【Side:ステラ】大誤算!?勝負の行方や如何に?
わたしは提案する……黒曜龍討伐より監視者のアサシン達を倒して助かろう作戦を。あんな規格外な暗黒龍を相手にすることに比べれば、暗殺者3人を相手にした方が遥かに生存率は高いから。提案を受けたキリコとシオンは戸惑うがすぐに賛同してくれた。
そこでわたし達は二手に分かれ、『キリコ・シオン組』と『ステラ組』を追い掛けたアサシン達の構成は次の通りだった。
【キリコ・シオン組】
アサシンリーダー・アサシンB (ずんぐりむっくり)
【ステラ組】
アサシンA(長身細身)
つまりは……計画通り。
アサシンリーダーがまっとうな思考の持ち主で良かったと心から思う。だからこそリーダーなのだろう。
小隊長であるキリコとわたしが分かれた時点で、キリコとシオンの2人組にアサシンリーダーともう一人が行くだろうと考えた。
アサシンAとアサシンBの実力や関係は分からないので、もしかしたらアサシンリーダーがわたしに付いて来たかもしれないが、それはそれでなるようになるかな?と。
つまりは、行き当たりばったりだった。
◇◇◇
「きゃっ!!」
足が木の根に取られ転倒するシオン。
「シオン!?大丈夫か?」
シオンのところに戻り手を貸すキリコ。
5m後方にアサシンリーダーとアサシンBが立っていた。
「逃げられると思ったのですか?キリコ小隊長。」
アサシンリーダーがキリコに問う。
「逃げる?何を言っているのかな。先を急いだだけだが、問題でも?部下が足を怪我したので、ここで休むよ。問題無いよね?」
キリコが答える。
「なるほど。あくまで黒曜龍討伐は続けていると仰るのですね?」
「おいおい、ちょっと走っただけでヒドイ言い様だね?それに良くしゃべる。そんなに聞きたいなら、こっちに来て仲良く話そうか。」
キリコはアサシンの二人を招くように手招きする。
「何故、ステラ小隊長は別行動を?」
逃げられるリスクを避けるためか、キリコの言葉に乗り近づくアサシンリーダー。アサシンBにはそのままの位置で警戒していた。
「さぁ?何か用事があるからとか言ってたなぁ。詳しくはステラが戻ったら聞いてみてよ。」
はぐらかすキリコ。
アサシンリーダーは考える。これで終わる訳がない。必ず何か仕掛けてくる。再び隙を見て逃走するか、不意をついて襲ってくるかと。
「リーダーさん、お名前は?教えて欲しいな。」
シオンが体育座りで転んだ時に左膝に出来た擦り傷の出血をガーゼで押さえながら、立っているアサシンリーダーに上目遣いで尋ねる。その際、痛みを堪えながらも笑顔を見せる。なお、敢えて回復魔法は使わず。
「まだ名乗って無かったな。『シャドウ・Q』と呼ぶ……がいい。」
シャドウ・Qは視線を逸らしながら答える。距離と角度的に、シオンの短いスカートから伸びる太ももの付け根まで見えていた。
「シャドウ・Qさんかぁ。カッコイイ名前ですね!ステキです。」
背けた顔を戻した時にチラリと下着が見える角度に足を少し開いてみせる。チラリズムをわきまえているシオン。
そこからシオンの猛アピールが始まる。しかしながら、シャドウ・Qはどこか意識しているものの、部下がいるためか、職務を全うするためか、シオンの色仕掛けを回避し続ける。
1時間の攻防が不毛に終わり、疲れたシオンはキリコの肩に寄り掛かり泣き寝入りする。キリコもうつらうつらしている。
そんな2人に呆れ、シャドウ・Qは5m離れた位置、アサシンBのところに戻る。
「どう思う?アイツ等オトリで、ステラ小隊長が何か仕掛けてくるのか。」
「楽しそうでしたね。あんなベッピンさんに言い寄られて。怨めしいですよ、全く。まぁ、ありゃ、時間稼ぎでしょう。ちょいと拷問すればどうとでもなりそうですがね。やりましょうか?」
こうなるとステラを追ったアサシンAが気掛かりだった。
新米小隊長とは言え『カボチャの悪魔』の異名と奇行は聞いていた。ただ、アサシンAには絶対の信頼を寄せていた。何故なら、アサシン三人の中での最大戦力だったから。
ステラの思惑はそこで狂うことになる。
◇◇◇
「ステラ小隊長、それで終わりですか?」
初めて聞いたが、なかなかのイケボで問いかけるアサシンA。
キリコ達と別行動を取ってからというもの、アサシンAと1時間以上追いかけっこしていた。
わたしは身体強化魔法で脚力を上げていたが、アサシンAは緩急はあるが確実に追跡してきた。
埒が開かないので、魔獣の深森に面した開けた草原でアサシンAと対峙する。
「やるじゃない、ハァハァ……わたしに付いてくるなんて。」
息が上がるわたしに対してアサシンAは静かにこちらを見つめる。
「逃げることはできませんよ、ステラ小隊長。」
「あっそ。じゃあ、次はアナタの腕前を見させてもらうね!」
わたしは背負っていたメイスを構える!
旅立つ前、わたしは装備として魔法力を上げるロッドを試すが、殴るには打撃力が物足りなく、魔法力向上と打撃を兼ね備えたメイスを選んでいた。
「大地に転がる石よ、彼の者を打ち据えろ!『ロックブラスト』」
アサシンAの足元に点在する石ころが一斉に彼に襲い掛かり、勢いのある多くの石つぶてがぶち当たる!!
結構なダメージだと思うが、アサシンAはガードして踏み止まる。そんなアサシンAにすかさずメイスの一撃をお見舞いする!!
ガギンッ!!
アサシンAは手甲でメイスを受け流すと同時にわたしのみぞおちにしなやかな蹴りを繰り出す!
「グフッ!!」
それは身体強化の壁を優に越える威力の蹴りだった。
「ステラ小隊長、それで終わりですか?」
「あなた強いね。誤算だよ。」
「敗北を認めますか?」
「じゃあ、第2ラウンド行こうか〜!」
脱兎の如く走るわたしにアサシンAはやれやれと首を振り、後を追ってくる。
「まさか!」
ふたりが走る方向、それは『魔獣の森海』だ。さっきの話が本当ならアサシンAにはこの『魔獣の森海』は初体験。なら経験済みなわたしの方が有利!
「おいで、アサシンさん!覚悟があるならね?あはは〜!!」
「笑いながらあの魔境に飛び込むなど……狂ってるのか!?だが、逃がさん。」
アサシンAもわたしを追って『魔獣の森海』に立ち入る。
◇◇◇
半日が経ったが、ステラとアサシンAは一向に帰って来なかった。
「どうなってるんだ?何で戻って来ないんだよー!!」
キリコがイライラしながら叫ぶ。
「まさか、アサシンさんに……変なことされてないですよね?」
シオンがイヤな予想をする。
「逆……かもよ?」
キリコもおかしな予想をするが、どちらにせよ机上の空論であった。せめてどちらかが戻れば情報が得られるのだが、どちらも戻る気配がなかった。
「頭、私が見て参ります。」
「そうだな……行け。」
アサシンBに命令するシャドウ・Q。
「じゃあ、わたしも見てくるね!シャドウ・Q、シオンを頼むよ!!」
キリコもアサシンBを追う。
「何ぃ!?」
易々と部下を監視者に預けるキリコに驚きを隠せないシャドウ・Q!!
「あの、わたし不安で、怖いんです。そばに居てください、シャドウ・Q。」
二人きりになり、震えるシオンはシャドウに抱きつき、潤んだ目で見上げる。そして名前はここで呼び捨てに。
果たしてワンチャンあるのか!?
ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございます。(´∀`)
ステラの根性の悪さが滲み出てます。逆境が楽しいんでしょうね!(゜ω゜)
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毎週金曜日に定期更新してますので、また宜しくお願い致します。(๑>◡<๑)




