第1章 自分の運命
「お嬢様、あちらがヒロインですか?」
「そうよ!黒髪に青眼、まさしくヒロインだわ。」
アリアとクレアは入学式の最中だと言うのに余所見をしていた。視線の先には肩で切りそろえられた美しい黒髪、透き通る青眼が特徴の少女の姿が。
「いたって平凡なようですが…」
「あ、あっちが学園の王子よ。」
クレアが指差した先には王国第2位公爵ハプサ家嫡男ラザーがいた。藍色の髪に切れ長の珍しい水晶色の瞳。世の女性が憧れる王子様といった外見をしている美少年だ。ラザーは首席だったようで代表挨拶をしている。
「ラザー様でしたか。最近…」
「どうかなさったの?」
「いえ、その…ラザー様は昔から自分にも他人にも厳しいと有名な方なのです。特に貴族の女性を嫌っていました。」
「何故かしら?」
ラザーレベルになると女性の方から求婚するくらいなのだ。女性を嫌うなど想像もつかない。
「ラザー様曰く「貴族の女性は男に頼りすぎている。なんの努力もしないで親の権力を我がものと思っているのが気に食わない」だそうですわ。」
「なるほどね。私も一理あるわ。でも、先程歯切れが悪かったようですが?」
「実は、以前はどの方にもクールに接されていたそうですが、最近では丸くなった、優しくなったと言った声が相次いでいるそうですわ。」
「つまりいきなり性格が変わったと?」
アリアの話を聞く限りラザーは相当人を嫌っていたのだろう。それがいきなり優しく?裏がある気がする。クレアはそう考えて1つの結論に至った。
(ラザー様も、転生者?)
もちろん、クレアもあの話だけで決めたのではない。今の彼の姿を見てみて、ムリをしてはいない。むしろ優しくするのが当然という風だ。それに、彼の家の家格はこの国でもトップクラス。誰かに気を使う必要などない。ましてや、跡取りなのだから逆に気を使われる側。つまり、無意識のうちに優しく接しているということになる。そこから考えられるのは、それが当たり前だと感じられる境遇にいることだ。いや、正確にはいたことだ。そこから導き出される答えこそが『転生者』だ。
「入学式の後、寮でこっそり聞きましょう。」
「かしこまりました。」
アリアは分かっていた。クレアがこんな大事なことを直接聞くはずがない。つまりは、誘導尋問という手を使うということを。
(この3年間はお嬢様に振り回されるでしょうね。)
アリアはこっそり肩を竦めた。
いきなりの急展開です。
それと、こんなキャラを出しては?などの案があったりしたらコメントください。
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では、次回またお会いいたしましょう。
ありがとうございました。