魔導帝国の終焉その2
「ゼラム伯爵、帝国を分割するという案。
それは帝国に対する、ひいては皇帝陛下に対する不敬ではないのかな?」
「我々が忠誠を誓った皇帝陛下は崩御なされました。
その方以外に忠誠を誓うべき皇帝は何処にもいません。」
さも当然の様にゼラム伯爵は忠誠を誓う皇帝は存在しないと言い切った。
ゼラム伯爵もルジョン伯爵も魔導通信を前に押し黙る。
どれほど時が流れたのだろうか・・・両者の間に沈黙が流れる。
「クハハハハハハハハ」
突然、今までの沈黙を破るようにルジョン伯爵はいきなり笑い出した。
「失礼、ゼラム伯爵殿も面白い事を言う。
だが、確かに我らが忠誠を誓うに値する皇帝陛下はおりませんな。
身の丈に合った分割統治が妥当と言えましょう。」
「だが、現状はそうはならぬでしょう。
自らの復讐のためにアビスウォームも持ち出したマリデン子爵は
アッシュランド伯爵に返り討ちに会いました。
返り討ちにする時に強力な呪文でアビスウォームを屠ったと聞きます。
その為、四天王の一人でもあるアッシュランド伯爵ならば皇帝陛下の代わりが務まるとの話も・・・」
「ほう、アッシュランド伯爵がアビスウォームを。
確かにゼラム伯爵の言う通り次期皇帝として推挙されるでしょうな。
ですが・・・」
「ですが?」
「例えば即位前に暴走した何者かの手によって命を絶たれるかもしれない。
例えば墓参りの際、呪文が使えなくなりそのまま圧殺されるとか・・・。」
ルジョン伯爵はそう言って老獪な笑みを浮かべた。
秘密裏に行われたゼラム伯爵とルジョン伯爵の会談が終わると両者は素早く兵を帝都に差し向けた。
流星によってアビスウォームが全滅したことは両陣営に疑惑と混乱をもたらす。
だがそうなる前にレクトを始末すればよいのだ。
その日は朝からシトシト雨が降っていた。
「旦那様、この様な雨の日にでかけなくとも・・・。」
執事がレクトの体を心配して声をかける。
だが、レクトは首を振り、
「こんな日だからじゃよ。
それにワシが行かねば、寂しがるからなぁ。」
レクトは白銀の兜を手に取りそれを被る。
帝都の中を移動する時は常に白銀の鎧を身に付けていた。
(そろそろこの鎧も体にこたえる様になってきたな。)
実際、レクトはそろそろ60才になろうかと言う年齢である。
老人とも言える年齢で全身鎧を着用できるのは
日頃から着用しているのと白銀の鎧に身体強化の
効果があるからである。
だが、それも限度はある。
本人の身体能力が落ちれば着用は危ぶまれるのだ。
レクトはいつもの時間、妻の墓参りをする。
これはどんな時も欠かしたことのない日課なのだ。
いつもの様に貴族用の共同墓地に行く。
雨は鎧が弾く為、問題はなかった。
いつもの通り妻の墓の前で手を合わせる。
!!
レクトは急に体が重くなり膝をついてしまった。
まるで鎧の重さが増した様に感じられた。
(これは一体?)
原因を考えるのも束の間、
地面が暗くなり先ほどまで降り注いでいた雨が止んだ。
驚いて空を見上げると目の前には空を覆うほどの巨石が浮かんでいた。
それがレクトの見た最後の光景だった。




