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ただ消えてゆくだけなのだ。

不気味な音とともに魔法陣の中心が広がる。

そして、その魔法陣の中心から複雑な光を発する玉がゆっくりと降りてくる。

王都を見下ろせる小高い丘にあったはずの監視塔は消え去り、

重厚なローブを着た男が立っていた。


「どうだ?朕が半年かけて準備したこの魔術は!!」


男が魔力を魔法陣に注ぎ込む度に魔法陣は大きくなり、

その中心に位置する光球がさらに降りる。

周りで跪く三人の男たちは口々に男を褒めそやした。


「流石は魔導皇帝グレゴワール陛下であります。

四天王を頂きましたが私では陛下の足元にも及びません。」


「全くでござる。

これでは我ら帝国四天王の出番はありませんな。

精々、陛下の邪魔にならぬようにするのが精いっぱいでござる。」


「確かにわれら四天王では手に余ります。

ま、ここには三天しかおりませぬが・・・」


三人の男たちが笑い合う。

周囲にいる男たちは魔導皇帝と呼ばれたその男を褒め称えるが、それでも足りない。

そもそも、自らと魔導皇帝グレゴワールを比べること自体が誤りであることに気づいていないのだ

そんな彼らを見てグレゴワールは考える。


(ここにいる何人の者が我が呪文を真に理解するか・・・)


グレゴワールは東進を開始するにあたって、十分な下準備を行っていた。

その一つが死兵による召喚と進軍である。


―――――――――――――――――――――


自ら死んだ男の血で描かれた魔法陣が淡く輝き何かを召喚する。


「出てくるぞ!!」


「全員戦闘態勢を取れ!!」


隊長の号令以下、王国警備隊の兵士が盾を構えた。

召喚陣を囲む各員に緊張が走る。

どの様な物が出現しても見極めて王宮に報告しなくてはならない。

確実に王宮へ報告できる様に一番後ろで身構える者は軽装である。


「「「「「!!」」」」」


王都郊外の丘の上に出現した召喚陣。

召喚陣は一人の男を呼び出した。

男は頭には金の冠を頂き、重厚なローブを身に纏う。

複雑な構造と各種宝石をちりばめられた杖を持つ。

ローブは魔法の品物らしく男の体から少し浮いている様だった。

そしてローブの背中にはグレゴワール魔導帝国の紋章が描かれている。


王都近郊の丘で出現したのは魔導皇帝グレゴワール本人であった。


「帝国皇帝だと!?」


あまりの意外な出来事に王国警備兵は全く動けない。

いや、グレゴワール本人の覇気の為だったのかもしれない。


グレゴワールはすっと右手を上げ、


「王国警備隊諸君、出迎えご苦労である。

褒美だ、死ぬがよい。

即死乃紋章ワードオブデス!」


地面に紋章が浮き出て光り、王国警備兵はパタパタと倒れピクリとも動かない。

皆、物言わぬ死体となった様だ。

それを見たグレゴワールは


「ふむ、丁度良い、新鮮な物だと効果は高い。

朕の命を聞け! 不死者作成クリエイトアンデット!!」


倒れていた王国警備兵はむっくり起き上がり、グレゴワールに尽き従う。

その顔には全く生気が無い。

彼らは全て、生きる屍、リビングデッドの一種”ドラウグル”と言われる魔物と化していた。

ドラウグルはゾンビとは違い生前以上の能力を持つ。

不死者作成クリエイトアンデットは並の魔導士だとゾンビやスケルトン、ワイトしか生み出せない。

だが、世界でも有数の魔導士でもあるグレゴワールは上位種である”ドラウグル”として使役できるのだ。


彼らの作成者であるグレゴワールは彼らに命令する。


「よし、お前たち。この丘の監視塔を落とすのだ。」


物言わぬ彼らは、生前身に着けていた武器を手に取り進軍を始めた。

生前の数倍となった力で疾走する。


ドン!


先頭のドラウグルの攻撃で監視塔の扉は簡単に吹き飛んだ。

突然の出来事に棒立ちしているかつての仲間にドラウグルは襲い掛かった。



丘の監視塔は数刻を待たずに落とされた。

警備兵の数も少なかったこともあるが、

最大の理由はドラウグルが不死者アンデットである事だろう。

倒しても復活して襲い掛かる、不死者アンデット

その恐怖が監視塔を少人数で攻め落とされた理由なのだ。


グレゴワールはドラウグルに監視塔の攻略を命令し、自らは召喚魔法で帝国召喚士を呼ぶ。

呼び出された召喚士は次々に魔物を召喚し、オロールの王都自体を取り囲んだのだ。


そしてグレゴワールは、王国を囲み終わると同時に新たな召喚呪文を唱え始めた。


-------------------


「ククククク。

虚数次元界に編成した呪文をため込むことで比類なき呪文を完成させた!

その虚数次元界への扉を開くことで、その呪文を発動させる!!


それが朕の呪文“究極流星乃嵐アルティメットメテオストーム”であるっ!!」


グレゴワールの言葉に四天王は驚きを隠せない。

自らでは決してできない呪文なのだ。

最早、称賛することしかできない様になっていた。


「おお!素晴らしい。

この呪文によりオロール王国は消滅するのですな。」


「陛下、オロール王国、王都ほど大量の住民たちが死んだ場合、

この地が呪われることは無いのでしょうか?」


その言葉を聞いたグレゴワール皇帝はニヤリと笑う。


「朕の呪文は“究極アルティメット”である。

呪文にはありとあらゆる要素、

四大精霊は言うに及ばず、光と闇、法と混沌、善と悪。

全ての属性を内包した呪文である。

この呪文は呪いもするし解呪もするのだ。

その結果、全てを無に帰す、“究極”の呪文となった。」


「で、では、王国の住民は?」


「呪うことなくその者が持つ魂さえも砕くだろう。

砕かれた魂では呪う事も転生することもかなわない。

ただ消えてゆくだけなのだ。」

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