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外伝 ブルセラ子4~2


 わっちに与えられた使命は、ネルルちゃんのお目当てのお花を取って帰ることだけなのじゃセラからそのためには犠牲は付き物で、いくら紗羽わっちが白い目で見てきてもわっちは任務遂行のために鬼となるのじゃセラ。




「ブルセラ子さん! 新たな敵影ですわ!!」


 紗羽がいつの間にか、わっちを継承付けで呼ぶのじゃセラ。わっちに取り入れば生存確率が跳ね上がると気づいた悪い顔をしているのじゃセラ。


「敵種別、規模、簡潔に述べるのじゃセラ!!」


「わっかんないです、わっかんないです。魔物化した植物かと。数はおそらく一体」


「一体だけのじゃセラね!」


 運がいいのじゃセラ。


「大きいです!」


 大きくても一体であれば。マッドゴーレムを主体としたチームで食い止められるのじゃセラ。


「速いです!!」


 さっさと命令を下さなければだめなのじゃセラね。


「アルマジロさんチーム、切離パージ!! 敵の足止めしている間に!!

 キツツキさんチームは最前で、哨戒しながらなるたけ早く進むのじゃセラ!!

 亀さんチーム(本隊)は、それに続きますのじゃセラ!!

 残りのチームは周囲に警戒しつつ、本隊を囲んで援護のじゃセラ!!」


 前に遭遇したのは犬っころだけだったのは運が良かったからのじゃセラね。

 これで打ち止め……であったら嬉しいのじゃセラけど、まだまだ魔物に出会う可能性は否定できないのじゃセラから、【兵は神速をたっとぶ】のがセオリティカルなのじゃセラ。


「目標までの距離はもう半分なのじゃセラ!」


 わっちはすっかり司令官気分なのじゃセラ。任務を果たした後のことなど考えたくもないのじゃセラが――あの鬼畜のことだから良くて牧場送り、悪くて合成素材が関の山――、なんだか映画とかアニメの主役やってるみたいで我ながら気持ちいいのじゃセラ。


「後方部隊より伝達! アルマジロさんチーム、飲みこまれました!!」


 紗羽とは違う後ろの部隊に配置したフェアリーが飛んでくる。


「な、もう!? のじゃセラか!? 飲みこまれるってなんなのじゃセラ!!」


「正確には踏み潰されたというか……」


 後ろを振り返ると……、巨大な植物がその姿を現していたのじゃセラ。


 その高さは二階建ての家ぐらいあるのじゃセラ。

 足元は棘だらけの太いつるで、触手のように蠢いているのじゃセラ。

 あれで、器用に移動しているのじゃセラね。


 丸太なんて目じゃないほどの太い茎の先には、大きな赤い花が咲いていてその花弁はギザギザで魔物っぽく、花がつぼみになったりして、その中から種マシンガンをぶっぱなし「危ないのじゃセラ!! 後方部隊何やってるのじゃセラ!!」


 呑気に眺めていると、種マシンガンが至近距離に着弾したのじゃセラ。


「お、お強い……ですわね」

「ほんとに」


 紗羽ともう一人のフェアリーが顔を青ざめさせているのじゃセラ。


 足止めをかって出てくれたはずのアルマジロさんチーム――その高い守備力からその名をつけたつもり――は、植物系魔物に踏み潰されて一瞬で潰滅したようである。


「コウモリさん部隊!! 結果はしょぼくてもいいのじゃセラ!!

 奴の足に噛みついて吸血するのじゃセラ!!」


「ま、まじラミか!?」

「死ねと言っているのと同義ラミね」


 そんな悲鳴やつぶやきが聞こえてくるのじゃセラ。


「あれに血があるラミか?」

「命令であればしかたないラミね」


「ゾウさんチームは、コウモリさんチームの支援に回るのじゃセラ!!

 アルマジロさんチームの二の撤を踏まないように、距離を取りつつ、嫌がらせのようにつかず離れずで、時間を稼ぐのじゃセラ!!

 キツツキさんチームはじめ、その他は部隊は最大戦速!! 振り切るのじゃセラ!!」


 ゾウさん、コウモリさんチームの活躍? で一旦は魔物化植物の進行が鈍る。

 その隙に距離を稼ぐのじゃセラが……。


 たった2隊ではすぐに潰滅してしまう。それでもその後も同じ作戦で、時には4チームほどを投入して足止めを謀った結果、なんとか振り切ることが出来たのじゃセラ。


 尊い犠牲なのじゃセラ。後で線香の一本でも捧げて供養させてもらうのじゃセラ。


「もう間もなく目的地なのじゃセラ!!」


「行きに失った僚友達、ブルセラ子様、我が隊の損傷率は7割にも届こうかとしていますわ。帰りにも同じだけの魔物が来たら……」


 そうなのじゃセラ。野犬相手だと思ってたかをくくってたのじゃセラ。

 あの血塗られた紅花(ブラッディフラワー)の出現が誤算だったのじゃセラ。

 帰りには出会わないことを祈るしかないのじゃセラ。




「見えたのじゃセラ!!」


 それからも、急いで進み、ようやく目的の花畑に到着したのじゃセラ。

 オレンジ色の可愛らしい花。あんな凶暴で恐ろしい魔物が居る地域には相応しくないほどの、可憐な花々。


「とりあえず、あの小さいオレンジ色の花を摘むのじゃセラ。

 そうのじゃセラね。亀さんチームの全員と、バックアップで、襟巻蜥蜴さんチームの2チームぐらいでいいのじゃセラ」


「えっと、わたくしは……」


「紗羽たちフェアリーはいいのじゃセラ。フェアリーたちは周囲の警戒をしてくれなのじゃセラ」


「了解しましたわ。行きますわよ、蜜子、羽美」


 いつの間にか紗羽もフェアリーの中でリーダー格となっているようで、他のフェアリーに指示を出してから、ふよふよと飛びながら周囲の様子を探りに行ったのじゃセラ。


「後は帰るだけのじゃセラね。

 来た道を戻ると、血塗られた紅花(ブラッディフラワー)や野犬にまた遭遇するかもしれないのじゃセラから、少し遠回りになるのじゃセラが、迂回して帰還するのじゃセラ。

 キツツキさんチーム、先行するのじゃセラ!!」




 そして、わっちらは、帰りの道程の半分。

 運よく魔物に出会わずに進むことができたのじゃセラ。


「あと半分なのじゃセラ。このまま平和裏に帰還できたら最高なのじゃセラが、【勝って兜の緒を締めよ】の精神で、気を抜かずに」


 士気を高めるべく、全員に届く声で叫ぶわっちの演説が。

 どしんどしんという地響きにかき消される。


「紗羽!! 何が居るのじゃセラ!?」


「あ、あれはドラゴン……」


「竜!? 竜種なのじゃセラか!? そんな希少種で、破壊の権化とも言われている魔物がどうしてこんな辺鄙なところに……」


 一転して大ピンチなのじゃセラ。

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