この遺跡を探索しに来たのかい?
シュマレフの郊外にある遺跡は千年以上前の町の跡だ。
元々は石造りの町であったらしい。
遺跡は所々崩れているのと、大半の家には土砂が流れ込んでいて
町の大部分が埋もれたままの状態になっている。
何でも、千年ぐらい昔に大洪水がありその時に埋もれてしまったという話だ。
僕たちが標的とするゴブリンは町の建物跡にはいない。
遺跡の町の地下、下水道の中に存在する。
この遺跡には大規模下水道跡があるのだ。
下水道にも土砂は流れ込んでいるが、
町の部分ほど土砂が多くない為、
町が放棄された後にゴブリンが住み着いた様だ。
その上、下水道は町全体に張り巡らされていて入り組んでおり、
さながら迷宮のような構造になっている。
「地下への入り口はもうじき・・・誰か先にいてますけど?」
先頭のシオリが言う様に下水道の入り口には三人がいて中を窺っている。
その一人を見たミハイルが
「あれは西風商会のゼフィールじゃないか?」
「西風商会?海産物大手の?
シュマレフにいてもおかしくありませんが、何故遺跡なのでしょうか?」
シオリの言う事ももっともだ。
ゼフィールは西風商会の次男、ここで探索者のまねごとをするはずはない。
ふと、隣に気配を感じたので見る。
ジュリアだ。
ああそうか。
ジュリアはこれでもアルバート商会の次女だ。
アルバート商会は穀物大手の商会、そのジュリアが遺跡に来ている。
そして、海産物大手の西風商会の次男も来ている。
これは偶然ではない。
僕はスカディ先生の方を見る。
スカディ先生は唇に人差し指を当て、
“話さない様に”と言う仕草をした。
「あの横にいてる獣人族は!!」
シオリが指さす先には二人、
薄い赤紫の毛並みの獣人族と白い毛並みの獣人族がいた。
耳の形から赤紫が猫型、白い方が狐型と言われる獣人族だろう。
その二人はゼフィールの両側に立ち周囲を警戒している。
「シオリ。個人的なしがらみは・・・」
「わかってます。マロリオン。
あれやて腕のいい斥候とまじないしやから。」
「“まじないし”?」
「ああ、あんたと同じ魔法使いの事や。
うちら獣人族は魔法使いの事をそない呼んでおる。
回復術をつかう魔術師ん事やから悪い意味おへんよ。」
種族が変われば呼び方が変わるのはよくある事だ。
エルフでも魔術師の事を精霊使いと呼んでいたりする。
かの魔導皇帝曰く、魔術師も精霊使いも魔力の取り出し方の違いだけで本質は同じ物らしい。
呪文を使ったことのない僕にとってその違いはピンとこない。
「おや?
君達はアルバート商会のジュリエットさんとニコラ君じゃないか。
どうしてこの様な所に?
僕たちと同じ様にこの遺跡を探索しにに来たのかい?」
僕たちに気が付いたゼフィールがこちらに話しかけてきた。
彼は“探索”と言っていた。
僕たちの目的は“ゴブリン退治”。
目的は違うが場所は同じ。
スカディ先生は実戦にを積むための実習だとも言っていた。
これは協力して当たれという事だろうか?
「いや、私たちはゴブリン退治だ。
ゼフィール君は探索と言っていたな、何を探索するのだ?」
「やあ、ジュリエットさん。
ここの遺跡の地下の調査をせよと言われた。
下水道のマッピングで成果を判断するそうだよ。」
マッピングは遺跡を探索する上で欠かせない行為だ。
だが、危険な下水道を探索するには三人では人数が足りない。
「そうか、こちら側はゴブリン退治だから丁度いいかもしれないな。
ニコラ、どう思う?」
「良いのではないでしょうか。
丁度、我々の構成では回復術を持った者がいるとゴブリン退治も楽になるかと。」
「そうね。確かにいい考えだわ。
ゼフィールさんどうかしら?」
「うーん。
僕らのパーティは剣士、回復術師、斥候だから問題はない。
ゴブリン相手では少しつらい編成だったから助かるよ、
そちらはどんなメンバーなんだい?」
「こちらは
前衛がハンマー使いのミハイル、
槍使いで盾のニコラ、
中衛が弓士の私、
斥候のシオリ、
魔法使いのマロリオンね。」
「ニコラ君は盾役なのか・・・ でも盾は?
持っていない様だが?」
「ギフトを本来とは違う使い方をしているのですよ。
でも盾としては問題ないです。」
「いやいや、ニコラの盾はどんなものでも防げるからある意味最強の盾だと思うぞ。」
ミハイルの評価は過大評価の様な気がするが、悪い気分じゃない。
実際、現状試せる物での攻撃は全て弾くことが出来た。
僕の銀の盾で弾けない物はあるのだろうか?




