第7話
1章の最後となります。ジークが成長していく章となりました。少しずつ様々な陰謀に巻き込まれていくジーク。未だ成長途中の魔磁石スキルは今後どのような使い方が出来るのか。
ルミアとの行方は。第2章も章が完了次第投稿致します。
ーー翌日ギルドにきた僕は、アビスウルフの素材の件で倉庫に来ている。
『解体の件なのだがの、中は空っぽじゃった。ダンジョンボスだから普通は体は残らないから残っているのが可笑しい話じゃからな。丸ごと毛皮が残るなんて事初めてじゃわい。みんな驚いて気付くのが遅れてしまった訳じゃな。という事で解体はしておらんから買取分の相談じゃな』
あー、繋ぎ目もないから気付かなかった。そういえば僕の斬り裂いた傷もないな。
「せっかくなので鎧を作る為に必要な分を貰って後は売るって感じですかね」
『それがよいじゃろう。すぐに終わるからちょっと待っておれ』
そう言って、アビスウルフの毛皮を切っていく。全然傷が付かなかったはずの毛皮を切断してる。
『勘違いしておるようじゃが、魔力を纏ってない毛皮じゃからな。本来の硬さなら傷一つ儂ではつけれんわい』
あっという間に切り分けた、ダクシムさんに毛皮を受け取る。触れてみると柔らかくて気持ちいい。魔力で硬くなる素材って事のようだ。
『買取金は後で纏めて渡すからのう、受付で受け取ってもらえるかの』
「わかりました。ありがとうございます。この毛皮を加工するのにオススメのお店とかありませんか?」
『この街じゃ、無理じゃな。シェシェか、王都にでも行けば出来る職人もいると思うがの』
「そうですか、探してみます」
シェシェは確か鍛治などが盛んな町だ。バロンさんが怪我をおった町。討伐隊が来ると聞いてたけどもう落ち着いたのかな?どちらにしても王都に向かう事になってるから探すなら王都なんだけどね。
依頼と素材の買取報酬はなんと。白金貨10枚と言う破格の報酬だった。殆どがアビスウルフの毛皮の価格らしい。ドロップ品だから傷一つなく、あの巨大なアビスウルフの毛皮が僕の分を引いてもかなりの量が残っていた。Aランクの魔物の素材がそれだけ多くあればこれくらいの価値になるのだろうか?僕としては文句は全くないんだけどね。
ーー週が変わった。僕は今日護衛依頼で王都へと旅立つ。
『黄色い妖精のリュークだ、よろしく』
「ジークです、よろしくお願いします」
『で、こっちから、ハンナ、タペット、ワナモイ、アルンだ』
今は、ギルドの個室で、依頼前の顔合わせとして黄色い妖精のメンバーと話をしているところだ。
リュークは20代半ばくらいだろうか、ちょっと濃い目の単発イケメンだ。
ハンナは、ちょっとぽっちゃりしていて、なんかのゆるキャラみたいな感じだ。
タペットは、ショートカットなボーイッシュな女性、ワナモイは寝不足なのか、目の下にクマがある。ローブを着ているので魔法を使うのだろう。既に疲れてそうな感じだが大丈夫なのだろうか。アルンは長身で顔はモアイ像に似ている。決して悪口ではない。聞いてみるとみんな20代前半らしい。アルンに関しては30代と言われても驚かないが。
『それにしても、15歳とはビックリしたよ。しかもソロでCランクになったなんて。僕らは6年かけてようやくCランク。天才っているんだね』
「いえいえ、運が良かっただけです」
『謙遜し過ぎも良くないよ、ギルドでも有名だからね。この街最速最年少のCランク、ギルドの華であるルミアージュさんを口説き落としたプレイボーイ』
最速最年少だったんだ。聞いてないけど。と言うかルミアさんを落としたプレイボーイってこんな純粋そうな少年に変な噂立てないでほしい。
「そんな風に言われているんですね。全く知りませんでした」
『それじゃあ、今日の依頼の打ち合わせといこうか』
今日の護衛依頼は、この街の領主の娘さんを王都まで送り届ける依頼との事だ。領主の娘?ん?と思ったが、まさかね。
僕は剣士という事にしている。雷魔法使い、なんて言ったら色々また噂が広がりそうだからね。神様も4属性のどれかをサービスしてくれたら隠さずに魔法が使えるのに。
『ちょっと待ってください』
「ルミアさん?」
『ル・ミ・ア』
「うん、ルミアどうしたの」
こんな所で呼び捨てにさせてなんのつもりだろう。恥ずかしすぎると言うかみんなニヤニヤしてるし。
『私も行きます』
「えっ?」
『どう言う事ですか?ルミアージュさん』
『ジーク君をリーダーにしたCランクパーティー「空」のルミアとして着いていきますので皆様よろしくお願いします』
『「ええええええぇぇ」』
僕の頭は今混乱している。そして思い当たる言葉を思い出す。昨日の噴水のベンチで。
『ジーク君はパーティー組まないんですか?』
「組む人がいないと言うか知り合いもいないし、組みたくなくて組まない訳じゃないんだけどね」
『そうなんだね。もしパーティーを作ったらどんなパーティーネームにするの?』
「そうだなー。空、とか言いな。自由の象徴みたいで」
うん、確かに空って僕答えているけど。
「えーっと、どう言う事?」
『だから、ジーク君とパーティー組んだんです』
「ギルドの仕事は?」
『辞めました』
「いいの?」
王都に移動ならともかく、やめてパーティー組むって。
『はい、マスターからちゃんと許可をもぎ取りました』
もぎ取ったのね。
「戦闘とかもあって危険だよ」
『ギルドスタッフは最低限の護衛として武術を習ってますし、水魔法を使えるので少しはお役に立てると思います』
『まあ、僕達は全然構わないよ。水魔法の使い手がいれば水に困る事もないし怪我した時に助かるし』
『ジーク君は私とパーティーは嫌かな?』
そんな事言われて嫌なんて言える訳。と言うかパーティーって勝手に出来るの。色々突っ込みたいが。
「嫌じゃないよ。びっくりしただけ」
『さてと、そろそろ門に向かうよ。依頼主が来てしまうからね』
ーー門の前に移動し、依頼主を待つ。
2台の馬車が到着する。1台は僕達冒険者達用の簡素な作りの馬車。もう一台は豪華なきらびやかな馬車だ。そこから顔を出すのはルルさん。
『ルルエル・ピアータよ。今日はよろしく頼むわね』
『今回纏め役をさせて貰います。黄色い妖精のリーダー、リュークです。よろしくお願いします』
『ええ、よろしく。それと一人馬車に護衛として乗せたいのだけど』
『分かりました、ハンナ頼む』
『いえ、そこにいる冒険者の方に頼もうかしら』
『はい、ですが、男の冒険者でよろしいのですか?』
『構わないわ』
『という事のようだ。ジーク君、君はルルエル様の護衛をしてくれ』
「分かりました」
『あの、ルルエル様、ジーク君がリーダーを務めるパーティー「空」のメンバーのルミアージュと申します。連携なども考えて私も同行しても良いでしょうか』
ルルさんが少し考える素振りをする。
『良いわ、乗りなさい』
王都ヘルリアンテまでおよそ5日の旅が始まった。
そして、現在ルルさんとハピアさんと向かい合い、僕とルミアが座っている。ルルさんの前が僕だ。特に会話もなく気まずい中僕は話をきりだす。
「ルルさん、先日は、服の件ありがとうございました。直接お礼を言いたかったので会う機会があって良かったです」
『会えて嬉しいなんて、私も嬉しいわ。ジークの為だものあれくらいいのよ』
嬉しいけど嬉しいとは言ってないが。
「そう言って貰えると僕も安心します」
『ルルエル様は随分とジーク君と仲が良いのですね』
『ジークと私は仲良しだもの当然よね?』
「そうですね、仲良しです」
なんか、ルミアが機嫌悪そうにしている。
そして、ハピアさん何か笑ってないか?
『王都に着いたら、屋敷で食事でもどうかしら。お父様にも紹介したいのよ。勿論そちらの方も宜しければ来て頂いて構わないわ』
おぉー、また美味しい料理が食べれそうだ。お父様?そう言えばルルさんの事全然知らないや。
「じゃあ、お邪魔しますね。ルミアもいいよね?」
『ええ、お邪魔致します』
あれ嫌だったかな?
『ジーク、私の事はルルさんで、何故その方は呼び捨てなのかしら』
「えっ、ルルさんは貴族ですよ。流石に呼び捨てで話す事なんて出来ないですよ」
『私が思ってた程仲良くはなれてなかったのですね』
悲しそうにするルルさん。
「そんな事は」
『では、ルルと呼んでくださいますわね?』
いいのかな……。
「ルル、これでいいですか?」
『はい、ジーク。これからはルルと呼んでくださいね。口調も崩して構わないわ』
「わかったよ、ルル」
何だろう、ルミアとルルの間に凄い威圧感が。ハピアさん、口元が笑ってるの隠せてないよ。
「そう言えば、ルルの家の事全然知らないんだけど」
『そう言えば話してなかったわね。と言うかピアータに住んでいて知らないのもびっくりなのですけど』
『それは私も同感ですね、ジーク君は常識がなさすぎます』
『ハピア、説明して貰えるかしら?』
『はい』
ルルエル様の家は侯爵と言う地位にある高位の貴族らしい。
当主でありルルの父の
バルダーノ・ピアータ
母親の
リーシア・ピアータ
弟の
マルク・ピアータ の4人家族らしい。
ピアータ家は古い家系で7代続く名家何だとか。ルルの父であるバルダーノ・ピアータ は王国第3騎士団団長兼、軍を管理する責任者でもあるらしい。
「凄いんだね、ルルの家もそうだけどお父さん。騎士団長って王国で一番強い人達だよね」
『そうね、国の中でも指折りなのは間違いないわね。ジークも冒険者として上を目指すならお父様と会っておくのは良いと思うわよ』
「うん、よく分からないけど、失礼のないよう頑張るよ」
『今は、それでいいわ。それよりジークの冒険者の活動を聞かせてちょうだい。来ないだから暫くだったのだから冒険したのでしょ?』
「うーん、したけどそんなに大したことしてないよ?」
『ジーク君、何言ってるの?普通の人の何倍も濃い経験してるのに、大した事訳ないじゃない。死にかけたのもう忘れたの』
『ルミア、聞かせて貰えるかしらその話』
……ルミアさんが僕の事について語ってる。が、少しカッコよく話し過ぎな気がする。
『そんなに凄いのかしら?そのアビスウルフだったかしら』
『アビスウルフはAランクでも中位、普通はAランクパーティー2組以上推奨ってとこを、ジーク君はDランクにも関わらず一人で倒して来ちゃったの』
何故か2人仲良くなってる?もはや敬語じゃなくなってるし。
『これはお父様にいい報告が出来そうだわ。ルミア貴女とも、仲良くなれそうね。ルルで良いわよ、宜しくね』
『ルルこちらこそよろしく』
ーー馬車に揺られて2日が過ぎた。ずっとルルと一緒に馬車に乗っているので少しは護衛らしく、黄色い妖精のみんなと一緒にと思って、リュークさんに話をしたのだが、一番大事なのは依頼人を護衛する事。側に付いているのが一番責任重いんだから頑張ってよ。と言われて結局ずるずると馬車に乗り続けている。
一緒に居ないのは、野営時に寝る時くらいだろうか。流石に一緒には寝れないので僕はリュークさん達のテントに入れてもらっている。日中馬車での護衛があるので見張りは不要と言われたのであまり交流も出来ていない。護衛任務で学べと言われたのに、何も学べていない気がする。
王都までの道は大きい街同士を繋いでいる道なので滅多に強い魔物は出ないらしく。基本的には安全らしい。なので少人数での移動も良くあるのだとか。しかし、盗賊などが出る場合もあるのでCランクパーティーが2組は最低付けるのが普通らしい。それでも、お金持ちな侯爵家の娘が乗る馬車の護衛がCランクパーティー2組なのは軽んじ過ぎじゃないだろうか。
ーー3日目ようやく、中間地点であるラグームの街に到着した。
ラグームの街は王都と、ピアータの中間に当たる街で、冒険者の行き来が多いのと周辺に需要が大きい事から農業が盛んな街らしい。ピアータや王都に運ばれる野菜や果物などの多くがこの街で栽培されているらしい。
見た感じ田舎の風景は全く感じられない。
「農業の街なのに畑が見当たらないですね」
『この街に田舎にあるような畑はないわよ?全て室内で管理されてるし、専用の魔道具を使って作っているの、畑仕事と言うよりは魔力を補充するのが仕事ね。だから、魔力の多い魔法使いで宮廷魔導師になれず諦めた方などが雇われていたりする場合が多いわね。魔法使いが多いと言うことは、そこそこ戦える者が多いと言う事なの、食糧が生産出来て戦う事も出来る街。国としても重要な街なのよ』
あー、日本でもLEDライトかなんかで照らして育てている映像を見た事がある。促成栽培か。収穫できる回数も多いし天候に左右されないってのが魅力と聞いた事がある。似たような感じのようだ。この世界の場合電気代が自家発電だから、こちらの方が効率良いのかな?これ僕がしたら凄く儲かるんじゃ……老後の仕事の一つに考えておくか。
「凄いですね、田舎で畑仕事してる人達が可哀想な」
『それだけ聞いてるとそうなるわね。でも、魔導栽培ハウスを購入に白金貨50枚よ』
「なるほど、普通の人は手を出せないですね。よっぽど余裕がある人が先を見ての投資にしないと」
『私の家も、ラグームで魔導栽培ハウスを使った農作物の生産をしているのよ。でも、元が取れるのは大体20年先を見ているの。だから、どちらかと言うと国や自分の街を守る為の投資と言った面が強いのかしら』
お金のある貴族として、領地を守る為の投資って事ね。食糧に困らないように多額の資金を入れておいて、長い目を見て黒字になれば良いなくらいって事か。これは庶民には難しい。そもそも魔力の多い人を庶民が雇うなんて事はあり得ないだろうしね。
今日はこの街の宿で寝るようだが、買い出しなどをする以外は出歩かず、明日の朝すぐに王都へと向かうらしい。ちょっと見てみたい気もしたが観光ではなく、仕事なので我慢だ。
ーー翌朝王都へ向けて出発する。
『ジーク君、退屈そうね』
「そんな事はないけど、長旅するのは初めてだし、ずっと馬車の中でやる事もないから複雑というか」
『いっそ、盗賊でも出ればとか考えているのかしら』
「そ、んな事は……」
『ジーク様、ルルエル様は大丈夫ですが、他の貴族の前でそんな事言ったら、大変な事になりますよ』
流石に緩みすぎていた。長期の仕事は初めてだし、のほほんとしてたから旅行気分になっていたのかも知れない。
「そうだよね。気付かせてくれてありがとう」
ーー王都まで半日を過ぎた頃、事件は起きた。
『そこの馬車止まれ』
何事だろうか?まさか盗賊……?
「ちょっと何があったかみてくるよ、リュークさん達が対応してるはずだけど」
僕は馬車をおり、声をかけてきた者達を見る。騎士団だろうか、銀色の鎧を身に纏い如何にも騎士と言う身なりだ。人数は10人程。
「リュークさん」
『あぁ、ジーク君。ちょっと困った事になっててね』
『君も護衛の冒険者か?』
「はい、ルルエル・ピアータ様の護衛をしております」
『そうか、ピアータ家の者を捕らえるよう命令が出ている。即刻引き渡して貰おう、拒むのはオススメしない。王国に対する反逆になるのだからな』
え、ルルが捕らえられるって事?なんで?とりあえず話をしなくては。
「ルルエル様を呼んで来ますのでお待ち頂けますか?」
『あぁ、言っておくが逃げるなど無駄な事を考えるなよ?俺達は第2騎士団の精鋭だからな』
精鋭か、倒せなくない気もするけどここで騎士団と敵対するのは悪手だよな。僕は馬車の中へと入る。強引に連れ去られないだけ良かったと思うとしよう。
「ルル達ピアータ家を捕らえるよう命令が出てるらしい。第2騎士団の精鋭が来ててルルを引き渡せと言ってる」
『くっ、そう来たのね』
ルルは唇を噛み締めて何か考えている。
『ルルエル様私が時間を稼ぐのでお逃げください』
『ハピアダメよ。騎士団の精鋭に戦いの心得のない貴女が挑んで何になるのかしら』
『ルル……どう言う事なの?何が起きてるの?ジーク君なら何とか出来るよね』
「どうだろう、騎士団の精鋭の強さが分からないし、今回倒しても王国と敵対して勝てるかと言われると……難しい。僕より強い人なんて沢山いるから」
『ジークいいのよ。こうなるかも知れないとは分かっていたの。バーグ・ルーダス伯爵家、お父様が随分前から調べていた者の名前。前にジークを招いた時に最後離席したわね、その時にお父様から聞いていたのよ、もしかしたら何かあるかもしれないと。王都にすぐに戻るが自分に何かあれば後は頼むと』
「そんな事が、侯爵家に伯爵家が何かする事なんて出来るの?」
『実際はよっぽどの事がないと難しいが、半年程前、長女であるペイパ・ルーダスが第2騎士団団長である、オリビア・ルドセルフと結婚した事で状況が変わったのだ。騎士団同士は王国の為に尽くすが仲が良い訳ではない。第2騎士団団長と第3騎士団団長であるお父様、2人のうちどちらが強いかと聞かれたら誰もがお父様と言うわ。この意味がわかる?』
「嫉妬みたいな感じ?」
『簡単に言えばそうね。バーグ伯爵はお父様が何かを調査していた事に気付いていたらしいの。それが何かは私も知らない。私に被害が行くとお父様は考え、敢えて言わなかったのね』
「ルルが望むなら僕は、騎士団をとりあえず追い払うよ」
『ダメよ。いくらバーグ伯爵でもすぐに私達をどうこうする事は出来ないはずよ。私はこのまま大人しく着いていくことにするわ。と言うかそれ以外の選択肢がないのよ。それでないと、ジークとルミアだけでなく、黄色い妖精まで騎士団に対する反逆として捕まってしまうわ』
『ルルエル様……』
『ハピア、後の事は頼むわね。お母様とマルクは大丈夫かしら。まだ無事なら、何処か安全な場所に。これは命令よ』
『分かりました……』
『ジーク、ルミア。巻き込んでしまってごめんなさいね。お父様が何をしているのか、協力できないと思って来たのが仇となったわね。私が関係者と思ったのね』
僕は、何も言えなかった。ルミアは僕の服袖を掴んで、僕に助けてあげてと目で訴えてるように見えた。何とかしたいが、今の僕では……。
「ルル」
『ジーク、最後に一緒にいられて嬉しかったわ。また会えたら、冒険の話を聞かせて貰えるかしら』
「あぁ、もちろん」
ルルは外へと出て行く。騎士団の人がすぐに気付き、ルルを拘束して連れて行く。ただその後ろを見ている事しか出来なかった。僕はただの新米冒険者、力も権力もない。
『ジーク君、何がどうなっているんだろうね』
「僕にもさっぱり。どちらにして王都に行かないとですし、向かいましょうか」
『あぁ……そうだね』
すぐに僕達も、王都へ向かう事にした。ルルが捕まり離れて行くのを見ていられなかった。追いかけても何も出来ないし、既に姿は見えないのだが。
『ルルはどうなるのかな』
「うーん、どうなるの?ハピアさん」
『正直言って状況は悪いです。バーグ伯爵はいい噂は聞かないですから』
「ルルはいないし普通に話してよ」
『そうだね、私は一応王都に入ったらすぐにピアータの街に戻る事になるかな。ルルエル様のお願いだから、奥様とマルク君を逃がさないと行けないからね。流石に幾ら裏から何かをしたとしても第2騎士団以外を自由にはバーグ伯爵も扱えないはずだから、ピアータにすぐに来る事はないとは思うけど』
「そうだったね、僕に出来ることって」
『ごめんね、今の所ないかな。だから、王都にジーク君は残ってて。それと、何かあった際に力に慣れたらお願いしたいかな。それとこれを』
「これは?」
ハピアさんが胸元から出したのはペンダント。それを開けた中に入っていたの前世の薬カプセルくらいの大きさの銀色の何か。
『声を記録する魔道具だよ。バルダーノ様からジーク君が食事に来た夜、ルルエル様が寝た後に預かったの。持ってて貰えないかな?』
それって、証拠とか、重要な何かなんじゃ。
「僕でいいの?」
『ジーク君なら、もしバーグ伯爵の手に渡ったとしても文句はないかな』
「そんな事はしないよ」
『うん、分かってる。よろしくね』
ーー王都に着いた僕達はギルドへと到着する。僕達は報告、ハピアさんは護衛依頼の受付をしている。
「僕達が護衛に付かなくて良かったのかな?」
『ハピアさんが望むなら、多分それが最適なんだと思う。ジーク君、ハピアさんって何者なんだろうね。侯爵様が普通のメイドに大切なものを預けるかな?』
「うーん、優しいお姉さんって印象しか」
確かに。ハピアさんがメイドになって半年とか言ってたな。半年しか勤めてないメイドに渡すかな?謎だ。
『ジーク君、依頼完了してきたよ、これが報酬の取り分だよ、確認してくれるかな?』
中には、金貨が1枚。
「はい、確かに」
『じゃあ、僕達は宿を取りに行くよ。また機会があったらよろしくね』
黄色い妖精のみんなに挨拶をし、僕達2人も宿を取る為に移動をする。
「行こうか、ルミア」
『はい、ジーク君』
第2章も見たいと少しでも興味を持って頂けましたら、評価にて応援お願いします。
第2章は王聖戦争編、執筆が終わり次第投稿致します。よろしくお願いします。