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収納力ゼロ、僕の空間収納で物は収納できません。  作者: 士口 十介
魔導帝国の興亡

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最低限の情報

ミハイルへの攻撃を銀の盾で防いだことで黒騎士が少し後ろに動く。

黒騎士を転倒させる目的で左手の盾を黒騎士の足元に移動させるが

軽いステップで躱される。


「気をつけろ!

黒騎士は訓練所でのスカディ先生並みの腕を持つ。

だが、力は先生以上だ!」


僕は黒騎士の攻撃を防ぐことで得た情報を全員に伝える。

その言葉に呼応して、皆の動きが先生を相手にしていた時の物になった。

訓練所では先生相手に勝ったこともある。

それを考えると十分に勝ち目はあるだろう。


黒騎士は次に狙う目標を慎重に選んでいる様だ。

相手に時間を与えて主導権を渡すわけにはいかない。


二本の矢が黒騎士目掛け、飛ぶ。

ジュリアとキョウカによる二方向からの射撃だ。

彼女ら二人は黒騎士から大きく間合いを開け、黒騎士から狙われない様にしている。


彼女らが放った二本の矢は黒騎士に命中するかのように見えたその時、

黒騎士は太刀を振るった。


ザンッ!!


黒騎士の振るわれた太刀はいとも簡単に

一刀で二つの矢を切り落とした。


だが俺達の攻撃はまだ止まらない。

矢を切り落とした隙を狙い側面からシオリの槍が黒騎士を襲う。

槍と剣では圧倒的に槍が有利だ。

多少の技量の差は覆すことが出来る。


黒騎士は間合いの遠い槍は苦手なのか逃れようと動く。

ゼフィールは動きを封じようと回り込もうとする。

黒騎士はそれを逃れる様に大きく避けた。


その避けた場所を予測し、マロリオンの氷槍(アイススピアー)が飛んだ。


パキシィィィン!!


「私の氷槍(アイススピアー)をかき消しただと!!」


マロリオンの放った氷槍の呪文は十分殺傷能力のある中位の呪文だ。

その呪文を黒騎士はいとも簡単に防いだ。

いや、かき消した。

黒騎士をよく見るとその鎧の上に何かの文字のような物が薄っすらと書かれている。

対魔法障壁(アンチマジックシェル)の付与(エンチャント)がなされている様だ。


対魔法障壁は攻撃側の魔力が防御側の魔力より高ければダメージを与える事は可能だ。

また付与を打ち破る場合、魔法を唱えた時より魔力が低くてすむ。

それなのにマロリオンの氷槍を打ち消したのだ。

これは、あの鎧に付与を行った人物の魔力はマロリオンの魔力の数倍であるという事を示していた。

そしてそのような魔力を持つ者は、


「魔導帝国の皇帝自身の作品か!」


マロリオンの魔力は訓練校でも一、二を誇る。

宮廷魔術師と比較しても高いほうだ。

そのマロリオンが打ち破れない対魔法障壁の付与を使える者は

王国筆頭の錬金術師か魔導帝国皇帝が直接付与したもの以外にない。

黒騎士は魔導帝国の防衛兵器と言ったところだろう。


「魔導皇帝の付与か・・・。

ではあの黒い騎士はゴーレムの一種か?」


ジュリアの言葉にマロリオンが識別(アンディテファイ)の呪文を唱える。


「マロリオン、識別の呪文は対魔法障壁で防がれるのでは?」


「いや、ニコラ。

識別の呪文は成功度合いによって開示される情報が変わる呪文だ。

良い点はこの呪文に失敗はない。

最低限の情報は得られる呪文だ。」


「最低の情報?」


「識別による最低の情報は名前、識別名と呼ばれる物が判る。

それを防ぐのは高度な偽装。

あの鎧の性能から考えて、偽装はされていない。

付与数が過剰になるからね。」


マロリオンによると鎧の付与は出来て一つ、魔力と技量が高い者が作った時で三つ。

鎧には描かれた魔法陣の種類は三つ。

一つは魔力障壁だろう。

もう一つは身体強化。

最後の一つは体力回復だと考えている様だった。


予想通り対魔法障壁により識別の呪文の成功度が最低になる。

だが識別の呪文は最低の情報、識別名を得ることが出来た。

マロリオンは頭に浮かんだ識別名を全員に伝える様に読み上げる。


「・・・識別名・・・ゲルギオス・デミル?

人の名前が付いています!!」


「なんですって!!

あれは人と言うの?」


識別名に人物名がついている場合、その人物は人類種であることが判る。

黒騎士は苗字がある。


つまり、貴族という事だ。

名前からすると、魔導帝国の人間だろう。


識別の呪文の情報が偽装されていなければ、

黒騎士は魔導帝国の貴族という事になる。

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