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1話

「お買い上げ、ありがとございました」


 店でまったくといって売れなかった本が売れるのを見て黒髪黒目のヒューマンの少年は驚きながらも、会計をすませると、店の壁側にある椅子に座って読書をしているエルフの老人に話しかける。


「ゼンさん、午前の時間帯も終わったから、仕事上がるよ」

「おお、そうか。お疲れ様。ところで、タスクよ。やはり考え直してはみんか」


 ヒューマンの少年-タスクを無駄と思いながら、声をかけて引き留める。

 タスクが六歳の時、母を亡くしてから十年間、様々な成り行きから居候兼従業員としてタスクを引き取る。タスクにとっては頭の上がらないかけがえのない恩人である。


「ゼンさんには感謝しているよ。それでも、店のいろいろな本を読んでみて、世界には色んな物があるって知ったんだ。だからこそ、自分自身の目でその色んな物を見てみたい、知りたいと思った。ゼンさん、俺は町を出る。明日、冒険者ギルドに行って登録をしてくる」


 実の子供がいないゼンは以前より、タスクに自身の店を継いで貰いたいと思っていた。

 タスクとしても恩人であるゼンの頼みは可能な限り叶えたいと思っている。だが、胸に秘めたこの想い()だけは曲げれなかった。


「しかしな、タスクよ。お主、どの女神からも加護を授かっておらん、魔法も何ひとつ使えない。そんなので、町を出たら、魔物に殺されてしまうかもしれんのじゃぞ。それに冒険ということは冒険者ギルドに登録するという事じゃろ。加護もないお主じゃ登録してもらえんじゃろ」


 そう、タスクには加護がないのである。どの種族に産まれようが、必ず一つは加護を授かるはずなのに対して、タスクは産まれてから、十六年間もの間、加護を一切授かったことが無いのだ。そのような自殺志願者を冒険者ギルドが登録をしてくれる筈がない。


「大丈夫だよ。逃げ足に関して自信があるんだ。魔物だろうが、盗賊だろうが逃げ切ってみせる。ギルドに関しても、できれば冒険者ギルドに登録して冒険者として旅に出たいと思うけど、最悪は商人ギルドに登録して行商人として旅をしてもいいと思っているんだ。とにかく、この話は終了。午後から、いつもの遺跡に行って来る」


 タスクはゼンにそう告げると、猛スピードで外に飛び出していった。


「まったく、両親のどっちに似たんじゃろうな、タスクは」


 ゼンは、一度決めたら滅多なことでは考えを変えないタスクに苦笑するしかなかった。




 店を出たタスクは近くにある馴染みの屋台で焼肉串を数本買うと、町の東にある森の中にある遺跡を目指して歩いていた。


「しかし、ゼンさんも酷いな。人が気にしていることを言うなんて。そりゃあ、加護は無いけど、毎日女神様達にお祈りして、加護をくださるようにお願いしてるし。魔法だって、魔法は一切使えないけど、魔法に関する知識は他の人より多く知ってる。何より魔力量は人の数倍だってあるんだ。いつか、加護を授かれるはずだし、何かのきっかけで魔法の適正が表れて、優れた魔法使いに成れるはずなんだけどな」

「そんな風に愚痴を言ってるようだから、女神様から加護は貰えないんだし、魔法だって使えないのよ」


 聞き覚えのある声が背後からするので、タスクが振り返ってみると、そこにはいつもの幼馴染の少女がいた。

 明るい茶色のショートカットに、タスクと比べると一回り小さな体格の幼馴染が半眼でこちらを睨みつけてくる。


「なんだニーナか、ここは落ち込んでいる幼馴染を励ますとこじゃないかな」

「ハッ。事実を言ったまでよ。ところで、こんな所にいて、また【忘れ去られた遺跡】に行くつもり。あんな何も無い所、よく飽きないわね」


 呆れた様子を浮かべるニーナ。


「一応、この町に居るのも後僅かだからな。最後にもう一度行ってこようと思ったんだ」


 告げた瞬間、タスクは本能的にヤバイと感じた。


「…何それ。聞いてないんだけど」


 低く、重たい声で、怒気を纏うニーナ。


「あー、今伝えたって事で」


 更に、ニーナが纏う怒気の圧が上がる。


「あんたみたいな加護も魔法ない奴が町を出たら、すぐに死んじゃうわよ」


 ゼンにも言われた事を、幼馴染にも言われ、タスクのライフ()はゼロになりそうだった。


「言うつもりだったんだ明日、いや今日にでも。それに、ニーナ知っているだろ。冒険は俺の夢だって。だから危なくても出てみたいだ、冒険に」

「………」


 タスクの言葉に沈黙するニーナに、今のうちに逃げるか悩んだ瞬間、一気に膨れ上がる。


「だから、そんな大事な事を、何で前もって相談してくれなかったのよ!このバカ!!」


 ニーナの全身全霊のパンチがタスクの鳩尾に思いっきり振り抜く。回避が間に合わなかったタスクはもろに喰らい膝から崩れる。

 ニーナは怒りが保ちつつ、忘れ去られた遺跡の真逆の方向に去っていく。


「と…、とり…あえず、遺跡から帰ったら…、ニーナの所に行かないとな」


 腹部を抑え、タスクは少しずつ息を整える。

 小さな頃から、加護を授からなくても一緒にいてくれた大事な幼馴染み。喧嘩別れで、町を離れるのは本意ではない。何とかしないとな思いつつ、タスクは『忘れ去られた遺跡』に向かって歩き始めた。

文字数が少ないなと、書きながら思わされています。日本語がおかしいと思うところが、あると思いますが、見逃してくれると、有り難いです。


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