こくずくな
作品名、サブタイトルともに聞きなれない名前ですがちゃんと意味ありますぞ(^^)
素人なので続編は不定期更新ですが、なにとぞ完結までお見守りいただけたら幸いです。
「あんたのことだから、きっとうまくやっているでしょ」
半年ぶりの母親からのLINEだった。長らく愛用してきたiphone5sの通知画面に浮かんだ文章を見て小さくため息をつく。
適当なスタンプを見繕って返信し、携帯をベッドに投げた。とても愛用してますという態度とは思えない。
窓の外へ視線をシフトする。外では木々が太陽の光で嬉しそうにはしゃいでいた。
「わかっているよ・・・」
ベッドにごろんと寝転がる。耳元で軋む不吉な音がささやいた。たいして気に留めなかった。
≪ピンポーン≫
部屋に設置されたチャイムと同時に光が鳴る。チャイム音を視覚的に知らせる仕組みだ。ドアを開けると、見慣れた顔がいた。
「うへへ。邪魔するぜ」
前もって言おう。いまズカズカと人の部屋に上がり込んできた野郎は、決して借金取りとかの類ではない。僕の友人のひとりである。このような無礼な友人を持った僕はきっと来世は幸せな人生を約束されているのだろう。その代償と思えば安い安い。
「なんの用だ、石川」
石川と呼ばれた男は、こちらの声に応えずにベッドに勢いよく伏せた。金属の悲鳴がより大きく響いた。
「なんだよう、このベッド。いい加減買い替えろよ」
「・・・そのベッドは、入学祝いで買ってもらったものだ。簡単に捨てられるわけがない」
「相変わらず物持ちがいいやつだな、ハハッ」
ふうとため息をつき、僕は椅子に腰を落とした。21インチのテレビをつける。一人暮らしではこの大きさで十分だ。テレビでは、警察官わいせつ事件やら、4年前の学生自殺事件やら、民衆にとっては耳が痛い事件を報道していた。後ろで石川がつぶやく。
「世も末だねえ」
「夏休みボケもそろそろ覚ませよ。あと3週間で二学期が始まるぞ」
「へーへー。どこかの天才さんは勉強しなくても余裕でしょ。こんな凡人とは違ってね」
「嘆く暇があるなら、机に向かえ。あと天才じゃない。」
「またまたご謙遜を。でも溜まっていないのか。あ、そうか。毎日やってるもんなあ」
石川のみぞおちに蹴りをいれてやろうかと思ったがやめておいた。
石川はそのまましゃべり続けていたがもはや俺の耳には届いていない。
「・・・天才じゃねえよ」
「ん?いまなんて?」
なぜこいつは自らのトークの中に挟まれた小声を感知できるのだろう。
このまま石川の相手をしている暇はないので、適当な理由をつけて彼を部屋から追い出した。
テレビを消し、ふたたび部屋が静かになる。
「天才、か」
椅子に深く腰掛けた。その拍子で携帯が落ち、手に取った瞬間、LINE通知が浮かぶ。石川からだった。
「そういや今日はソープ嬢でも来るのか?あとで感想聞かせてくれよな!」