暗黒大陸へ旅することを前提に作られた馬車
僕達はまず基本となる移動手段から着手した。
今回は前回よりも更に遠くの場所へ行く。
その為にはもう少し大きな馬車と馬が必要だろう。
と言っても一週間で馬車を確保するわけではない。
アルバート商会のこの間使った大型馬車が使えるかどうかの確認だ。
僕とジュリアは商会に戻りルルさんに尋ねてみる。
「いつもの大型の馬車?今回東回りに使っているよ。五日前に出ていったばかりよ。
戻りはそろそろだったと思うけど、その後も使うみたいね。」
「え?東回りですか。いつもなら小規模なのに今回に限って何故大型の馬車を?」
「なんでも、騎士団迎えに行って、その後、西へ行くために必要だと言っていたねぇ。」
どうやら同行する騎士団はアルバート商会の大型馬車で移動する計画の様だ。
なら僕たちは別の大型馬車を手に入れる必要がある。
だが、一週間という短い期間で手に入れるのは不可能だろう。
僕はどうした物かと思案していた。
「なんだ?ニコラ、馬車が必要なのかい。商会の倉庫に新しい馬車が納品されたはずだよ、見てきてはどうだい?」
と言ってルルさんは倉庫の鍵を持って来てくれた。
「新しい馬車は昨日納品になったばかりの新品だ。アルバート会頭が一年以上前に注文していた物だよ。」
倉庫にアルバートさんが注文していた馬車があるらしい。
僕達はルルさんに言われた通り、商会の倉庫に新しい馬車を見に行く。
倉庫の中にはこの間使った馬車より一回り大きい大型馬車が納められていた。
「これはすごいな……。」
この馬車は外側から見ると木材だけで作られている様に見える。
だが、内側の見えない様に金属が張られていた。
薄さから言うとミスリルとの合金の様だ。
「ニコラ、この馬車は中のつくりも違いますよ。」
馬車は二層構造になっていて、床下に交易品を収納することが出来るようだ。
「商売の品物は床下に収納するとして……これは!」
驚いたことに、魔導帝国から仕入れた調理用の魔道具や湧水の魔道具(便利な魔道具の一つだ)が馬車に備え付けられていた。
特に湧水の魔道具があれば積み込む水の量を少なくする事が出来る。
その分食料を少し多めにすることで、より長距離を移動することが可能だ。
ミスリル合金による裏張り、湧水の魔道具など、明らかに長距離、
オロール王国内では無く遠くまで旅することが出来るようなっていた。
この馬車は暗黒大陸へ旅することを前提に作られた馬車である。
アルバートさんは一年前からこの日の為に用意していたのだ。
僕はその事に驚きジュリアと顔を見合わせた。
彼女も同じ様に考えている様だった。
「馬車が確保できたとすれば、後はこれを何で引くかよね?」
「輓獣を何にするかは後でもいいかもしれないよ。交易の品物も考えないと、磁器がセリアンで売れるかは不明だからね。」
「それは、他のメンバーと一緒に考えてみましょう。積荷の総量も考えなければいけないし……そうなるとやっぱり輓獣によって変わるわね。」
「ラバ辺りが有力だけど、キュアさんも絡んでいるとなると別の何かが用意されているかも……。」
「あの人は結構変わり者と言う話だからありそうな話よね。」
僕とジュリアは冗談交じりに話していたが、実際その別の何かを見るまでは動物以外の何かを想像することは無かった。
その別の何かを見たのは大型の馬車を引く物を見た時だった。
翌日、その何かに引かれてアルバート商会の大型馬車は帰ってきた。
二十名以上の鎧に身を固めた連中を運んでいるのに疲れた様子はない。
「何だろうあれは?」
「機械仕掛け(クロックワーク)の何か?」
それは大小さまざまな歯車の回る機械仕掛けの四角い何かが大型馬車を引いている姿だった。




