ep.2 ある少女の望み②
また今朝も、夢を見た。
夢の中で一人の少女は哀しげな顔で、父親に会いたいと、望んでいた。もうこの世にはいない父親に、会いたいと切に望んでいた。
狭い六畳一間の畳に敷かれた布団から体を起こすと、やけに気だるい。
「あぁ、また予知夢ですか」
予知夢を見た後の寝起きは、いつも決まって気だるくなるのだ。
私はいつからか、“夢見”と呼ばれる不思議な力を使えるようになっていた。
“夢見”は、相手に望む夢を見させることが出来る力のことを呼ぶ。そして不思議なことにその力を必要とする人の想いは、事前に私の夢となって現れるのだ。
この現象を、私は“予知夢”と呼んでいる。
どうやら今回は父親を亡くした少女の望みを、叶えることになるらしい。
「夢の時刻は夕方、まだ時間はありそうですね」
んーっと大きく一つ伸びをして、布団という名の天国から、のそのそと抜け出す。
昨夜閉め忘れたカーテンからは、とうに昇りきった太陽の光が差し込んでいた。
恐らく時刻はもう、昼近いのだろう。
そんなことを思ううちに、グゥーッと大きくお腹がなった。
「……お腹、空きましたね。何か冷蔵庫に食べ物、あったでしょうか?」
何かを作る気も、買いに行く気も起きない。
結局かなり遅めの朝食は、食パン一枚を食して終わったのだった。
なんとかお腹の虫も鳴り止んで、ふぅーーっと長めの息を付く。
そして畳の上に無造作に置かれたトレンチコートと、ややくたびれた帽子を持って、
「さて、そろそろ出掛けるとしましょうか」
私は小さな自室を後にした。