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異世界でも魔法少女となら大丈夫だよね!?  作者: 古土師 弥生
〜 暗黒編 〜
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【Side:ステラ】想定外にも程があるよね!?

挿絵(By みてみん)


 騒然とするグランツバース砦。


 黒曜龍ダルクシュレイヴァが降り立ったことで砦のあちこちは崩れていた。彼のドラゴンに立ち向かい者はなく、砦を越える巨体と威圧感に兵たちは震えていた。


 砦の最上階にある見張り台では砦長でケンタウロスのベックスガルもまた目の前の光景に愕然としていた。黒曜龍の肩に立つわたしは眼中に入ってないようだ。


 わたしはダルクシュレイヴァに耳打ちする。


「ダルクさん、あそこのケンタウロスをちょっと脅かしてくれる?アイツ嫌いなんだ。ね!そしたら剣抜くからさー。」


 ダルクシュレイヴァに脅されればベックスガルもわたし達に下した、黒曜龍ダルクシュレイヴァ討伐と言う無理難題な命令を撤回するだろうと考える。ナイスアイデア〜!!


 ダルクシュレイヴァは背中の剣を抜いて欲しいからか、素直にわたしのお願いを聞いてくれた。


「容易いことだ。」


 そう言うと黒曜龍ダルクシュレイヴァはベックスガルに灼熱のブレスを吐く。砦の見張り台が溶解して無くなる。


「は!?」


 目を疑った!!!


 砦中が混乱に包まれ、兵士達は逃げ惑う!!


「ダルクさん、逃げよう!」


「逃げる?何故、我等が逃げるのだ?壊滅させれば良いのだろう?容易い!」


 もう一撃ブレスを吐き、砦の3割が消滅する。


「もういいから。早く行こう!剣を抜くからぁー!!」


 何でこうなったのか!?訳が分からないっ!!とにかくこの場を離れなければ!!!


 背中の剣を抜くと言う言葉に反応し、黒曜龍は翼を羽ばたかせ、砦を後にする。


 ベックスガル砦長、ごめんなさい!まさか殺すなんて!!嫌なヤツだったけど、流石に自分のせいで他人が命を落とすことに心が重くなる。砦もメチャクチャになり、きっと他にも死傷者が出たはず……。


 ど、どうしよう〜!?


◇◇◇


 小高い草原の丘を駆け上がる青毛の狼。


 狼化した人狼のキリコ小隊長がグランツバース砦を視認できた時には黒煙が立ち上がっていた。


「なんてこと!黒曜龍が砦を襲ってるのか!?ステラ……死んでないよね!?」


 キリコは丘を降りグランツバース砦に猛進する!


 砦が目前に迫った時、突如として吹き荒れる突風に身を屈めて耐えるキリコ。天が急に闇に包まれ、仰ぎ見ると砦から黒曜龍が飛び立っていく。舞い散る砂塵の中、黒曜龍の背中に見えた人影。


「ステラァァァー!!」


 それは間違いなくステラの姿だった。キリコは狼化を解き力の限り叫ぶ!だが黒曜龍の羽ばたきにその声は掻き消された。天を遮る暗黒の巨体は物凄い速さで瞬く間に飛び去る。


 キリコはただ天を仰ぎ立ち尽くす……一糸纏わぬ姿で。


◇◇◇


 サスロザ火山の火口。


 マグマに身体の半分を浸すダルクシュレイヴァとその背で白い剣を握りしめるわたし。


「失敗するなよ。失敗したら殺す。いいな、絶対に失敗するな!」


 ダルクシュレイヴァは厳しく念を押す。


「オ、オーケィ。少し……待って。」


 心中はまったくオーケィではなかった。グランツバース砦での惨劇の後どうしたら良いのか見当もつかず、何より罪もない多くの兵士たちを傷付け死に至らしめたことが頭から離れず、剣を抜くことに集中出来なかった。


「大丈夫か、ステラ?」


 ファントマ・Kが声を掛けてきた。そっか彼が居たんだった。それすら忘れる程に自分でもパニックなのが分かる。


 この場で待っていたファントマ・Kはダルクシュレイヴァが動かなくなったのを見計らって出てきたのだろう。ダルクシュレイヴァは疲れたのか待ちくたびれたのか眠りに着いたようだ。


 わたしはファントマ・Kに経緯を話す。


「何……だと?貴女は本当に訳が分からない人だ。黒曜龍に連れ去られ死んだものと思いきや、まさか打ち解けるだなんて!そして黒曜龍と共にグランツバース砦に赴き……ベックスガル様を亡き者とし砦を破壊したなど……暗殺者の俺が凡庸に思える悪行!!悪名高い『カボチャの悪魔』……まさに悪魔ですね。」


「まさかこんなことになるなんて思わないじゃない!ドラゴンと意思疎通なんてできる訳ないよ!!まぁ……何を言ってもわたしが悪いんだろうけど。」


 わたしって悪名高いんだ。ファントマ・Kは塩に塗りたくった言葉のナイフでわたしの心をザクザク滅多刺しにしてくる。でも、そんな罵詈雑言で開いた傷口からわたしの中で澱んでいた膿が流れ出し……心が少し楽になった気がした。


「だが、生きていて良かった。」


 何気ないファントマ・Kの言葉。何だろう、ドキッとした。あれ、顔が火照ってる?コレってまさか!?


「しかし、何故……裸なんですか?」


「え?」


 言われて自分の姿を見てみると……レッド・ヘルタートルの盾の効果が切れ、身体を覆っていた真紅の縄も無くなっていた!つまり……全裸になっていた!!


「いやあああ〜!」


 ファントマ・Kに裸見られた!!凄く恥ずかしい……。


「やかましいですね。それより剣を抜くのでしょう?早く抜いてください。」


 両手で胸と股間を隠しながらオロオロするわたしに催促するファントマ・K。その視線は真っ直ぐにわたしを見つめていた。


「は、裸のまま抜かせる気?鬼畜……」


「好きで露出したのでしょう?ほら、見ててあげますから早く抜いてください。」


 顔が火照ってるのが自分でも分かるのだから、直視するファントマ・Kには一目瞭然だろう。うー、恥ずかしい〜。再びレッド・ヘルタートルの盾を発動させようとするが叶わなかった。何で〜???


「あのさ、あっち向いててくれない?」


「監視者だからな、貴女から目を離すことはできません。任務ですから。」


「そんなこと言って、わたしの裸を見たいだけなんじゃないの?ファントマ・Kのエッチ!そんないやらしい目で見られたらやりにくいんですけどー。」


 ファントマ・Kの涼しい態度に文句をぶつける!


「あぁ、そうですね。貴女の裸体はとても綺麗ですよ。任務でなくても見ていたいですね。これでも欲情を抑えているのです。困っているのは貴女だけでないことを理解してもらいたい。」


 んなぁ!?何てことを言うのよ、このアサシン!?つまり……わたしの裸を見て欲情しているってことよね!ど、どうしよう〜!!


「魔法少女だったか?服くらい出せないのか?魔法で。」


「え?あ……う〜ん。」


 色々と妄想していたわたしに問い掛けるファントマ・K。


 そう、服を身に付けようと思えばできる。魔法少女に変身する、それだけで全裸の問題は解決する。でも……それだけは避けていた。


 理由は……黒衣の魔法少女に変身することで、わたしの中の悪意に満ちたわたしが出てくるのではないかと危惧していたから。


 少し前に人狼のキリコをあわや殺す一歩手前だったことが少なからずトラウマになっていた。


「変身は……できないからさ、アンタの服貸してくれないかな?」


「嫌です。」


 さっきドキッとして損した!JKが全裸なのに布の一枚も渡さず、この姿を欲情しながら凝視するなんて、クールでカッコイイけどただの変態に違いない!!


 わたしは黒曜龍ダルクシュレイヴァの顔に向かって叫ぶ。


「ねー、ダルクさん。あのアサシンぶっ殺して〜。そしたら剣を抜くから〜。」


 だが目覚める様子は無かった。深い眠りについているようだ……。


「ステラ小隊長、どういうことだ!?」


「デリカシーの無い変態さん、胸に手を当てて考えなさい!」


 むにっ


「ふぁーーーっ!?」


 そっぽを向いた刹那、ファントマ・Kはわたしを背後から抱きしめ……わたしの胸を揉む。


「胸に手を当てたが……何を考えろと?」


 火口にわたしの絶叫が響き渡った!!!

ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございます。(´∀`)


破天荒なステラも想定外にはパニくるんですね〜。いい気味です!(゜ω゜)


お読みいただいた感想や評価をお願いします。いただけると今後の励みになりますし、もっと良い話にできますので、是非ともお願いします。m(_ _ )m


毎週金曜日に定期更新してますので、また宜しくお願い致します。(๑>◡<๑)

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