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ニコラ君にしようと思う。

「灰色の雲ですか。今にも雨が降りそうな天気ですね。」


執事のナイアルは商会の窓から空模様を見上げると、

急いでメイドたちに大きめのタオルを何枚か用意させた。

丁度、商会主であるアルバートが市場調査に出ているのだ。

アルバートは徒弟の教育も兼ねての市場調査を月一回行っている。


「今日はニコラ君を連れて行きましたか・・・。

ギフトを授与されたのでいい機会だと見たのでしょう。

おや?もう降って来ましたよ。」


ナイアルが空を眺めていると、

空に黒い雲が沸き上がり、雨が降り出した。

その雨も時間がたつにつれ雨足が強くなってくる。


「あまり濡れずに済めばいいのですが・・・期待できませんね。」


商会主であるアルバートとなると、上着も仕立ての良い物を着ている。

雨に濡れた場合、手入れに手間が余計に掛かるのだ。

ナイアルはその事を考え少しため息をつくと主を迎えるべく商店の入り口へ向かった。


商店の入り口ではナイアルやメイドたちが大きめのタオルを手に待って

アルバートやニコラの帰りを待っていた。

少しでも早く雨を拭うためだ。


だが、帰ってきたアルバートとニコラ二人の姿はナイアルの予想に反した姿だった。

一滴も雨に濡れた様子はない。


(はて?雨は・・・降っていますよね?)


商店の中からでも判るぐらい雨音が響いている。

アルバートは商店に帰るなり興奮冷めやらぬ様子でナイアルを呼ぶ。


「ナイアル!ナイアル!」


「はい、アルバート様!いかがなされましたか?」


アルバートに呼ばれ、ナイアルが急いで駆け付けた。


「ナイアル!やはり私が睨んだ通りだった!」


「と言いますと?」


「ニコラだよ!ニコラがあのギフトの使い方を見せてくれたのだよ。

ニコラ、ナイアルに見せてやってくれ。」


ナイアルがニコラを見ると手平を上に向けているのが見えた。


「?これは!!」


手のひらの上には銀の円盤の様な物が同心円状に波打って存在していた。

その上を雨が当たり弾かれている。


「雨を弾く?これはいったい?」


「空間収納の対象を雨にしました。

僕の空間収納では雨を入れる事が出来ないので弾くことが出来るのです。」


確かに、空間収納によって雨を弾いている様だ。

これは収納できない、収納しようとするとその物を弾いてしまう事を利用したものだ。

ナイアルはアルバートへ振り向くと


「すると、旦那様は・・・。」


「ああ、訓練所に行ってもらうのはニコラ君にしようと思う。」


―――――――――――――――――――――


僕はアルバートさんからの指示で訓練所へ通う事となった。

ここでは様々な武器を使った戦闘を教えている。


アルバートさんが言うには、

“これからの時代、多くの商人が未開の地に行くことになるだろう。

当然、未開の地で無事に過ごすためには戦う力が無くてはならない。

訓練を効率的に行うには小さいころから訓練するのが一番なのだよ。“


僕は主武器メインウエポンスピアとし、

副武器サブウエポンを短剣であるグラディウスとした。

訓練所ではその二つを主に訓練している。

訓練の為の槍なので矛先はついておらず1mぐらいの木の棒である。


カン、カンカン、カン


僕は訓練士のスカディさんに槍の手ほどきを受けていた。

空間収納を盾に見立てた、“槍と盾”の形式だ。

遠距離武器である弓や魔法を盾で防ぎ、槍で突撃する。


カン、カン、カン


不意にスカディさんが僕の方へ急接近してきた。

咄嗟に空間収納の”銀の盾”を構える。


だが、スカディさんは盾に当たると同時に槍を離し拳で攻撃してきた。

僕は槍を弾いた衝撃で体勢が崩れた。

足の力で衝撃を受け止める事が出来なかったのだ。

その結果、僕は防御の切り替えが間に合わずスカディさんの拳が僕の体に届く。


ゴスッ


練達の戦士らしく重い拳だ。

肺の空気を吐き出しながら僕は後ろに吹き飛ばされた。

スカディさんはこれでもかなり手加減しているのだ。


「ダメだね。相手の動きをよく見て瞬時に防御対象を変えないと。」


スカディさんとの訓練で判った事だけど、空間収納を盾とするには二つ問題がある。


例えば今のスカディさんの攻撃、

空間収納の盾で防ぐ対象を武器といった大まかな物にする。

この場合、銀の盾を展開しさえすれば防げるが、展開まで時間が掛かりすぎて戦闘には役に立たない。


瞬間的に展開させるには対象をある程度特定しなくてはならない様だ。


この辺りは、空間収納を使った戦闘に慣れれば改善されるだろうと、スカディさんは言っていた。


そしてもう一つが攻撃を空間収納の盾で受けた時の事である。


攻撃を空間収納の盾で受けるとその威力と同じ力で弾く。

弾いた分は僕の体にも力がかかる。

僕の足腰が耐えられない場合、そのまま押し込まれるのだ。

今回も槍を弾いた衝撃で体勢を崩した。

その為、訓練開始前に王城の周囲を走ることになっている。


朝、訓練が始まる前に王都を周囲を走る。

その後、三時間ほど戦闘訓練。

アルバート商会に戻って徒弟の訓練。

そんな訓練の日々が始められて二年が過ぎようとしていた。


―――――――――――――――――――――


夜遅く王都近郊の丘の上で四人の男たちが戦闘を行っていた。

片方は怪しげなローブ姿で姿を隠し、時々呪文を放つ。

もう一方は鎖帷子と長剣と携えた王国の警備兵だ。


三対一の戦い。

ローブの男一人に対し三人の男が取り囲んでいる。

戦闘終了は時間の問題と思われた。

もっと早くに決着をつけられるのだが、

ローブの男を生け捕りにするために時間が掛かって様だった。


「もう逃げられんぞ!

貴様の正体、暴いてやる!」


「さて、そう上手くいくかな?」


「ほざけっ!!」


一人の警備兵が剣を突き出すと、その剣にローブの男が飛び込んだ。


「な、なに?!」


体を貫かれ致命傷を負うローブの男、だが。


「クククッククク、我は死兵よ。」


「死兵だと?」


「我の死が呼び水となって、あのお方を呼ぶのだ!」


グハッという音と共にローブの男が吐血する。

その血は大地にしみ込まず、地面の上を動き回り、

男が流した血は複雑な幾何学模様を描いて行く。


「こ、これは召喚陣!!」


警備兵の男が叫ぶ。

それと同時に召喚陣が光りその中から恐怖が出現した。

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