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収納力ゼロ、僕の空間収納で物は収納できません。  作者: 士口 十介
魔導帝国の興亡

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あれは、アビスウォームだ。

アッシュランドから王都までの帰りの道程は一旦テリアまで引き返す。

海から帰ることも可能だが、遠回りになる上、

途中に海竜の巣と呼ばれる危険地帯を通らなければならない。

山間部を通るコースもあるが盗賊や別の黒騎士が出る可能性が高い。

従って、テリアまで引き返さざるを得ないのだ。


僕たちは馬車を走らせながらも周囲の警戒を怠らない。

ロムスさんから”ここは間もなく戦場になる”と言伝があった。

アッシュランドにどこかの貴族軍が接近しているのだ。


そろそろ、領境だ。

進軍してきていると言う貴族軍とかち合うかもしれない。

僕たちは昼の休憩時に今後の方針を決めることにした。

軽食をとりながら、これまでの道中に気づいたことを話す。


「魔法的な探索も必要だが、目視による探索も必要だな。」


探索呪文を使い周辺を探索しているマロリオンがそう進言した。

魔導帝国と言うだけあり、魔法の研究は王国よりも進んでいる。

探知魔法に対する妨害も研究されていて、

高度な呪文や魔道具が存在する。

現にマデリンの使った広域隠蔽の魔道具は王国にはない。


探索呪文だけの見張りは信頼性に欠けると言う事だ。


「目視ですか・・・

弓を使う私やキョウカが適任か?」


「いや、ジュリアさん。ここは私の番だろう。」


ゼフィール自ら名乗りを上げる。

少し引いたところのあるゼフィールが自己主張するのは珍しい。


「私のギフトは”識別”。

目に見えた物が何であるか判別することが出来る。」


”識別”のギフトか、

だから僕のギフトで行った”オートリバース”を識る事が出来たのか。

確かにゼフィールのギフトなら魔法による現象を識る事が可能だろう。

僕はジュリアの顔を見ると静かに頷いた。


「判りました。

では、前方への警戒はゼフィールさんに頼みましょう。

ニコラはゼフィールさんと一緒に前方の警戒をお願い。

私とキョウカは後ろから来るものを見張るわ。

マロリオンは引き続き魔法での探索をお願い。」


休憩を終えた僕たちは再び帰路に就いた。

今日中に領境を越えたいからだ。

幸運なことに道中、

魔法による妨害や隠蔽に遭う事はなかった。


領境を越えた場所で少し開けた所を今日の野営地とした。

今日はミハイルとカエデ、シオリが食事当番で、

他の者、僕とジュリア、キョウカ、ゼフィールは

薪拾いや食料調達(あれば)だ。


野営地から少し離れたところに小高い丘があり、

その上から目を凝らすと今まで通って来た道や街、森が、

そして眼下には小川が見える。


「あれは何かしら?」


ジュリアは道のはずれを指さした。

弓兵としての視力で何か見つけたらしい。

何かあるのだろうか?


「よくわからないな?

ゼフィール、ジュリアが言っているのは何だ?」


ゼフィールはジュリアが指さした方角を

じっと見つめている。


「・・・あれは、アビスウォームだ。

全部で五匹、大集団だな。」


「アビスウォーム? ウォームと言うから超巨大なミミズか?」


僕は砂漠に出没するサンドウォームを連想してそう尋ねた。


「ああ、そうだ。

アビスウォームはサンドウォームの特殊個体だ。

同じぐらいの大きさで、普通の地面で活動出来る。」


「なんだって、どうしてそんな奴がいるのだ?」


「おそらく誰かが召喚した物だ。

アビスウォームならブロッサムの巨大な壁も壊すことが出来る。

街を再利用する気も無い様だな。」


ゼフィールの考えはおそらく正しい。

アビスウォームがサンドウォームの地面版と考えると

間違いなくブロッサムの街は跡形も無く破壊される。


「ニコラ、ここからではどうすることも出来ないわ。

それに、近くにいても、あれの対処は出来ないわよ。」


ジュリアの知識の中だけではアビスウォームに対処できる実力は無い。

僕は知っていた。


“究極流星(アルティメットメテオ)の効果”ならこのぐらいの距離は届くはずだ。



「ニコラ、どうしたの?そろそろ食事のはずだから戻るわよ?」


「ああ、判ったジュリア。でも先に行っていてくれ。

ちょっと、トイレにね・・・。」


「もう!食事前なのに。」


ジュリアたちが野営地へ戻ったのを見計らって丘を降りる。


出来るだけ、見つからない様に野営地から見えない位置を探し出す。


(ここなら問題は無い。

例え発光現象や轟音があっても対処できる。)


そうして僕は“空間収納”に収められた効果、

“究極流星(アルティメットメテオ)の効果“を

アビスウォームへ五本ほど打ち出した。

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