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夜のヴァンパイア  作者: けろよん
第一章 闇の目覚め
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ひかりの夢

 ひかりは荒野に立っていた。背後には崩れた校舎がある。なぜこんなことになっているかというと帝国の軍隊が攻めてきたからだった。

 ニュースでもその映像が映し出され、町のみんなに危機を訴えていた。

 地上からは戦車が、空中からは飛空艇の軍団が迫ってくる。


「お前達に降伏の道など無い。みな殺しにしろ! ヒャッハー!」


 敵の残虐なことで知られる将軍はそうみな殺しを宣言して一斉砲撃の命令を下すが、何も恐れることは無い。

 この町にはひかりがいるのだから。聖乙女の加護を受け継いだひかりが無双出来るから。

 飛んでくる無数の砲弾をただ剣を一閃しただけで全て撃ち落とし、ひかりは一気に敵の旗艦へと飛び乗った。

 将軍もさすがに驚いた様子だった。いかにも残虐そうな顔をあわあわとさせている。


「待てよ。話し合おうぜ。なあ? ……と油断させて!」


 びびって腰が引けながらも襲ってくる将軍をひかりはただ手刀を振っただけで打ち払う。


「わたしに油断など無い!」


 その凛とした顔に将軍は震えて床を這いながらも訊ねてくる。


「馬鹿な! 俺のレベルは78だぞ! 帝国でも四天王と呼ばれているほどの強さなのに……なぜこんな小娘に勝てない!?」

「その腐った瞳でわたしのステータスを見てみたらどうだ?」

「くっ! ステータスオープン!」


 将軍は屈辱に顔を歪めながらも言われた通りにする。その顔がすぐに驚愕へと変わった。


「レベル999! 何だこの数字!? パラメータは……全部∞! 何なんだこの記号はあああ!?」

「それがこれからお前に引導を渡す者の数字だあああ!」

「ひええ、許し」

「お前に掛ける慈悲など無い!」


 ひかりは将軍の無様な顔を殴ってぶっ飛ばし、さらに


「撃て撃てえ!」

「奴は化け物かあ!」

「フッ、わたしは夜森ひかりだああ!」


 向かってくる軍隊をただ一方的に殲滅していった。

 そんな幸せな夢を見ていて目が覚めた。




 気持ちの良い朝日が窓から差し込み、ベッドで寝ていたひかりを照らし出した。

 ひかりは目覚めてまず枕元に置いておいた眼鏡を掛けた。

 ヴァンパイアになっていた時は掛けなくても遠くがよく見えていたが、やはり人間の時は掛けないと周囲がよく見えない。不便だと思う。


「ヴァンパイアの力が使えれば……」


 ひかりは能力を発動させようと体に力を籠めるが、ただ万歳して背伸びをしただけの恰好になってしまった。

 もしかしてあれも夢だったのだろうか。思っているとクロの声がした。


「何をやっているんですか? ひかり様」

「え!?」


 驚いて見ると、床の上に座って自分を見つめる飼い猫の姿があった。ひかりは気恥ずかしさを隠しながら訊ねた。


「ヴァンパイアの力が使えればなと思って」

「あれは夜だけですよ」

「夜だけ?」

「ヴァンパイアですから」


 何とも完璧では無さそうな力だった。ひかりが気を抜いているとクロが言葉を続けてきてびっくりした。


「でも、昼にも覚醒する方法がありますよ」

「どうやんの!?」


 ひかりは足元の猫に食らいつくように顔を近づけて訊ねた。

 クロは驚きもせずにマイペースに答える。


「ヴァンパイアらしく血を吸えばいいのです。そうすればヴァンパイアの細胞が血によって刺激されて能力を発動させることが可能です」

「血を吸えばって……」


 ひかりは立ち上がって想像してみた。

 人に近づいていって噛みつく自分。


「ねえ、血を吸わせてよ。カプッ」


 当然抱き着かれて噛みつかれたその人はびっくり。周りの人達もびっくり。


「うわあ、君何をするんだ」

「夜森さんってそんな人だったんだ」

「最近の若い子は大胆ねえ」


 噂は次々と広まって……

 とんでもない光景だった。

 両手を振ってその妄想を振り払った。


「無理無理。そんなの出来るわけ無いって」

「先代はよく女の人を誘ってやってましたよ」

「何をやってたんだ、お爺ちゃん……」


 ともあれ無理な物は無理だ。

 能力の発動はあきらめて、普通の冴えない凡人として学校に向かおう。

 現実はままならないが、さぼるわけにはいかない。まあ、登校さえすれば後は座っているだけで一日を終えることが出来る。

 仕方なく朝の準備を整えて、いつも通りに靴を履いて玄関を出て行った。

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