気合を入れて飛び上がれば見えるかもしれない。
別邸の周りに集まっている人々は僕と同じくらいの年齢に見える。
時間が経つにつれ、人数も増えている様に思えた。
でも、アルバートさんはこんなに人を集めて何をするのだろう?
これも計画の一端を表しているのだろうか?
「ジュリア、何か聞いていない?」
「ん、判らないわ。
娘である私にも秘密にすることは多いし。
この間から会合が多かったけど、これもその一つかもしれないわ。」
「そうか、わからない事を考えていても仕方がないね。
とりあえず別棟に行って荷物を置くか。
広間に集まれとも言っていたしね。」
「おーい!ニコラ!
別邸前の立札に何か貼ってあるぞ!」
大きな立札の前でミハイルが手を振り僕らを呼ぶ。
どうやら何か重要なことが書かれているらしい。
ミハイルの後ろの者は熱心に大きな立札を見ている。
「何だろう?僕たちも行ってみよう!」
ジュリアと一緒に立札の前にたどり着く。
だが集まっている人が多く、何を書かれた物が張り出されているのか見ることが出来ない。
前の方の人は少しづつだが減っている。
このままだと見るためには時間が掛かりそうだ。
ここからなら少し飛び上がれば見えるか?
えい!
と両足に力を込め飛び上がる。
背の高い者もいるためか、少し飛び上がる程度では見えない様だ。
ならば、もっと高く飛び上がれば見えるかもしれない。
再び気合を入れて僕は思いっきり飛び上がろうとする。
だが、一ミリも飛び上がらない。
今度は手のひらを下に向け、再び飛び上がる。
ドン!!!
力を込めた跳躍でいつもの二倍の高さまで飛びあがることが出来た。
(上手く行った。)
実はギフトを使い、飛び上がる距離を増やしたのだ。
最初の飛び上がる時に、“飛び上がる”効果を収納する。
次に飛び上がる時に収納した“飛び上がる”効果を放出。
結果、二倍の高さまで飛びあがることが出来たのだ。
(よし、これなら何が書いてあるか判るか・・・)
飛び上がってみた立札には
男子寮、女子寮、部屋番号、人名と書かれていた。
残念ながら人名らしいのは見えたが何と書いてあったかまでは判別できなかった。
少し遠いのと飛び上がっている時間が短すぎるからだ。
ドン!
少し大きな音を立て着地する。
いつもより高く飛び上がったため大きな音が出た。
「ニコラ、そんなに飛び上がって大丈夫?
怪我してない?」
隣で見ていたジュリアが心配そうにたずねる。
いきなり大きく跳躍したし、着地の時も大きな音が鳴ったからだろう。
僕は笑って答える。
「大丈夫。
それより、あの立札には男子寮とか女子寮とか書かれていたよ。
他にも部屋番号とか人の名前とか。」
「寮?何故そんな事が書かれているのかしら?」
「飛び上がってみたけどよく見えない。
やはり前があくまで待たなければいけないみたいだね。」
ジュリアと待っていると、少しずつだけど前に進む。
立札を見終えた者から寮の方へ移動しているらしい。
そして、目の前に空きが出来た。
「ジュリア!これでゆっくり見ることが出来るよ。
どれどれ・・・・・」
男子寮
101号室 予備
予備
201号室 ミハイル(金床武具店)
マロリオン(アルバート商会)
301号室 ニコラ(アルバート商会)
ゼフィール(西風商会)
ん?
西風商会のゼフィールと同じ部屋になっている。
「私はカエデと同室ね。」
カエデと言うのは今日パーティを組んだ西風商会のメンバーの一人だ。
白髪で狐型の獣人族の人だったはず。
部屋は・・・ 今日パーティを組んだ者との同室が多い様に思える。
?!
シオリとキョウカが同じ部屋だ。
あまり仲が良くないように思えたが、大丈夫だろうか?
立札を見ながら立っていると誰かが近づいてきた。
「どうやら僕の同室はニコラ君の様だね。
これからよろしく。」
何時の間に来たのかゼフィールが握手してくる。
これから?




