【Side:ステラ】女子高生ステラ vs 単眼の魔獣……決着!
全身を流れる熱く鈍い痛みで目を覚ますヴェイロン。四肢を動かそうと試みるがまるで自分の身体ではないと錯覚するほどにいうことが利かず、上体を起こすことが精一杯だった。
「生きている!?」
騎士ヴェイロンは身体の痛みに生を実感できた。次に辺りを見回す。
「あれは!?」
かなり離れたところにステラらしき塊と魔獣が地面に重なっているのを見つける。いま正にステラが魔獣に捕食されているのだろうか?
「(動け、動くんだ!このッ!!)」
早く行かなくては!と自分の身体に鞭を打つが思うように動けないことに焦りを感じるがそれ以上はどうしようもできなかった。たとえあの場に辿り着けたとしても、今の自分ではステラ同様、魔獣に殺されてなお残虐な行為が続くだけだろうと感じた。いまできることは遠くからただ眺めるだけだった。
普段のヴェイロンであれば、目的のためなら味方であっても当たり前のように利用し切り捨ててきた。今のような状況であれば、真っ先にステラを差し出し、機を伺い魔獣を仕留めるか、その場を離れていたはずだ。そうできなかったのは、出会いからステラにしてやられたことで単純に騎士としてのプライドをズタズタにされたからだろう。
単眼の魔獣は名を『グレーターデーモンズアイ』。この森の魔獣の中でも高位の存在だった。ヴェイロンもこの魔獣に出会うのは初めてで、魔獣達との戦闘が連戦だったとはいえ、万全の状態でも倒せたというイメージが掴めなかった。それほどこの魔獣の森海には未知で巨悪な魔獣が住み着いていた。
ヴェイロン渾身の力を込めた魔剣を何度となく打ち据えたが倒すことができなかったこと。そして、自分より格下と考えていたステラに「貴方を守るから!」と言われ、ステラはその言葉の通り行動し、結果として自分を守ることになる……自らの命と引き換えにして。
ヴェイロンは自分の不甲斐なさや驕りに苛まれながら、あらためて魔獣に目を向けると……魔獣も動いている様子が無かった。しばらく凝視しても変わりなかったため、時間を掛けつつもステラと魔獣のところに向かった。
「死んでいる、だと!?なんだこれは!!」
単眼の魔獣『グレーターデーモンズアイ』は既に息絶えていた。そして、その強固な単眼には深々と短剣が突き刺さっていた!!!
「私の短剣が……何故?ステラがやったのか??あり得ぬ!!」
この短剣も魔剣の類ではあったが、ヴェイロンがいつも使っている大剣の魔剣には遥かに劣るものだった。自慢の大剣で砕けなかった魔獣の単眼を短剣で貫かれていたことに、更にプライドを打ち砕かれるヴェイロン。
そこに語り掛ける声が聞こえる。消えそうな……ステラの声だった。
◇◇◇
「ヴェイロン……大丈夫?生きてて、よかった。わたしは……死んじゃうかな?はは。」
全身ズタズタで四肢も不自然に折れ曲がり、かなりの出血を伴っていたが、その時のわたしは自分状態よりヴェイロンが無事だったことが嬉しかった。ヴェイロンは静かに問う。
「ステラよ選べ。いますぐ死んで楽になりたいか、命が持つかは分からんが生きたいか。望みを叶えてやる。」
ヴェイロンはわたしの最期の望みを叶えてくれているのだと悟った。正直、もう痛みも何も感じなくなっていて頭がぼーっとして考えられなかった。現世での魔王との戦いでもこんなにボロボロになったことはなかった。魔法少女の力がどれほど凄かったのかを感じつつ、自分はもう長くないと実感していた。
色々なことが頭の中を駆け巡る。小さかった頃、隣の弟みたいに仲良かった幼馴染との日々、中学生で部活にのめり込んだ日々、高校生になって……唐突に魔法少女になったこと、仲間たちと力を合わせ遂に魔王を倒したこと。そして……魔法少女アリスに襲い掛かった凶事。この走馬灯が導き出したのは……
「まだ死ねないんだ。助けて……ヴェイロン。」
前者を選んでいたらヴェイロンは迷わずこの場でわたしの命を奪っていただろう。後者を選択したわたしを抱きかかえ……囁く。
「では、死ぬな。」
恥ずかしいのかな?声が小さ過ぎて面白かった。今までの苦労がそれだけで報われた気がして、気が抜けてそのまま意識を失った。
◇◇◇
ヴェイロンはステラの安らかな寝顔を一瞥して呟く。
「不思議な人間だ。『魔法少女』とか言ってたか?そうだな……魔法のようだ。」
ステラとの出会いは不思議な魔法のようであったと思い返すヴェイロンであった。
ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございます。(´∀`)
ボロ雑巾のようになった女子高生ステラ。それでも(かろうじて)生きてるとはしぶとい。再起できるのかは後々のお話にて。(o ゝω・)b
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