メイドは頑張った。
~ラブラシア王国魔王討伐組合主催 ベスト勇者さま選考会~
ラブラシア王国は晴天に恵まれていた。
さんさんに輝く太陽が志望者を照らし、爽やかな春風が「エントリー受付」の旗をはためかせた。
そしてその周りには祭りの匂いを嗅ぎつけた農民たちが集まっている。さらにその外周にはおしくらまんじゅうで羊たちが囲んでいる。
平和とはこういうことを言うのであろう。
「王さまがまたきっかいな事を始めたみてーだべ」
「んだなあ。しっかし、ベスト勇者さまっつーのは羊毛小町みたいなもんべか」
何度でもいう、素晴らしい天気である。
「んっ……むにゃむにゃ………………」
「シェーラ王女! 起きてくださいませ!! そろそろ支度しないとヤバイでございます!」
だがシェーラは目を覚ます気配がない。
窓辺に腰を掛けて、ショールを軽く羽織っただけの姿は神々しく見えるが、残念ながらただの昼寝である。
ブルーナはとても困った。
王女が昼寝をしている。
起きない。
起こす手段がない。
式典に遅れる。
王さまにブルーナが怒られる。
減俸される。
ツケで買った毛皮のコートの代金支払いが辛い。
そんな未来が頭をよぎった。
ブルーナはおもむろに新聞を取り出した。それを丸めて口元に当て、
「「おーーーーきーーーーてーーーーーくーーーだーーさーーいーーまーーーーーーーーせ」」
「ひゃぁっ! な、なんですのぉ?」
「「おはようございます、姫さま。今から選考会がはじまりますゆえお支度お願い致します」」
「分かった、わかりましたわ、ブルーナ。でもちょっと、ちょっと離れてくださって」
「かしこまりました」