スタイリッシュ・シンデレラ
「何でもいいから、装飾品を作って」
魔法使いは横柄な態度でそう告げた。
「装飾品じゃなくてドレスでもいいけど。材料はそこ」
と彼女が指した先にはサテン生地や高級レースやビーズ、宝石、ティアラの土台など大体の材料が揃っていた。
「たしかに舞踏会に出たいっていいましたけど。まさか装飾品を自分で作れって……」
エラは呆れたように魔法使いの少女を見つめる。
亡くなったエラの母との契約で、願い事を叶えに来たと言う。だから舞踏会に行きたいと願ったら、装飾品を作れと言うのだ。
刺繍ならエラもする。最近では継母の意地悪のお陰で繕い物もする。が、装飾品を作ったことはない。ドレスも時間をかければ作れるかもしれないが、王城である舞踏会は3日後だ。間に合う気がしない。
「簡単なものでいいよ。指輪とか。それを軸に魔法を組み立てて、他の衣装をつくるから」
想いを込めて作ったものを核にして、魔法を使うらしい。
指輪も簡単にできるものではない。小さいだけあって作業が細かい。
その苦労に反し、それほど目立たないのは残念だ。
ではティアラあたりか。たしかに目立つ。だからこそセンスが問われる。
ふと視線を落とした先に、靴があった。ボロボロでみっともない革の靴だ。母が亡くなって、新しい継母が来て、それ以降新調していない。
「靴でもいいのかしら?」
「え? ええ。別に構わないけど……いいの? ドレスに隠れるから、指輪以上に目立たないけど」
「目立たないからこそ、手を抜いている人たちが多いでしょ? どうせだから、みんながビックリするようなものを作りたいわ。革でも木でもない素材の。宝石の靴なんてどう?」
「足の形に合わせるの、難しくない?」
首を傾げながら、魔法使いは訊ねる。
たしかに、足の形に合わせて削るのは難しい。
では宝石のように煌めいていて、かつ形を整えやすいもの。
「ガラスとかは?」
エラは思い付きを口にしたが、すぐに欠点に気がついた。
「やっぱり割れるかしら?」
「魔法で補強すればなんとかなるけど……」
「けど?」
「ガラスの形を整えるのが難しいんじゃ?」
そうはいいつつも、魔法使いはドワーフのガラス職人を手配してくれた。
そして3日後、ガラスの靴は無事に出来上がる。
ガラスの靴を核に、魔法使いは他の衣装を編み上げた。ガラスの光をキラキラと反射させたような美しいドレスは会場で一番スタイリッシュだった。
その後、エラはどうなったかって?
それは皆さんの知る物語の通り。