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異世界でも魔法少女となら大丈夫だよね!?  作者: 古土師 弥生
~ 魔法少女編 ~
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【Side:ブレイブ】天国と地獄と

挿絵(By みてみん)


「あのとき僕を助けてくれた水色で金髪の魔法少女が……月島さん!?その魔法少女の名前が『アリス』。あ、そうか!だから『アリス』と名乗っているんだね。でも、こんなことってあるんだろうか!?ずっと気になっていた、ヲタク心を捉えて離さない魔法少女と月島さんがまさか同一人物で、そしてこんな異世界で再会できただなんて。何度も言っちゃうけど、奇跡過ぎるよ!!」


 興奮する俺は溢れ出す気持ちをぶちまけていた。月島さんはただ静かに聞いてくれていた。


「その……気にしないで、月島さん。前世の僕が死んだのはあのバケモノのせいだよ。月島さんが気に病むことじゃない。あの時、キミが、魔法少女アリスが助けてくれなければとっくに死んでいたさ。」


 そういえば、今の月島さんは28歳ではないかと考えていた俺だったが、目の前の月島さんは最後に会った時と変わらぬ若さだ。俺が14歳で死んで、この異世界に転生して14年経ち現在14歳だから、現世とは14年の時間差があると思ったんだけど……。


 対して、月島さんの話を聞いて驚いたのは、俺が前世で死んだあとにあのバケモノ、月島さんはそれを『魔王』と呼んだ。魔法少女たちは魔王を倒したが、その直後に魔法少女アリスは何者かの攻撃を受け意識を失い、気が付いたらこの異世界ラニューシアに居たらしい。


 それから今に至るまでの時間は3週間程度とのことで14歳のまま。僕の異世界転生と彼女の異世界転移で時間的乖離が生じたのだろう。


 それにしてもだよ、ズレた時間の先で再び同じ14歳で出会えたのだからあり得ない確率。もはや奇跡を超えて運命としか言い表せない。運命の赤い糸ってヤツなのか!?


「でも、直接の要因……死因は、わたしが吾妻くんを……その、押し潰したから、なんだよ。」


 押し潰した!?無我夢中だったから漠然としているが、そういえば魔法少女が僕を抱きしめてくれた柔らかな感触を思い出した!それが先の暗黒龍のときに感じた彼女の豊かな双丘であり、懐かしさの根源だったとは!


「だとしても、いや、だとしたらそれは本望だよ。」


 本心からそう言ったものの、ふと俺の視線は月島さんの胸元に向いていた。その視線に気付いたのか、月島さんは顔を赤くしてクルリと背を向ける。


「吾妻くん……痛かったよね、苦しかったよね。ごめん……なさい。」


 月島さんは小柄でスレンダーな割に胸はかなり大きい!それを俺は2回も堪能してしまったとは!?俺って実はラッキーなのでは?と思えてしまう。


「月島さんに助けてもらってばかりだね……俺は。結果はどうでもいいんだ。月島さんが必至に守ってくれた気持ちが、それこそが俺にとって全てなんだ!俺、月島さんのことが、その……好きです!!」


 ハッ、俺は何を言ってんだ!?気持ちが高ぶり、今まで決して言えなかった彼女への想いが溢れてしまった。でも、以前の僕じゃない。今はイケメンエルフ。


 転生前のチビ・デブ・ブサイクな最悪容姿ではないんだ。今の俺なら月島さんにふさわしい男子であり、きっとこの告白だって運命的な再会を経た月島さんに通じるハズ!!俺はカッコ良いキメ顔を作り、月島さんの瞳を直視する。


 月島さんは照れたのか、目を伏せてしまう。


「月島さん……今の俺はまさに生まれ変わったんだ。きっと君と釣り合うと思うんだ!だから、僕と付き合ってくださいっ!」


 俺の二つの人生で最大級の勇気を振り絞った告白を受けた月島さんは……


「ゴメンなさい。わたし……お付き合いは。」


 いまの俺にはほぼほぼ予想していなかった台詞を受け一気に頭が真っ白になる。あれぇ!?この出会い、再会は奇跡なのに、運命なのに……もしかして俺だけが舞い上がり浮かれていたのか!?自分の思い上がりを痛感した俺は一気に恥ずかしくなり、虚しくなり、死にたいと思った。


「あ……そ、そうだよね。今はイケメンだけど、前世の僕はデブでブサイクネクラででキモヲタで……そんなのが月島さんに告白だなんて……バカだよね。はは、は。」


 お道化てそう取り繕う俺に、月島さんは背を向ける。


「違うの。吾妻くんのことが……じゃなくて、わたしには……許嫁がいるから、お付き合いはできないの。ごめんなさい。」


「い、許嫁っ!?え?ええぇ、それ……どゆこと?」


 月島さんは富裕層がこぞって利用する有名な料亭『月しま』の一人娘で、10歳の時に許嫁に引き合わされたらしい。相手は20歳年上の実業家らしい。彼女が16歳になった時に嫁ぐことが決まっているとのこと。


 正直、彼女の話は全く理解ができなかった。14歳の月島さんがあと2年で結婚する。それも20歳以上も歳の離れた30代のロリコンジジィと!?そんなことがあって良いのか!?僕はただただ愕然とする。僕に魅力がなくフラれた方がどんなにマシだったか。俺と彼女では住む世界が違うことを深く痛感した。


 しばらく俺たちの間に気まずい沈黙が流れた……。


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