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収納力ゼロ、僕の空間収納で物は収納できません。  作者: 士口 十介
魔導帝国の興亡

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33/89

おそらく八人だ

黒騎士は剣を収め僕の前に跪いていた。

その傍らには洗脳の兜だったものが転がっている。

マロリオンに頼んで兜を調べてもらう。


「兜の魔道回路は完全に壊れていますね。

このまま使用しても問題は無いと思います。

他の効果は残念ですが、洗脳が残るよりましでしょう。」


続いて僕はマロリオンとカエデの二人に呪文を頼む。


“敵意感知(センスエネミー)”と“嘘発見(ライ・ディスカバリー)”


敵意を推し量る呪文と相手の嘘を見破る呪文である。

この二つの呪文を黒騎士に対し使用する。

つい先ほど迄、戦闘を行ってきた者をそのまま信用する者はいない。

当然の処置だ。


「ゲルギオスさん、

今から二つの呪文を使いますが抵抗しないでいただけますか?」


僕は跪く黒騎士にこの二つの呪文を使う事を告げる。

相手の反応でも相手の真意を読み取ることが出来るからだ。


「判った。やってくれ。

私は一切の抵抗はしない。」


黒騎士は当然の様に二つの呪文を受け入れた。

どうやら彼に戦う意思はない様だ。



黒騎士ことゲルギオス・デミルが仕えていたと言うルテール国。

今より五十年前に魔導皇帝“グレゴワール”により併合された国の名前だ。

その国の騎士だったという事はゲルギオスの年齢は70歳前後と考えられる。


しかし、目の前にいるゲルギオスはどう見ても三十歳、

多く見積もっても四十歳にしか見えない。


「私は魔導皇帝の実験によりほとんど老化しない、

不老となっている。

強化や若返りをする為の研究の実験として我々を使ったのだ。

全ては自分が永遠に生きるためだ。

不老はその実験での成果だといえよう。」


黒騎士ゲルギオスの話によれば、魔導皇帝はほぼ不老不死に近い存在となっている。

その皇帝はゲルギオスにいったいどのような命令で旅人を襲わせていたのだろうか?

目的は何なのだろうか?

僕はゲルギオスさんに対して率直に尋ねる事にする。


「私への命令か・・・


“国境を許可なく通る者は始末せよ”


という命令を魔導皇帝から受けていた。

命令自体、兜を通して伝えられていたが、

三年前からこの命令は変わっていない。」


三年前?!


三年前と言えば魔導帝国がオロール王国の王都を包囲した時だ。

その時から黒騎士への命令が変わってないと言うことになる。


包囲戦と同時期ならば魔導皇帝はオロール王国による諜報活動を防ぐ目的で、黒騎士を配置したのだろう。

けど、あの魔道皇帝が三年も命令を変えないことがありえるだろうか?

仮に命令を変えないとして、その理由は何だろうか?

話を聞けば聞くほど謎が深まる。


それに僕らが帝国内を移動するのに問題がある。

黒騎士はゲルギオス一人なのだろうか?

僕達は魔導帝国を更に調査する必要がある。

だが黒騎士が他にも何体かいるとなれば調査は難しくなるだろう。

目立たない場所を移動する場合、他の黒騎士がいた場合狙われる可能性がある。



「黒騎士・・・なるほど、言いえて妙だな。

この鎧を着ている者達、元をたどれば魔導帝国と敵対していた国の騎士だ。

帝国を移動するとなると、配置されている黒騎士の数が問題になるか。

我々は常に単独行動だ ・・・ そうだな、

数は最後の命令時点、私を入れて八人だろう。」


ゲルギオスは黒騎士の数を正確に知っているわけではない。

魔導皇帝から命令で帝国内の西側の範囲を受け持っていた。

その受け持ちの範囲と帝国の領土から考えると八人になるそうだ。

という事は、最悪七人を相手にしなければならない。

幸運なことは黒騎士は単独行動しているという事だろうか。


「ところで、ゲルギオスさんはこの後どうしますか?」


僕はゲルギオスさんに今後の事を訊ねてみた。

ゲルギオスさんが協力してくれるなら、黒騎士の対応も可能だろう。


「・・・助けてもらってすまない事だが、

私にはやらなくてはない事があるのだ。」


「やらなければならない事?」


「ああ、

ルテール国の国王、

バネット陛下やお后様、姫様たちの安否の確認をしなくてはならない。」


今は無き王国の王族の確認。

元々その国の騎士だったゲルギオスにとって当然の行為だろう。

実際、ルテール王国は魔導皇帝に滅ぼされたのではなく併合された。

彼らが生き残っている確率は高い。

一度誓った主の下に馳せ参じるのは騎士としてはよくある事だ。

大方、騎士の誓いとか何とかが関係しているのだろう。


「判った。

確認でき次第、僕たちに協力してもらうと助かる。」


「ああ、この剣にかけて誓おう!

陛下やお后様、姫様たちの安否の確認の暁には

我、ゲルギオスはニコラ殿に生涯の忠誠を誓う!


では御免!」


黒騎士ゲルギオスは兜を被り、颯爽と魔導帝国に向かって走っていった。

その速度はあまりにも早くあっという間に視界から消え去った。

こちらが何か言う暇もない速度だ。


・・・・・


(ゲルギオスは生涯の忠誠と言っていたが、彼はほぼ不老不死じゃなかったっけ?)

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