あの人、宮廷魔導士なんですけど
「ニコラ君には聞かれた事が無かったからつい油断してしまったよ。」
訓練所の三年間、僕はゼフィールのギフトが何であるか尋ねなかった。
尋ねた場合、僕のギフトについても話すことになるだろうし、
そうなると僕のギフトの秘密を気付かないとも限らないのだ。
しかし、改めて聞いてみるとゼフィールのギフトは僕と同じようにかなり危ない物だ。
僕の場合はギフトに収納されている物が危ないが、
ゼフィールの場合、本人が危険な目に会う可能性が高い。
識別の呪文より少し性能が良いぐらいに思っていた。
射程距離が数百メートルある時点で破格の性能であることを考えるべきだったのだ。
まさか識別した内容まで破格の性能だとは思わなかった。
「教会にある識別の水晶球並みの性能とはなぁ」
教会にある識別の水晶球は同じようにLvやスキルが表示される。
ただ、使うのに魔石が大量に消費されるため、
結構な額、それこそ金貨を払わない限り使われることはない。
この水晶球を使うのは金持ち連中、昔の貴族連中ぐらいである。
「識別の水晶球みたいのが出回れば、ゼフィールのギフトも目立たなくなるけど、
今のままではなぁ・・・。」
「そうなんだよ。だからニコラ君、私のギフトは秘密にね。」
秘密にするのはパーティとしても当然の事だろう。
でもギフトの識別と呪文の識別の違いは何なのだろうか?
「呪文とギフトの違いはマロリオンに聞くしかないか・・・。」
「それなら、マロリオンよりキュアさんだろう。」
「キュア?あの線が細く影の薄い人か?」
「影の薄いって・・・・
ああ見えて、あの人、宮廷魔導士なんですけど。」
「な、なんだって!!」
意外な言葉で思わず叫んでしまった。
「いや、訓練所で三年も過ごしたから知っていると思っていたよ。
魔術の訓練や講義の時の先生だし。」
「・・・ 僕は魔術系の訓練や講義はしていない。」
「な、なんだって!!」
今度はゼフィールが叫ぶ番だった。
文字を見ることが嫌いなミハイルはともかく、
何故僕は魔術系の訓練をしていなかったのだろうか?
この答えはスカディ先生が知っているはずだ。
僕たちのカリキュラムを組んだのはスカディ先生なのだから。
僕は急いで協会へ向かった。
スカディ先生は協会長として協会で仕事をしているからだ。
受付への挨拶も早々に、協会長の部屋の前に立つ。
二、三度深呼吸し、コンコンと扉を叩く。
「入りたまえ。」
部屋の中から声がした。
入っても問題がない様だ。
僕は扉を開けるなり、スカディ先生を問いただした。
「先・・・いや協会長、なぜ僕は魔法の訓練や講義を受けてないのでしょうか?」
スカディ先生は僕の言葉を聞いて少し意外そうな顔をした。
「なんだ、まだ判ってなかったのか。」
「????」
「簡単な事だ。ニコラ、お前に魔法の訓練や講義は無意味だからだ。」
訓練や講義が無意味とか使えるかどうか判らないのに無意味と判るのだろうか?
「お前、魔導皇帝の呪文を全て弾いただろう。」




