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異世界でも魔法少女となら大丈夫だよね!?  作者: 古土師 弥生
〜 暗黒編 〜
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【Side:ブレイブ】パスティーズ

挿絵(By みてみん)


 急ぎ馬を駆る!


 俺はウッディパペットになりかけているパチャムを馬にくくり付け、女魔族のレオナールの言う通りミッドグルン西方にある『グルゼル湖』に急いだ。


 早駆けで30分程で『グルゼル湖』に着く。湖畔には豊かで澄んだ水に満ちていた。


「パチャム、いま湖に入れてやる。そうすれば元に戻る。待ってろ!」


 俺はパチャムを抱えて湖に入り、その身体を湖に浸す。


 パチャムの身体がビクンと反応すると……ウッディパペットから枝や根が一気に伸び、パチャムが暴れ出す!俺は伸びる木の枝に弾かれ湖に放り出されてしまう。


「ぷはぁ!ど、どうしたんだ、パチャム!?」


 伸びた枝や根がパチャムを更に覆い、ウッディパペットの身体が一回り二回り大きくなる。


「ど、どうして!?ま、まさか?」


 嫌な想像が頭をよぎる。この湖に漬ければ呪いが解けるはずなのに、もしそれが嘘だったら、と。


 ど、どうしたらいいんだ?パチャムを救うにはどうしたら!?ここには誰もいない。誰も助けてくれない。


 呆然としているそんな俺に襲い掛かるウッディパペット!腰まで水に浸かる俺は攻撃を避けられず、辛うじて盾で攻撃を受けるが吹き飛ばされる。


「やめてくれ、パチャム。やめてくれーっ!」


 その時になって俺は氷剣スノーホワイトを持っていないことに気付く。パチャムやファナやアリスのことに意識が取られ、時間が無いことでスノーホワイトを持たずにここに来たのだった。今あるのは盾と短剣のみ。短剣を抜くが……俺にパチャムを攻撃することはできない。


「誰か……助けてくれ〜!」


 俺はどうしようもなくなり、馬にまたがり……逃げるように馬を走らせる。現実から逃げるように。振り向くとウッディパペットは逃げる俺を追っては来たが、湖から出ることはなかった。


◇◇◇


 無我夢中で鞭を入れ全速力で馬を走らせる!


 レオナールに助けてもらおう!俺にはそれしか考えられなかった。まさしく御主人様に救いを乞う奴隷そのものだった。


「うわあぁっ!!」


 心ここにあらずな俺は馬を操ることに集中せず、馬は躓き転倒する。放り出された俺は地面に叩き付けられた。俺は立ち上がり馬のところに歩み寄る。倒れた馬は足が折れており苦しそうにもがく。


「ゴメンよ。俺のせいで……。すまない!!」


 俺は興奮しているつぶらな瞳に謝り……短剣を向ける。このまま足の折れた馬を放置しても獣やモンスターに襲われるだけだった。この異世界で生きてきた中で、同じような場面は何度もあった。動けない動物は命を終わらせてやることが責任だった。


「待って!」


 馬に短剣を突き立てる瞬間、その声で俺は手を止めた!振り返ると、そこにはマント姿に槍を背負った人物が立っていた。


「な、何だよ?」


「怪我をしたからと言って殺すのは良くない。見せて。」


 スッポリとフードを被っているが、体格から男性ではなく、その声から女性だと分かる。


 警戒する俺を気にもせずズケズケと近寄り、倒れる馬の足を触ろうとするが、痛みに興奮した馬は暴れ出しそのマントの人物を蹴り飛ばす!


「きゃっ!!」


 倒れた際にフードが外れ素顔を晒す。それは赤毛の少女。


挿絵(By みてみん)


 その顔は苦痛に満ちていた。馬に蹴られたのだ、死んでもおかしくないし、それこそ骨が折れたに違いない。


「おい、大丈夫か?興奮してる手負いの馬に近づくなんて無謀だよ!」


「痛い……よね。」


 蹴られた左肩はダランと垂れ、右手で押さえながら立ち上がり……馬に近づく少女。出血したのかマントの左肩の辺りが赤く濡れていく。少女はマントを脱ぎ捨てた。


 背格好から年はアリスやステラに近いと思われ、驚いたことにその耳は短く、よく見慣れたものだった。


「人間?」


 未だ興奮する馬は近寄る少女を威嚇する。


「近づくな、また蹴られる!後は俺に任せろ!!」


 俺は走り少女を捕まえようとする……けど、俺の腕の中に少女は居なかった。


 暴れる馬の背にしがみつく少女!


「痛いね。苦しいね。」


 倒れながらも跳ねるように暴れる馬に片手と両足でしがみつきながら、振り飛ばされないように耐えていた。地面に叩きつけられ、馬の巨体に挟まれ……少女は何度も苦痛に満ちた悲鳴を上げた!!


「やめろって!お前が死んじゃうぞっ!!いま馬を殺すから待ってろ。」


「ダメッ!」


 悲痛な姿を見ているだけで息が荒くなり胸が苦しくなる!この子は何をしてるんだ!?


 ひとしきり暴れた馬は徐々に大人しくなる。少女は動かない。


「バカかよ、こんなんで死んじゃ……」


「泣いてくれるの?……いい子ね。」


 微かに動いた少女の右手は馬を撫でていた。


「生きてるのか?な、泣いてなんか……」


 言って気付いた。大人しくなった馬の瞳が濡れていたことに。


 俺は少女に駆け寄る。左肩の骨折と出血だけでなく、他の手足も何箇所も腫れたり出血していた。


「何なんだよお前は。こんなになるまで……バカかよ!」


「アタシ……パスティーズ。バカだけどお前じゃないよ。キミもいい子だね。」


 パスティーズと名乗った少女の右手が俺の濡れた目頭を拭ってくれた。

ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございます。(´∀`)


新キャラ登場しました!非力な人間だけど槍装備ってことは戦士?そして動物を労る行動……ナウシ◯かな?(*'▽'*)


お読みいただいた感想や評価をお願いします。いただけると今後の励みになりますし、もっと良い話にできますので、是非ともお願いします。m(_ _ )m


毎週金曜日の午前中に定期更新してますので、また宜しくお願い致します。(๑>◡<๑)

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