始まりの轟音
オロール王国の空に数多の炎や雷光が踊り、割れるような轟音が響く。
太陽を隠すかのように台地に砂ぼこりがもうもうと立ち込める
しばらくすると一陣の風が吹き砂ぼこりが吹き飛ばされた。
あったはずの台地がなくなり、
黒い山脈のように見えた魔物の軍勢が消滅。
代わりに魔物がいた地面が大きく丸く抉り取られ、
中心が赤く怪しく光るクレーターになっていた。
「はぇうぃ?」
思わず変な声を上げてしまった。
僕にとって想定外の事態。
今、目の前で起こった事に対して、頭がついていかないのだ。
轟音が轟く前、
確かに黒い旗、グレゴワール魔導帝国の旗が翻っていた。
グレゴワール魔導帝国はオロールの西に位置する巨大な魔導帝国である。
その旗の元には凶悪な魔物、
オークやオーガだけでなくジャイアントやトロルと言った巨大な魔物が隙間なく隊列を組む。
その凶悪な魔物連中はオロール王国の王都を隙間なく取り囲んでいた。
魔物たちがいる位置より一段高い位置には豪勢な天幕があり、
恐ろしげなキマイラと言う魔物が天幕の横に陣取り王都を睨む。
王都を囲む魔物による布陣は黒い山脈が存在しているかのようだった。
魔物の山脈が轟音と共に消滅したのだ。
後にはわずかな静寂と抉られた跡。
ただその時起こった事が後の世に
“始まりの轟音”
と呼ばれ、“冒険者の時代の始まり”と言われるようになるとは
僕は想像もしていなかった。




