魔王の娘はテレビゲームがお好き
とある安アパートの一室で横スクロールのテレビゲームに興じる少女,レースゲームでカーブを曲がる際一緒に体が思わず傾く,そんな感じで,彼女はテレビゲームの中のキャラクターの挙動に随時反応してる,昨日TAS並みの操作を見せた同一人物とは思えん,やっぱ得意不得意ってのがあるのかちょっと可愛い
はじめて触れる物に慣れないせいか動きがぎこちなく,同じところで何度も失敗している
「んー!」
思わず力が入りすぎ十字キーと×ボタンがめり込みコントローラーが握りつぶされる
「あぁまた!んもう!脆すぎ!早く次のコントローラー出して!」
「わかった!わかったから今度こそ壊すなよ!・・・今月のバイト代が・・・」
「え~?テレビゲームに勝ったら好きなのやらせてくれるって言ったのあんたじゃん~それに壊さないなんて約束してないし」
魔王の娘がゲームとは魔王倒すために悪戦苦闘するってはたから見たら結構シュールかも全然たどり着けてないけど
しぶしぶ新しいコントローラーを繋ぎなおす,コントローラー壊すのいい加減にしてもう4個目・・・
彼女はとある世界,盲目の魔王と言われる力のある魔族の娘,ママって呼んでたから女性なんだろうな
母親の命令には絶対で,命令されればどんな命令でも何も考えず笑顔で実行する,それがどんなに極悪非道なことであっても母親が正しいと信じ、母親が喜ぶことがすべてであり楽の感情しかほぼ表さなかった
そんな子が初めて母親に自由を許され,自分の意思で行動する許しを得た,そして昨日俺にゲームで負けたせいで大泣きして感情の封が破れてしまったらしい,まあこの体形でまだ4歳だという成長早すぎ信じられん・・・
久々に体感した感情のせいで力が旨くコントロールできくなってしまったとか,それはおいおい治していこう・・
ゲームを進めるにあたって何かアドバイスしようものならこちらをキっと睨みつけ煩い!自分でやる!と癇癪起こす,まぁ人間に手助けされるってのは魔族のプライドが許さないんだろうがこれでも約束事があるおかげで前回よりかなり進歩してる,
目を閉じて深呼吸し,これはゲームこれはゲームとぶつぶつつぶやいている一種のおまじないだ
「んー!,ね~!これ最後どうなるの!?」結局彼女はクリアを断念したようだった,まぁ2面にも到達できないようじゃ無理だわな
彼女がこちらの世界に居るには門限がある,まだ帰るには余裕があるのだがどうやら彼女は若干飽き始めたようだった。
有名で古いゲームだけど初心者で最初から最後までクリアするには時間もかかるし結構難しいからなこれ
ゲームを選ぶ際,どんな内容なのかを聞かれ適当にさらわれたお姫様を助けに行くゲームと答えたらなんか興味を引いたみたいでやってみたがいいが、お姫様出てこないじゃないとぶー垂れつつしぶしぶやっているようだった。まぁ白馬の王子様が配管工じゃあなぁ・・・
選んだゲームは始めたら門限までやること,ただ面白くないゲームを無理にやっても面白くない,それは分かっているので
面白くなかったり,飽き始めたら交代というルールを付けた,初めてやるゲームなら無理にやり続けるよりも
傍で見ていた方が面白いときもあるし、上達も早いときがある,やりたくなったらまたいつでも交代する。
同じことを繰り返すことに彼女は慣れていない。向こうで彼女は魔王の娘ということでまぁその膨大な魔力で何でも出来た,出来ないことがなかった従わない物など居なかった
初めて自分の思い通りにならない物にぶつかり感情が解放されて間もないせいかに本人も戸惑っているようだった。
「なんだエンディング見たかったのか?なんかムキになってやってると思ったら」
「ん・・ムキになってなんかないもん」とそっぽを向きつつこっちにコントローラーを投げ膨れている,初めて会ったときは無機質に笑う悪魔のような存在に見えていたが、子供っぽくちゃんと泣いたり怒ったりできるんだなとほっとする
「んじゃ俺やってやるから後ろで見てろよ」これ以上コントローラーを壊されちゃかなわん・・・
まぁ彼女の門限ぎりぎりには間に合うか
「ここをこう通ると裏技でワープできるんだ」
「あーずるい!また何にも教えてくれなかった!」1から10まで教えたらたら面白くない,だか初心者でも楽しめるよう適度なアドバイスをしているつもりだが魔族のプライドよりも自分でクリアしたいという欲求が高まっているのだろうか
「教えたら教えたでお前すぐ怒るだろその性格直せ,それに何でもかんでも最初から知ってたら面白くねーだろ,クリアしてやるんだから文句いうな」
「ん”ー!いじわる!」思い当たる節があるのか納得しつつも納得できない様子でますます膨れる,こうみるとただの子供なんだけどなぁ・・
そしてエンディング,さらわれた姫を救い出し,幸せにくらいしましたそんなありきたりなエンディングを彼女はを食い入るように見つめている,それは初めて見る彼女の喜の感情だったのかもしれない。
「まぁ見てるのも面白いかもしれないけど,自分でやった方が面白いぞ,いつかは自分でクリアしろよな」
「ふ~ん,ねぇ何でさらわれた姫を助けに行くの?」
「何でって・・そりゃ親元から姫がさらわれた助けに行くもんなんじゃねーの?」
「ふ~ん王さまの娘が姫なの?」
「ま、まぁたぶんそうだろ」
「じゃぁここにいたら私にも誰か助けに来てくれるかな?」キラキラとまるで少女の様なまなざしで俺の答えに胸を膨らませている
「ばーか、こりゃゲームの話だ,それにお前は自分から来たし自由に帰れるだろ,そもそも最強の姫さんをわざわざ助けに行くやついるかよ,大体姫ってのはか弱くて・・」あ・・ちよっといいすぎたヤバい癇癪起こすと止められん
「ふーんそっか」母親にいつも振りまいていた楽の表情で彼女はつぶやく
癇癪起こして死なない程度に痛めつけられるかと思ったけどギリセーフだったのか・・?一応俺を死なさないことと親である魔王に約束してもらってはいるが・・・
「あと何で姫をさらうの?」
「何でって・・ゲームの中の話だからなぁ、てか実際,魔王は姫さらわないもんなの?」
「うん,さらうのは見たことない」
「でも魔族と人間の争いみたいなのあるんだろ?」
「うん、あるよこっちは手を出すつもりはないけど向こうが手を出してくるからさ,愚かだよね,絶対負けるのに、最初は面白かったんだけど、だんだん飽きてちゃって、何度も何度も軍隊送ってきて,最近面倒になってきちゃった」
ずっと勝ち続けると飽きも早いしなぁ,最初は熱中してたオンラインゲームにだんだん飽きて最後は情勢でログインしてる感じだな・・・最低限維持の。知りたいことがあれば直接娘に聞けといわれてたけど,だめだゲームの参考には全然使えん・・・
ゲームならすっぱりやめちまうって手もあるけど仮にも魔王の娘だしなぁ,けど向こうの世界がムリゲー突き付けられてて少し不憫に思ってしまった。俺が少し考えを改めさせれば少しは犠牲が減るかな・・・
「あ,飽きてきたなら止めちゃえば?それか何か別の刺激を探すとか,こっちに色んなゲームあるし,殺戮とかじゃなく,別の面白いこと見つかるかもよ?」
「別の刺激?う~ん?あっうんそっか!試してみよっと,あそろそろ門限だから帰るねありがとー」
「ちょ,ちょっと待てお前何するつもりだ!?」返事もせずゲートの向こうへ駆けていく
一体何を思いついたんだアイツ・・・別の刺激を思いついたのか・・けど嫌な予感がする・・
次の日
「あ、ねぇ聞いて聞いて~!」
あぁ何やらかしたんだこいつあぁ聞きたくねぇ,聞きたくねぇよぉ・・・
「教わった通り姫さらうの実際やってみたけど結構面白かった!見つからないように動くの面白くってさ~,ママにワープ系は禁止って言われたけど,成功した時の何ていうの・あれ?そう達成感!自分でやった方が面白いってこういうことだったんだね!ありがとう!」
別の刺激ってそっちかよ!違う俺はそういう意味で楽しいとは言ってない・・
「でね!あたし無しでも簡単に軍隊追っ払えるようになったの!」しかも用途100%あってるし・・・
あぁ哀れな犠牲者たちよどうか愚かな私をお許しください・・・罪悪感で胸が潰れそうです・・・
「おっぱらったって・・姫楯にして皆殺しか?」
「ううん面倒だったし2度と来ないようにっておっぱらっただけだよ次くれば命はないぞー!って」
あれ?意外に慈悲深かったりするのかな?
「でねー!単独で来た勇者にもやったらすっごいの!抵抗すれば命はないぞ~!ってやったらほんとに無抵抗ですごい楽しかった!」
「え!?お前殺さなかったって!」
「うん軍隊の方は誰も殺してないよ~,雑魚をたくさん殺すより経験溜めた勇者殺す方がよっぽど楽しいしんだけど、ちょっと育ち過ぎちゃってうざかったから丁度良かったんだー♪ママから約束はちゃんと守りなさいって言われてるから、お姫様はちゃんと返したしえらいでしょ!」
「それに一杯勉強して偉いわねってほめられちゃった,もっとあっちで色々勉強してきなさいって♪、さ、早く今日はどんなゲームやるの?最初は見てるだけでいいから,また今度勝負して勝ったら自由にゲーム選ばせてね♪」そういってとても嬉しそうにはにかむ
あーそーえらいねやさしいね~・・・あのババア,娘に自分で考えるようになってもらいたいって
最初っからこれが狙いかよ・・ネタのためとは言え俺はなんてことを・・・
逆らう気力も無く,何とか向こうの被害を最小限にとどめる方法はない物かと思案しつつゲームを選ぶ
拝啓向こうの勇者様どうやら難易度ベリーハードにしてしまったらしいです・・・