究極流星乃嵐
僕の空間収納の銀の円盤と禍々しい光が接触する。
それと同時に、何かが大量に僕の中へ吸い込まれる感覚があった。
「いったいなにが・・・?」
思わず口に出る。
だが次の瞬間、猛烈な気持ち悪さ。
何かを吐き出しそうな気分になる。
吐くのは口からではない。
左手の反対側、右手からだ。
吸い込まれたモノと同じモノが吐き出される様な感覚がある。
(もしかして、さっきの”禍々しい光”を吸い込んだのか?)
もし、それが正しければ迂闊に吐き出すのは不味い。
少量でもあの光が当たるとろくでもない事がある予感がする。
(でもどこへ向ければ・・・。)
僕は屋上から王都を見渡した。
人々が町から居なくなり静まり返る王都が見える。
不気味な光が落ちてくるので、皆、地下に避難しているのだ。
いつもなら警備の為、壁の上の道を誰かが歩いているが今は人一人いない。
だが、その先には魔物が黒い山脈の様に連なっているのが見える。
「あるじゃないか!丁度いい場所がっ!!」
僕は右手のひらを黒い山脈に向けスライドさせる。
スライドさせたことで僕を中心に銀色のリングが展開し、
そこから禍々しい光が黒い山脈に向かって吐き出された。
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話は少し前、
王都に禍々しい光が落ちる、ほんの少し前にさかのぼる。
「あと少しで我が呪文”究極流星乃嵐”は出現する。
それがこの世界からオロールの消える時だ。」
”究極流星乃嵐”
その名の通り、各種魔導を極めた魔導皇帝”グレゴワール”が半年かけて構成した複合呪文である。
”流星乃嵐”とあるように、100本の大流星が一つに束ねられており、
その大流星もさらに100本の中流星、中流星には100本の流星が束ねられている。
流星自体も各種呪文を合わせた複合呪文の束でありその数は100本。
本数にして1億本と言う途方もない数の複合呪文の集合体なのだ。
魔導皇帝グレゴワールをもってしても、呪文をすぐに完成させられるわけではない。
彼は呪文を前もって虚数次元に格納することで呪文を完成させたのだ。
虚数次元への門を完全に開くことでその呪文が発動する。
皇帝”グレゴワール”が召喚陣に魔力を注入する最中、
半年かけて準備した呪文を防ぐように銀の円盤が広がってゆく。
その円盤は王都を守る盾のようにも見えた。
「む?なんだあの銀の円盤は?
魔法師の反射結界か?
小賢しい、
王国の魔法師程度で我が呪文は反射できるものか!」
そう言って召喚陣に追加で魔力を注ぎ込む。
グレゴワールは魔力を追加することで召喚陣の強度を増したのだ。
実際、オロール王国と魔導帝国の魔法技術には雲泥の差がある。
呪文を反射するには同程度の技量が必要である。
魔導を極めた皇帝と同じ技量を持つ魔導士は王国には存在しなかった。
「見よ!
我が呪文がオロールをこの世から消し去るぞ!!
クハハハハハハハハハ!!
オロールの消滅をもってして我が帝国は世界征服に乗り出すのだっ!!」
オロールの消滅を想像し、皇帝グレゴワールが歓喜の声を上げる。
・・・
・・・・・
・・・・・・・
?????????
だが皇帝の歓喜の声に反して何も起こらなかった。
王都は何事もなかったかの様に静まり返っている。
一向に消え去らない王都を見た四天王が騒ぎ出す。
「何だ?何が起こっている?何も起こっていない?何故だ?」
「陛下の呪文が確かに落ちたはずだが?!」
「オロールの王都は無傷。これはいったい???」
だが次の瞬間、王都に巨大な魔力が生まれる。
「何!この魔力は!!朕と同じ魔力!!」
王都から究極流星乃嵐の光が魔導帝国軍に満遍なく降り注ぐ。
グレゴワールは咄嗟に防御呪文を唱え、防御結界を張る。
だがそんな結界も、数多く降り注ぐ光によって削られ効果を失う。
「馬鹿な!!世界のすべてを手に入れるべき朕がこのような所でっ!!」
この瞬間、魔導帝国皇帝グレゴワールおよび四天王のうち三名がこの世から消滅した。




