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異世界でも魔法少女となら大丈夫だよね!?  作者: 古土師 弥生
〜 暗黒編 〜
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【Side:ステラ】黒曜龍ダルクシュレイヴァ

挿絵(By みてみん)


 広く青い大空を風に乗って飛ぶことがこんなに……ツライとは思わなかった。


 火口から大空に飛び出した黒曜龍ダルクシュレイヴァはものすごい速さで飛行していた。


 その背中には白い剣の柄に捕まるわたしの身体は煽られる突風の波に翻弄される鯉のぼりのようになっていた。


「寒いいいいいぃぃィィィーっ!!」


 さっきまで汗だくになる程の高温な火口から一気に雲にも届きそうな上空を飛行しているのだ、急激な温度低下に晒され感覚が麻痺してくる!こんな状態では数分と持たず大空に放たれ地面に激突しジ・エンドだろう。


「このままじゃ……まずい……」


 意識が薄れていく……


◇◇◇


 大空を飛ぶ黒曜龍ダルクシュレイヴァは先程までの荒々しい飛び方ではなく、いまは雄大な青空と白い雲の海原を楽しむように舞っていた。


「ふぅ〜、やっと痛みが治まってきたわい。」


「ねー、何処に行くのよー?」


 思い掛けない声に一瞬ビクッとしたのが分かった。ドラゴンでも驚くんだな〜。


「ん?まだ居たのか、人間。とっくに落ちて死んだと思っていたわ。」


 わたし自身、そうなると諦めかけていた。


 突風の中、意識も感覚も失いかけたわたしは何となく、そう無意識に左腕の真紅の盾の力を解放した。展開された球体状の結界は見事に突風を遮ってくれたのだった!


 レッド・ヘルタートルの盾、万能過ぎ!


 ただ……わたしの衣服は全て魔界の炎に焼かれて無くなったけど。真紅の盾から伸びた真っ赤な紐が身体のほんの一部を縛るように覆っている程度の半裸状態。一応大切な部分は隠れてるので助かる。しかし、相変わらず縛り方がキツイ。


 結界で突風は遮れても寒さまでは防げず、半裸にその寒さは耐え難い!そこで、魔法の火を緩やかな風の膜で覆うことで即席のヒーター、複合魔法『ヒートエアー』を作ってみました。暖かい風が結界内の寒さを和らげることに成功。これで何とか凌げそうだ。


「勝手に殺さないでくださいよ〜。」


 半裸のわたしは黒曜龍の背中にあぐらをかいて座っていた。


「ダルクさんはこの剣が刺さって苦しいのかな?」


 厚く硬い黒曜龍の鱗に深々と刺さる白い剣について尋ねる。


「ダルクさん?我のことか?そうだ!忌まわしいその剣が数百年に渡り我を苦しめておる。ここ最近は特に苦痛が頻繁に起こり、気が狂いそうだ!!」


 黒曜龍の悲痛な叫びが聞こえる。


「数百年も!?何で抜いて貰わないのよ?」


「その剣は魔を退ける力に満ちており、魔の者は触れることすら叶わぬ。そもそも神聖な者がこの我を討つためにその剣で襲ってきたのだから、神聖な者がそれを抜く故もなし。だからこそ数百年、我を苦しめているのだ!いや、剣に触れし貴様は神聖な者か!?しかも更に剣を深く刺しおって!!」


 黒曜龍ダルクシュレイヴァの声色が変わり明らかな殺意に染まっていった。


「違う違う!わたしはゴーファンの王宮騎士団小隊長のステラ。分かってるみたいだけど人間だよ。魔の者とか神聖な者ってのはよく分からないけど、この剣を抜いて欲しいんだよね?」


 わたしは自己紹介をしつつ、黒曜龍を長い間苦しめているこの白い剣を抜くことを考える。


「魔獣王の手の者だと?だが、人間如きが王宮騎士団小隊長?謀るな!」


「んと……わたしはこの世界とは別の異世界から来た魔法少女なんだよぬ。普通の人間とは違うってカンジ?」


 しばらくの沈黙。あれ?ドラゴンには難し過ぎたかな?


「どうでもいい。剣に触れられるのなら貴様がその剣を抜け、さぁ早く!」


 黒曜龍ダルクシュレイヴァが命令する。抜いてもらう立場なのに偉そうだ。あちこちで暴れ回り甚大な被害を撒き散らしている邪龍だから仕方ないか。


 でも……それも剣の苦痛が原因なら、それを取り除いてあげれば悪さもしないのではないだろうか?強がってはいるけど数百年に渡る苦痛に心底困っているのだろう。


「オーケィだよ!でも、飛んだままだと揺れて抜きづらいかな。」


「では、何処なら良いか?」


 地上に降りてくれればどこでも構わなかった。


「別にどこでもい……いや、そうだ!」


 剣を抜いて欲しい黒曜龍はわたしの示す方向に飛んだ。


◇◇◇


 突如木々を揺るがす突風と地鳴りが起こる!


「きゃあ〜!!」


 よろける闇司祭見習いのシオンを抑えるアサシンのシャドウ・Q。


「あれは!」


 人狼のキリコ小隊長は木の上に登り上空を見上げると、巨大な黒い影が天を覆う。


「黒曜龍……ダルクシュレイヴァ!!」


 天空を飛行する巨大な龍の姿!サスロザ火山とは別の方向に飛び去る黒曜龍!下に降りたキリコは見たままを報告する。


「黒曜龍の背にステラがいた。まさか交戦していただなんて!?」


 その言葉に一同衝撃を受ける!


「えぇ~!?黒曜龍と戦ってるんですか!?」


「考え得る最悪の結果だな。どうする、キリコ小隊長?」


 キリコは思案した。黒曜龍を追いステラを回収する。しかし、シャドウ・Qは問題ないだろうが、シオンが走って着いて来れるとは思えない。


「シャドウ、シオンを頼む。ここで待機だ。わたしは黒曜龍を追う。2日して戻らなければ王都に戻り軍に報告してくれ。」


 要件を伝えたキリコは瞬時に狼化して疾走する、黒曜龍が飛び去った方角に!


 地面にはキリコの着衣が残されていた。


◇◇◇


 ドンドンドン!


「うるさいぞ!入れ!!」


 このグランツバース砦の長であるケンタウロスのベックスガルは、入ってきた兵の報告に仰天する!


「な、何だってエェェーーーッ!案内しろ!!」


 ベックスガルは砦上部の見張り台から外を見ると、同じ位の目線の先に黒く巨大なドラゴンと目が合う!


 兵士達はドラゴンを遠巻きに眺めてるだけだった。砦に飛来したのが只の魔獣であれば兵士達は迷わず迎撃しただろう。


 しかし相手はこの国で古より語り継がれてきた『黒曜龍ダルクシュレイヴァ』であったのだから何ができようか?いや、何もできまい。


「何で、黒曜龍が砦にいるんだぁ!?」


 ベックスガルは腰を抜かしたようにヘタリ込む。


「ご無沙汰してます、ベックスガル砦長。小隊長ステラ、黒曜龍と交戦中であります!どうしましょう?」


 わたしは黒曜龍の肩に立ち、ベックスガルに報告をする。


 とても交戦中には見えないツーショットだが、ベックスガルはじめ砦の兵達は正常な判断ができない状況から、いまは不自然とは感じられなかった。


「ス、ステラ!!貴様、どうなってるんだぁ!?これは、これは……何だ一体??」


 もはや冷静さを失うベックスガルであった。

ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございます。(´∀`)


ちゃっかり黒曜龍と意気投合する魔法少女ステラ。向かった先はパワハラ上官の居る砦!どーなるの〜?(*⁰▿⁰*)


お読みいただいた感想や評価をお願いします。いただけると今後の励みになりますし、もっと良い話にできますので、是非ともお願いします。m(_ _ )m


毎週金曜日に定期更新してますので、また宜しくお願い致します。(๑>◡<๑)

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