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異世界でも魔法少女となら大丈夫だよね!?  作者: 古土師 弥生
〜 暗黒編 〜
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【Side:ステラ】嘘八百も方便だよね?

挿絵(By みてみん)


「やるじゃな〜い!」


 下ではアサシンAが魔獣の大群に襲われていた。その様子を木の上で眺めるわたし。


 『魔獣の森海』、そこは森自体が一個の魔獣のように、侵入者を駆除すべく多くの魔獣たちが絶え間なく襲い掛かってくる。


 わたしはアサシン達が5mは距離を取る習性を利用して、敢えて魔獣溜まりになりそうなポイントにアサシンAを誘導したのだった。


 『魔獣の森海』がわたしにとってこの異世界のスタート地点であり、散々迷い、散々魔獣に襲われた経験がまさか活きるとは思わなかった。


 案の定、魔獣達がアサシンAをタゲってまっしぐらに襲い掛かる。


 アサシンAは魔獣達を薙ぎ払いつつ、わたしのように木の上に退避を試みるが、木の上に上がれないようわたしは魔法でそれを邪魔する。まるで、冒険者を罠にかける悪役の所業そのもの……かつ、ゲーム感覚でちょっと楽しい。


「ほら、後ろに魔獣いるよ!」


 嘘である。アサシンAの背後に魔獣は居ないが、アサシンAを動揺させる心理戦である。楽しい〜!


 因みにわたしが腰掛ける木は安全地帯。王宮騎士団長ヴェイロンとこの森を彷徨った際に教えてもらった豆知識。見た目は他の木々と同じなのだが、この『マの木』だけが魔獣を寄せ付けない効力があるらしい。もちろん見分け方も聞いていたので、今になって分かるありがたみ!ヴェイロン様様です。


「いい加減に負けを認めれば助けてあげるからさぁ。言っちゃいなよ。」


 文句一つ口にせず黙々と魔獣の大群の攻撃を必死に避け続けるアサシンAに降伏勧告を投げ掛けてみるが、アサシンAはまるで無視していた。


 奮闘すること30分は過ぎた辺りからアサシンAの動きに疲労が見え始める。反比例する様に魔獣の数は増え続け、ついに魔獣の濁流に飲まれるアサシンA。


「ありゃ。仕方ないか。」


 わたしは魔法の高速詠唱を始める。


 高速詠唱は中級魔法以上で使用される魔法言語であり、その呪文は王宮武闘大会でダークエルフの魔女『シール』が放った広範囲豪炎爆裂が売りの上級魔法だ。


「できた!!行けぇ『バーニングブレイズエクスプロージョン』っ!!!」


 見事発動し、放たれた火球が魔獣溜まりの上で大爆発して魔獣達を焼き払い吹き飛ばす!!生き残った魔獣は生命の危機を感じたのか散り散りに逃げ去って行った。


 小隊長着任後から日々魔法の高速詠唱を練習していたんだけど、もともと勉学は得意な方ではなく、どうにも理解が出来なかった。ましてや異世界の勉強なんて……。指導を仰いだデネブには匙を投げられる始末。


 ダメ元でデネブから提案されたのは、理解せずに呪文を歌を覚えるようにやっては?というものだった。魔法使いの子供が親の唱える呪文を覚え、口ずさむことで魔法が発動した事例があるらしい。今では子供の前では不用意に危険な呪文を唱えるのは御法度だそうな。


 ということで、高速詠唱の才能がないわたしには耳で覚えて完コピしろということだった。それで魔法が発動するかは知らんけどと投げやりだったが。


 200回以上練習して発動回数37回。18.5%程度の確立だったが、当然後半ほど発動していたので、身には付いて来ていた。


 因みに、わたしが覚えた初級以外の魔法はこの上級魔法『バーニングブレイズエクスプロージョン』だけであった。何かカッコよくてね!


 さて、魔獣に襲われ、爆発で吹き飛ばされたアサシンAはと言うと……かなり離れた場所で魔獣達の死骸に埋まり気を失っていた。魔獣たちが肉の壁となり命は取り留めたようだ。


 うん、計画通り!


◇◇◇


「ここは!?うぐっ!」


 アサシンAは身体の痛みを感じつつ、周りを見渡す。


「起きた?身体の調子はどう?」


 焚き火越しに声を掛ける。


「何があったのだ?いや、何故助けたのか?」


 アサシンAは疑問を投げかける。


「ん、別に敵じゃないし。助けるでしょ?食べる?」


 ステラは焼いた肉を頬張りながら答える。


「いや、いい。貴女は何がしたかったのだ?無茶苦茶だ。」


 アサシンAは起き上がろうとするが、苦悶に満ちた声を上げ荒く呼吸をし苦痛に耐える。全身が火傷しているのだ、無理もない。


「何だろうね?成り行きかな。わたしなんかに付き合うことなかったのにさ。バカだね〜!あはは。」


「任務だからな。」


「そんな無茶な任務を与えられて貴方達も大変だよね。あ、わたし達もか。あの砦長のヤツ許せない!帰ったらヴェイロンに、いや、魔獣王に砦長を罰してもらおう!パワハラだよ、まったく!!」


 わたしの愚痴にただ黙っているアサシンA。いや、単に聞き流しているのだろう。


「でまかせだと思ってるでしょう?」


 そう言うと、わたしは胸元からペンダントを出す。


「これが何だか分かる?」


 以前、ヴェイロンがデネブに託してわたしに渡されたもの。


「それは……王宮騎士団長の紋章!貴女は何者なんだ?人間が小隊長というだけでも尋常ではないのに!?」


 驚きを隠せないアサシンA……食いついてきたぞ〜!


「ここだけの話、わたしはヴェイロンが人間に産ませた子供なんだよ。だから、ただの人間じゃないんだ。実力を見れば分かるよね?貴方達は王宮騎士団長の娘に何かしようなんて考えないよね?ね?」


 嘘八百を並べる。


「合点がいった!確かに、そうだと思える、それなら。そうなると、我等はどうしたら。頭に報告せねば!」


「焦らないで。その身体ではすぐには動けないよ。とりあえず回復ポーションを飲んで。あとは食べられるなら焼いた肉ね!食べて寝れば治るから!」


 渡されたポーションを口に運ぶアサシンA。さっきまで疑っていたのにあんな嘘で簡単に騙され、手のひらを返したように信用し切っていた。


「こ、これはアァァァーッ!?」


「ええぇぇぇー!?」


 アサシンAの身体の傷や火傷が急速に回復して行き、瞬く間にほぼ完治していた!


「デネブから貰った回復ポーション、ヤバッ!!」


 普通の回復ポーションを遥かに凌ぐ回復効果であり、逆に中身が気になってしまう。副作用とか……。


 あれ?この世界には回復魔法やこんな凄い回復ポーションがあるのに、わたしが瀕死のときの治療は水槽の中に閉じ込められたよね?アレ必要あったぁ??


 以前この森で負った怪我をデネブに治療された時のことを思い出す。今度デネブに確認しようと心に誓うのだった!


「ありがとう、ステラ小隊長!こんな自分などにこんな高価な回復ポーションを与えてくれて……感謝します。」


 アサシンAの怪我の8割以上わたしの魔法が原因だったが、そのことに気づいていないのか、もはやわたしを崇めるアサシンA。チョロい!


「さ、夜が明けたら森を出て、キリコ達と合流しよう。」


 アサシンAに頷く。


 問題は……果たしてこの『魔獣の森海』を無事に抜け出し、キリコ達と合流できるかということだった。

ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございます。(´∀`)


いやぁ、ステラはたくましいと言うか何と言うか……魔法少女は伊達じゃないと言うことでw


お読みいただいた感想や評価をお願いします。いただけると今後の励みになりますし、もっと良い話にできますので、是非ともお願いします。m(_ _ )m


毎週金曜日に定期更新してますので、また宜しくお願い致します。(๑>◡<๑)

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