プロローグ
純愛・学園物です。
これは一部にあたり、二部に続きます。
プロローグ
煌くイルミネーション。
通りゆく人々。
煩い喧騒。
今の俺には全てどうでもいい風潮だった。
ただクリスマスという今日この日が早く過ぎればいいと、ひたすら歩いてるだけだ。
しばらくするとと行き交う人々の中で一際目立つカップルが目についた。
互いに見つめあい微笑みあい、本当に幸せそうだ。
声が大きいのはネックだけど。
そのカップルの男は恋人にこう話していた。
「こないだ俺の友達の妹がさ、事故にあってさ。」
「えー、やっだぁこわーい。ねぇ・・・まさか死んじゃったの??。」
「いや、その瀬戸際まで逝ったらしい。意識不明で重態だったんだけどね。
何でも、そいつの妹の彼氏が三日三晩祈ったら奇跡が起きて助かったんだとか。」
「まじで〜良かったじゃん!!てかてかぁ〜ある意味ちょぉ〜ロマンチックじゃないそれって!!笑。」
ありえなーい、と笑いながら彼女は目をキラキラさせている。
「世の中にはまだ解明できないことが山ほどあるってことだろうな。笑」
そのカップルは笑いながら雑踏に消えていった。
ただの偶然の喧騒。
しかし、俺はそれを聞いて視界が霞んでゆくのを感じた。
次に頬から熱い水が伝うのを感じた。
寒いはずなのに胸が焼き焦げる感覚。
「お前らには解らない。奇跡なんて…ありはしないんだ。」
たまらずそんな台詞を吐き捨てて走り出していた。
「あいつはもう・・・。俺が、俺が守ると誓ったのに!。」
頭上に舞い散る雪は儚げに輝いては振り続けた。
まるですべての感情を埋め尽くすように。
止まない悲しみもこの雪のようにいつかは溶ければとそう思った。
しばらく走っていただけに気づけば嫌な場所にたどり着いていた。
そこは何もない真っ白な雪原だった。
「ここは・・・あいつと初めてキスをした場所・・・。」
俺はドタンと倒れ雪の中に埋もれた。
流れる嗚咽と涙と雪に溶けながら夢をみることにした。
すぐに意識は遠のいていった。
◇◇snow sonata◇◇
ミーンミーン。
そこは蝉の声が騒がしい森の中だった。
森と言っても通ってる中学の裏山だ。
「やっとみつけたぞー!!雪夜ぁ〜おいってばーひぃらぎゆぅき〜やー!」
「うわ、なんだよエガちゃん。」
声の持ち主は全速力で突進してきた。
「ドーン!!」
森にコダマするぐらい大きな騒音。
「いきなり飛び込んでくるな!このエロッペ性人!!」
「うるせーお前が某伝説の芸人みたいな愛称で呼ぶからだろ!」
この見るからにアホそうなこの男は俺の親友で悪友の江頭直。
小6から中2の今の今までずっと一緒だ。
「はんッ!!自分で愛称とか言ってるじゃん、結構気に入ってるんだろ??エガちゃん〜」
直はとっても熱くて人情強いヤツだがアホ過ぎてキレると半端ない。
「言葉の愛だ!」
馬鹿だこいつ・・・
「したっけそれを言うなら言葉のあやだろ??」
まったく、こいつの言葉能力には赤い水性もガッカリだぜ。
「もーどうでもいい!!」
そういうとパっと胸倉を話したエガちゃんは尻込みついてる俺の顔の前に指を立てて語りだした。
「いいか雪夜!今日は何月何日だ!」
「7月25日金曜日およそ夕方5時ぐらいだ」
そう!と叫ぶエガちゃんは何やらわけわかめなほどに目をギラつかせてる。
「7月25日!夏休みの始まりじゃないの!雪夜くん!!」
(だからなんだっつの・・・走って自主練してるところにいきなり現れやがって。)
めんどいので口には出さないでおくことにした。
「いいか??ブラボーな夏休みの幕開けだぞ??シェクスイーなお姉さんとイチャイチャできるかもな夏休みだぞ!?」
はは。ははは。はいはい・・・。
「ぬぁにが自主練だ!今日は部活ねーだろ!」
確かに冬までは全然ないが・・・スキー部だし、冬になんないと雪ないし滑れないし。
「で、お前が言いたいことは結局なんなんだ?? なぁ・・・」
エガちゃん♪
「だからよ〜、もっとエンジョイしようぜ〜。こんな不気味な学校の裏山走るのなんてやめてさ〜。俺と今からゲーセンな!な!!」
ったく、こいつは・・・はじめからそう言えっての。
「はいはい、解ったよ。けど今日はもう疲れたから明日にでもな」
仕方ねーな、と直は俯いてガックリしている。
「じゃぁもう帰ろうぜ雪夜」
「いや、わりぃ。直は先帰っててくれ。学机に成績証明書忘れてきたんだ」
一応親にはみせねーとな、と笑い立ち上がる。
「解った、気をつけて帰れよ。じゃぁな雪夜!」
そういうと直は人間技とは思えないスピードで去っていった。
「あいつ、俺なんかより運動神経いいのにスキーできねーってありえねぇ・・・」
そう悪態を付くとヒグラシの喧騒の中、ゆっくりと校舎へ向かった。
◇
下駄箱の階段を上がり中央ホールを横切ればそこが俺のクラスだ。
歩く速度を速め教室へ向かう。
この時間はまだ柔道部の鬼顧問の須藤がいる時間だからだ。
こいつはやたら煩く夕方には部活以外何もない生徒を発見すると竹刀でおっかけてくる。
「今日もみつかんなけりゃいいが」
そう思いながら各教室を横切るとふいにピアノの音が聞こえた。
それはとても懐かしいメロディーで誰もが知っている名曲だった。
「何でこんな時間に・・・吹奏楽部か??いや柔道部以外は今日活動していないはずだよな」
まさかお化け?妖怪?江頭直の芸人修行?
3つめはおいといて、自然と足はそのメロディーが奏でられる方へ向いた。
その場所は音楽室からだった。
扉の隙間から様子を伺う。
するとそこには幻想的な世界が広がっていた。
夕日が窓に反射しているせいか周囲は七色に輝き、そのバックで流れるような美しい髪をした少女がピアノを操っていた。
言葉通り、それは弾いているとも、奏でているとも言えない。
まるで意思があるものを操っているかのようにピアノとシンクロしていた。
その光景に見とれていた雪夜は彼女が弾くのをやめるとふいに意識を取り戻した。
彼女は立ち上がると扉の隙間で除いてる雪夜に声をかける。
「そこにいるのは誰??」
ガタン!
「うわっ!」
「やっ!」
ふいの言葉に隙間から前のめりに倒れこんだ。
そして驚いたのか、その少女も黄色い声を上げる。
「ああ、いってて・・・」
「血!鼻に血!鼻血!!」
派手につんのめったらしい、流血のごとく流れている。
少女は慌ててポケットからハンカチをとり出して雪夜に駆け込んだ。
「あ、いいよこれくらい。妹に殴られ残舞で慣れてるし!」
「メッ!です。目を瞑ってください。」
そういうとペタンと座り込み自分の膝に雪夜の後頭部を乗せて半ば強引に介抱し始める。
何が起こったのか忘れるほど驚いて固まってしまった。
本人の心の中を覗くと『あははーあははー天国だー待ってー僕のエンジェルー☆』な感じである。
「フキフキ。フキフキ。うん、これで大丈夫。あは♪」
そう言うと少女は未だ膝の上でどこか旅立っている雪夜を見下ろして微笑む。
「あ、あの・・・。」
やがて下界に戻ってきた雪夜はお目目をクリクリにして状況把握に苦しむ。
すると、言葉を塞ぐように少女は口を開いた。
「悪い子さん〜メ〜ですよ??人の秘密の特訓を除いたらメっ!メっ!!です」
「ご、ごめんなさい・・・」
とりあえず条件反射で謝っておく純情な少年。
ついで自分が置かれている現状をやっと把握できたのだろう、まくしたてるように言葉を走らせる。
「あの、ありがとう。もういいから・・・その・・・膝枕。」
何も動じない様子で一言「はい」と言ってそっと雪夜を立ち上がらせた。
「ありがとう。そ、それぢゃ俺は・・・。」
もう耐えれないとばかりに思春期精神バリバリな雪夜はそそくさと立ち去ろうとしたが、その時である。
少女は雪夜を呼び止めた。
「待って!私、3年C組の佐倉姫っていいます。あなたは??」
ふいを何回やらかしてくれるんだ、と思いつつそれに答える。
「2年B組、柊雪夜です」
あら後輩なのね、と姫は呟くと窓の外を眺めながら言葉を続けた。
「もう暗いし、ここで出会ったのも何かの縁ね、私を家の近くまで送ってくださりますか??」
「いや、その、教室に荷物忘れたんで取りにいった後でなら・・・。」
「あらそうだったの!急がないと校門閉まっちゃうわよっ!」
(誰のせいだよコラ・・・てか自業自得か・・・)
バレないように心で舌打ちをする。
「ほーら!走らないと!!」
すると突然の掛け声とともにとんでもない行動に出たらしい。
「え!?」
姫は雪夜の手を取り走り出したのだ。
「せ、せんぱい!手!手ぇ!!」
雪夜は赤面しながらも姫に手を引かれる。
その時胸の中で起こったドキドキする感覚は生まれて初めてのものだったが、何故か懐かしくも感じた。
それと同時に手を引く姫の横顔をみると気のせいなのか、とろけるような微笑みだった。
このときから2人は何かを予感していたのかもしれない。
淡く淡く跳ね上がるような気持ちと包まれるような感覚。
これが雪夜と姫の出会いだった。
つづく
つたない文章で申し訳ありません(汗)
これから頑張って最後までかけるように頑張りたいと思います!
何でもよろしいのでできれば感想をよろしくお願いします(汗)