魔導帝国への探索
冒険者訓練所での三年間は色々なことがあった。
最初の一年間は訓練の度合いが判らなかったのか、
スパルタを越えた何かの訓練になっていた。
死者が出なかったことが幸いだといえよう。
僕も川岸の向こうで、死んだじいちゃんやばあちゃんが手を振る光景を見た。
しかし、良い点もあった。
同じ死線を越えた為か、
あの貴族の少年、クリス・ウィッスルと狼の獣人族との間に熱い友情が生まれたらしい。
今ではお互いを“刎頚之友”と呼んでいる。
変われば変わるものだ。
次の二年目は訓練が抑えられたのか、
スパルタになれたのか前の年のような事は少なくなった。
だが、新入生が増えた為、訓練生同士の問題も増えた一年だった。
特に色恋沙汰が多くなる。
どう言う訳かジュリアが東奔西走し、それに僕が付き合わされる形になった
そして三年目。
訓練の最終過程という事で一年目の訓練よりも厳しく激しく高度な訓練が行われた。
だが慣れと言う物は恐ろしいものでそんな訓練にもついて行った。
その訓練を上回ると言う卒業試験も難なく乗り越えた。
三年間を通して考えると忙しい毎日だった。
他の訓練生は仲間内で遊びに出かけたりと暇があったようだが、
僕たちには自主学習の暇さえないほどの忙しさだった。
今を思えばいい経験なのだろう。
”冒険者訓練所を卒業した僕たちに越えられない壁は無い!“
とその時は考えていた。
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僕たちは王都になる冒険者協会にの一室に集合していた。
この冒険者協会は、僕たちの卒業と同時に設立された組織だ。
冒険者訓練所を卒業し晴れて冒険者となった者は
この協会に登録することを義務付けられている。
僕たちはスカディ先生から依頼内容の説明を受けていた。
「「「「「「「「魔導帝国への探索?!」」」」」」」」」
トンデモナイ依頼内容だった。
最初の冒険が高難易度の依頼で大丈夫だろうか?
「君たちが疑問に思うのも無理もない。
ここ二、三年の魔導帝国の動きがおかしいのだ。
帝国拡大の為に日々邁進していた。
だが、以前はあった辺境での小競り合いが無い。
その上、帝国領内の情報が一切入ってこない。
暴動や反乱がおこっている可能性もあると報告も上がっている。」
どうやら王国に帝国の情報が一切入ってこない事が理由らしい。
でも、王国の調査機関や王国兵団は動かないのだろうか?
「魔導帝国に何かが起こっていると・・・
でもなぜ我々なのですか?」
「ニコラ、君の疑問も頷ける。
駆け出しの君たちには荷が重いかもしれない。
だけど、王国兵団が動いた場合を考えてみてくれ。」
王国は三年前に魔導帝国から侵略を受けた。
その魔導帝国に対して、王国兵団を動かした場合、魔導帝国は報復を疑う可能性は高い。
偵察でもその前触れと見るだろう。
そうなれば国の全兵団が激突する大規模な戦争になりかねない。
疑われないようにするにはスカディ先生の言う通り、
王国兵団と関係のない我々冒険者にしか出来ない。
「それに利点もあるぞ。」
魔道王国への探索をしり込みする僕らに対しスカディ先生は言葉を続ける。
「アルバート殿の目指す暗黒大陸を陸路で進む場合、魔導帝国を通る。
判っている海路は途中、海龍の巣がある為、大規模船団では航行できない。
未知の海路を進む手もあるが、途中どの様な危険があるのかは不明だ。
それよりもある程度判っている魔導帝国を通る道の方が海路よりも安全だ。」
安全と言う言葉にミハイルは反応した。
「でもスカディ先生。
冒険者は冒険をする者では?」
スカディ先生は諭すようにミハイルに言う、
「それは違うぞ、ミハイル。
冒険者だからと言って必要のないところまで冒険する必要はない。
必要なところ以外は安全策を取るべきだろう。」
スカディ先生曰く、
“四六時中、冒険ばかりしていると肝心の時に失敗する。“
常に最良の結果を出すことは出来ない。
肝心な時に最良の結果を出すために、
“必要のない所に運を使う必要はない“という事なのだそうだ。
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それら、いや、その者たちは帝国の各地に配備されていた。
黒い鎧に身を包み、魔導皇帝の命ずるまま動く。
その黒い鎧が受けた最後の命令は
「近づくものをせん滅せよ」
皇帝が滅した今もその命令は生きていた。




