部分でゲシュタルトの突きを受ける!しかし、防御結界を容易く貫き盾ごと左腕に剣が突き刺さる!!貫通した切っ先はステラの眼前で止まる。


「あっぐうぅぅああぁっっ!!」


 痛みを堪えながらもゲシュタルトを見据える。


「一撃受けただけでその苦しみよう。所詮は下等な人間。我ら悪魔族からすれば屑のようなもの。先程の変化は興味あるが……もうよい、死ね。」


 溢れ飛び散る鮮血は赤い盾を更に赤く染める。刹那、生き血を啜り盾が成長するように形状を変え、頭に言葉が浮かぶ。


「貫け!『クリムゾン・バンカー』!!」


 変形した盾の先端から鋭い杭が飛び出し、見下ろすゲシュタルトの喉に突き刺さる!!ゲシュタルトはそのまま後ろに吹き飛ばされ倒れる。その場にいた全員が唖然となる!!


「ゲ、ゲシュタルト様がっ!?」


 近衛隊の1人が震えた声で呟く。


 ヴェイロンがゲシュタルトとわたしの間に立ち、剣を構える。マビノギは倒れたゲシュタルトの様子を見ていた。


「問題ありません。」


 マビノギが回復魔法を施す。首に10cm程の風穴が開いても生きている悪魔族。先のマルティムといい、悪魔族のチートな生命力には驚かされる。


 流血する左腕を抑えながら、立ちはだかるヴェイロンに言った。


「ヴェ、イロン……どいて。そいつを倒せない。」

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