大蔵大臣は司会をした。
「え~、それでは~え~、一番の方からですねえ、名前と職業とレベルと特技をですねえ、見せてもらってもらいます~」
司会(大蔵大臣)の一言を合図に審査が開始する。
「エントリーナンバーいちばんのジョンです!! 」
「うむ……ジョン、くん。えーとレベルはいくつかな?」
「はっさいです! かーちゃんはメリーです!」
「うむ……それで、職業は……いやありがとう。受付でお菓子もらうんだよ」
審査は始終和やかであった。
「職業だべかー。おらの仕事は羊飼いだ―べ。なんでも参加すっとうまい菓子をくれるっつーから母ちゃんにひとつ持っててやろうと思ってなあ」
「はい! 特技はトリプルアクセルです! 一昨年の全世界フィギュアでは十二位でした!」
「一応ヘビー級っす! 先日は見事城下を根城にしているボス、通称三毛のパンサーとやりあって善戦したっす! いやーパンサーの野郎、あいつは強敵ですねえ」
「むむむむむむむむむむむむむ」
王さまは額に縦ジワを刻んでいた。
大蔵大臣は汗をひたすら拭いて、文部大臣は「金メダルイケるっ!」とガッツポーズだ。
「お父さま、失敗は誰にでもあるものです。今日の失敗をかてに明日から頑張って行きていきましょう。とりあえず、わが国のような弱小貧乏国家には強い戦士が居るわけがないのです」
「ぐぬぬ」
「あっブルーナ、わたくしにも参加賞のハニースコーンいただけるかしら?」
「はい、姫さま」
ブルーナがハーブティーを用意し、シェーラがハニースコーンを頬張った。
その時。
部屋の中心で唸っていた王が立ち上がった。
「決めた」
大臣も、メイドも、兵士も、カラスも、全員が王を見た。
「シェーラ、お前が旅立て!」
シェーラが吹き出さなかったのは淑女教育のたまものである。
ブルーナはカップを景気良く床に落としたし、鉄面皮のメイド長はドアに足を挟み、外務大臣は思わず辞書をひいた。
「お前は今日から聖女だ!!!!!!」




