第4話 救援要請
女子高生をモンスターから救ってやったというのに、バカにされたみたいで腹正しい。
家に帰ってきた俺はバカみたいに広い室内を闊歩する。
「外から見た外観はちっこい家のままなのに、なんで中はこんなにも広いんだよ」
それに扉を開ける順番を間違えただけで別の場所に飛ばされるし、最悪だ。
俺は自分の部屋に帰りたいだけなのに……。
「あああああああッ、もうッ!
何なんだよ!!」
頭にきてタブレットをぶん投げると、
《亜空間魔法による室内変換で、建物内部の空間が……》
「そういうことを言ってんじゃないよ!」
神様ナビゲーションは思った以上にバカだ。誰も家の中が広い理由を尋ねてるんじゃないよ。
俺は早く部屋に戻りたいだけなんだ。
《早期にお部屋へのご帰還をご所望でしたら、転移魔法をお薦め致します》
「ハッ……!? 何でもっと早く教えてくれないんだよ」
◆
初めから転移魔法を使っとけば良かった。
ベッドに寝転びなからこれからのことを色々と考えたのだが、とりあえず家を元に戻したいという結論に至り、ナビ子ちゃんに亜空間魔法を使って元に戻してもらった。
もちろん魔法を使ったのは俺自身なのだが、はっきり言って実感がまったくない。
ただナビ子ちゃんが頭の中で発動しますって言うだけで、勝手に魔方陣が形成されちゃうんだもん。
ちなみにナビ子ちゃんとは神様ナビゲーションのことだ。フルネームで呼ぶのは長ったらしいから名前をつけてやったまでのこと。
どう聞いても声はエロゲ声優のそれだから、女の子で間違いないだろう。
「それにしても暇だな」
それに、【ファンタジー作るんです】とスーファミを持ち去ったのが家族じゃないなら……一体誰なんだ?
さっぱりわからん。
「まぁ、とりあえず晩飯でも食うか」
小さくなった家は快適だ。リビングまで1分とかからずに行くことが出来るんだからな。
しかし困った。
お袋も一緒に粗大ゴミに出してしまったから、飯を作る人がいない。
「冷蔵庫に何かあるかな?」
何もない。あるのはマヨネーズとケチャップ――納豆だけ。
「これでどうやって生活してんだよッ!」
台所をひっくり返して食料を探してみたが、何もない。
ないならコンビニでお弁当でも買いにいきたいのだが、
「俺には金がない。
親がいなければ飢え死にコース確定だ」
しかし、粗大ゴミに出してしまったしな。今さら迎えに行けば何を言われるかわかったものじゃない。
スーパーニートに取って親や妹の小言は死神の鎌を喉元に突きつけられているのと同じだからな。
「どうしよう」
とりあえず金を探すか。
家中ひっくり返して金を探すが……まったくない。
俺は大事なことを忘れていた。
スーパーニートの俺が寝ている間に金を盗むから、両親は肌身離さず財布や通帳などを持ち歩いているんだった。
エロゲさえ買ってくれれば盗まなかったのに……。
「でも本格的に困ったな」
スーパーニートの俺には言うまでもなく、友人と呼べる類いの人間はいない。もちろん画面の中にはニート仲間が沢山いるが、会ったことなんてないもんな。
――ぐぅぅうううう。
思えば2日も寝ていたから、今日も食べなかったら3日間飯を抜いたことになる。
このままじゃ本当に死んでしまうじゃないか。
「仕方ない。ニート仲間に頼るか」
自室に戻って来た俺は迷わずPCを起動させて、『SN』に救援要請を出した。
『乳くりマンボウだが、緊急事態発生。
親を粗大ゴミに出したせいで食料がない。おまけに金もない。食事をご馳走してくれる奴求む』
『ワロタ』
『さすが乳くりマンボウはんやわ。親を粗大ゴミに出すとか鬼畜過ぎますわ』
『ワロタじゃねぇーよ! マジで腹ペコなの!』
『クズの中のクズ過ぎる』
『その行動力がスゴス』
「きぃーーーッ!
こいつら戦友をバカにしてんのかよ!」
『マジで言ってんだよ!』
『つってもどこでご馳走するんだよ?』
『家に直接食いに行くから住所教えてチョ』
『家バレとか絶対無理』
『riceのID教えるからそこに連絡して』
『つーか、ニートは人に会うの不可。だからニートなんだぜ』
「何なんだよこのクズニート共はッ!」
『とりま、ID置いとくからご馳走してくれる勇者待つ』
「これで待ってみるか」
最悪……明日の朝イチで庭に作った金脈ダンジョンに潜って、金を質屋に売りに行くか。
それまで俺の腹が持てばいいんだが。
――チロリロリン。
「ん……?」
スマホにriceのメッセージが届いている。
愛用していたスマホは握り潰してしまったから、昔のスマホを使っているが……使いにくいな。チクショー。
メッセージは……おお、にゃん子ちゃんからだ。
『私の家に来てくれるならご馳走してあげるにゃん』
ネカマのキモい親父だがこの際いいだろ。
『住所教えて』
◆
教えられた住所に転移してきたが……ここでいいのかな?
やって来たのは秋田県のド田舎。
「だが……凄い家だな」
にゃん子ちゃんは大金持ちの親父なのかな?
だとしたらクソニートだ。
と、いうのも。俺の目の前に聳え立つ民家は恐ろしくでかい。
田んぼだらけの景色に似つかわしくない洋館。
どこからどう見ても大金持ちだ。
許せんッ!
――ピーンポン。
だが、今は飯が最優先だ。
『開けるから入って』
……ん? 今のは女の人の声だよな?
まさかとは思うけど……にゃん子ちゃんは本当に女の子だったのか?
「ど、どうせアジャコブラみたいな女だろう」
金持ちの家らしく自動で門が開いていく。
なんて無駄なところに金をかけているんだ。そんなに金があるなら世の中のニートに配れよな。
こういう最低な人間がいるから、俺達ニートが拗ねてグレるんだよ。
俺だって金持ちの家に生まれていたら、親の株とか土地とか貰ってネオニートになれたんだからな。
――コンコン。
無駄にでかい扉を叩いてスーパーニート様のご到着を知らせてやる。
「はーい」
――ガチャン。
「え……ッ!?」
「あッ! 乳くりマンボウさんだ!」
俺の思考は完全にシャットダウンしてしまった。
だって、ネカマ親父だと信じて疑わなかったにゃん子ちゃんは、アジャコブラに進化したばかりなのに……出てきたのは髪金で青い瞳のお人形さんなんだ。
「外国……人!?」
まだまだ……更新するよ!今日は沢山するよw
だから………………ブクマよろしくですw(〃艸〃)