【Side:ステラ】出る杭は打たれるってホントだね
12名の出場者たちは互いに距離を取り様子を伺っていた。あと2名の脱落で大会は決着するから。自分以外で誰と誰を倒せばいいのか?誰を標的にするのが一番楽か?それぞれが考えていたことだろう。
「とりあえず~、人間なんて劣等種は要らないですよね、皆さん?それになあに、人間のくせに『カボチャの悪魔』って、馬鹿じゃないの?きゃはは~。」
魔女シールが口火を切り、人間を……つまりわたしを……嘲笑する。『カボチャの悪魔』は自称じゃないんだけどなぁ~と心の中で思う。
「異論はない。人間が悪魔を騙るのは許せない。その肉体と魂を引き裂いてやるわ!ククッ。」
悪魔族マルティムもまたわたしに敵意を向ける。人間を馬鹿にしているのだから仕方がないかな。どうでもいいけど。わたしは素朴な質問を11名に投げかけた。
「じゃあ、あと1名は誰にするんですか?」
互いに顔色をうかがう。
「そうね~、人間同様に劣等種のゴブリン、オーガ、リザードマンあたりかしらね?」
「あの巨人族は奴隷あがりの剣闘士なのだろう?我と同列など認められぬ。」
シールとマルティムは好き放題に言い放つ。
「おい、テメー等!!この俺を人間と同じ劣等種とほざいたからには、バラバラの肉片にして魚のエサにしてやる!」
リザードマンのゲランが曲刀をシールに向ける。
「では、闘いに勝つことでしか生き残れない剣闘士の力、その身に味わうがいい!」
剣闘士5370もまたマルティムに殺意を向け大剣を構える。
「魔女さんや悪魔さんはさぞお強いんでしょうね?わたし達なんかまとめてカンタンに倒せますよねー?別に10名残らなきゃいけない訳じゃないッスよね?是非見せてくださいよ、そのお力を。できるなら、ですけどねー?」
わたしは場を乱すことに成功した。楽しい~!挑発に乗ったシールが引き攣った表情で叫ぶ!
「この高貴なるダークエルフと悪魔族に対する非礼の数々、死をもって贖えっっ!!」
シールは魔女らしく手に持つ杖にまたがり、続いてマルティムも背中の羽で上空へ舞い上がる。
「下等な者たちよ、業火に焼かれ朽ち果てろ!!」
魔女シールが高速詠唱を始める。
「あれはマズイ!上級魔法の広範囲豪炎爆裂魔法『バーニングブレイズエクスプロージョン』!!」
女魔剣士のゴールドが叫ぶ。
バンパイアハーフのジオが魔銃でシールを狙い撃つ!
「邪魔はさせないね!」
悪魔族のマルティムがシールを守る魔法障壁を展開する。銃弾は障壁に阻まれる。
「巨人の兄ちゃん、肩借りるよ!」
ワーウルフのキリコが巨人族の5370の肩を足掛かりに上空のシールに特攻する!
「だから、邪魔は……」
「魔を退ける光よ、彼の魔壁を打ち破れ。『ディスペルマジック』!」
魔剣士ゴールドの魔法がマルティムの魔法障壁を消し去る!
「何ィ!?我の障壁が破られただとッ!!」
マルティムの眉間からどす黒い血液が噴き出る。マルティムの眉間を撃ち抜いたのは魔銃士ジオが撃った弾丸だった。
「済まぬ悪魔族のレディ。魔女のあの魔法は喰らいたくないのでね。」
撃たれ仰け反った体制でマルティムが言う。
「おお、そう言えばまだ劣等種がいたな。高貴なる夜の支配者ヴァンパイアと亜種が混じり合った失敗作がな。」
「頭撃たれて嫌味のひとつも言えるとは、やはり高貴な化物は違いますな。」
ジオが投げ掛ける皮肉の言葉をマルティムは仰け反ったまま聞き流す。視線の先、上空の魔女に襲い掛かる人狼を見ていた。
「突破させるなんて!?使えないヤツ!」
魔女シールは相方のマルティムを罵りながら、自分に向かってくる人狼キリコを睨む。
豪炎火球はまだ完成はしていないようで呪文詠唱を続けつつ、跨る魔法の杖での飛翔魔法も見事に制御する。キリコの突入方向を大きく避けたのだった。そして……
「完成よ!全員、塵芥となれぇ~!『バーニングブレイズエクスプロージョン』!!」
凝縮された魔力の火球を大地に投げつける。
瞬間、シールの左手が大地の方向にではなく、会場に隣接する岩場に向けて曲がり、火球は場外の岩場で大爆発を起こす!
「ひぎゃあああぁっっ!!」
絶叫する魔女シールがグッタリとして気を失う……わたしの腕の中で。シールの左手はあらぬ方向に曲がっていた。
どうなったかと言うと、空中でキリコから逃れたシールが豪炎魔法を地上に投げつける瞬間、シール目掛けて上空に飛んだわたしはその背後に取り付き、シールの左腕を力任せに曲げて豪炎魔法を場外に飛ばしたのだった。一刻を争うため力加減はできなかった。
「これであと1名で終わりだね!」
そっと地面に魔女シールを寝かせる。最初に人間であるわたしを指名したシールが最初にリタイア。いや、別に根に持っていた訳じゃないのよ。
「御苦労ダ人間。後ハオ前ノ命ヲ狩リ、オシマイダ。」
急激に背中に悪寒が走り動けない。わたしの喉元には死神の鎌があり、1mm動かせば頭は大地に転がるだろう。動けないっ!
素直に死を感じた。ここまで無防備に敵に密接されたことはいままで無かった。戦いの中、何度となく死を覚悟したが、なす術なく死が隣にある恐怖は初めてだった。
ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございます。(´∀`)
何だかんだで目立ってしまうステラ、出る杭はキミだね。でも叩かれるのを楽しんでいるように見えるのは気のせい?( ゜Д゜)
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