酒池肉林
グロ注意です。苦手な方はお引きかえしくだされ。
地獄の蓋が開きました
圧倒的不快感。
俺がオークたちの屯する空間に足を踏み入れてその目に飛び込んできた光景を見て抱いた想い。
圧倒的なる不快感。
ゲームでその画像を見たはずだと、状況は理解していたはずだと、心構えはしていたはずだと自分に言い聞かせるも。
やはりアニメ絵の2Dグラフィックと現実では異なる。
そこでは……。
多数の人間が……。
その人間の全てがじじいで……。
それも、ロマンスグレーとかが似合うようないけてる老紳士ではなく。
そこいらに転がるなんの役にも立っていないような圧倒的量産型じじいで。
じじいはもれなく全裸で。醜いじじいの全裸で。
それと同じ数だけのオークが居て。
オークは醜い太った体で、幼女のような顔で。
それらが愛欲まみれになって絡み合っているのである。
そこかしこで。
1対1であったり。2対1であったり1対2であったり。2対2だったり、5~6人の集団だったりもう数えるのが面倒なくらいの集団だったりで。
そしてこれがピンクスライムをかき集めている理由なのだろう。
それぞれ薄いピンクの液体を体に塗りたくったり垂らしたりと。
じじいとオークがピンクピンクなのである。
ピンクゼリーの効果(媚薬的な作用ももたらす)なのか、そもそもじじいたちは相手が若ければなんでもいいのか。
じじいは恍惚の表情を浮かべているものがおおい。オークもまたしかり。
『黒の章』というビデオをご存知だろうか。
あれは人間が妖魔を……。という方向であったが。
あれとなんら変わることが無い。そこに広がる光景が精神に与えるダメージは。
オークたちがじじいを……。とベクトルと配役が変わっただけなのである。
仙水が「ここには人間は居なかった」と吐き捨てるレヴェルである。まあじじいたちは人間で単なる被害者のはずなのだが。
「それぞれが楽しんでいるところに無粋な闖入者なりブー。
全員でかかることもないなりブー。
手の空いている精鋭的な奴だけでいいなりブー。
相手してやるなりブー」
女王の命令で、お楽しみ中のオークの中から数体が起き上がり、面倒くさそうにこちらに向ってくる。
その数は四体。俺の想定どおりだ。
気を取り直して、仲間をみやる。
「うぷっ、ご、ごめんなさいぷる。すぐ、すぐに切り替えるぷるから……。うぷっ……。おえぇぇぇ……」
グリスラ子は緑色の液体を口から吐瀉しながら蹲っている。
「にゃ……」
タマは瞳孔が萎んで白目になっている。焦点が定まっていない。
身じろぎすらできないようだ。
放心状態という奴であろう。
「ほんっとに気持ち悪いですわ。なんなんですの。このオークたち……。
よりにもよってこんな老人ばかり集めて」
フェアリ子は口では嫌悪感を表明しつつもわりと平気なようだった。
今はその平然としているフェアリ子に救われる。
「敵は四体だ! いけるか?」
誰に言うでもなく俺は呟く。
「もちろんですわ! 兄様。二度とこんなふざけたことができないようにしてやりましょう」
「もう大丈夫ぷる……。戦えるぷる!」
「にゃんとか……。はあ……これはかなりこたえるにゃあ……」
オークたちとの距離が縮まる。
一体は先ほど相手をしたのと同じオークリーダーである。
あとの三体は見た目はほとんど一緒だが平のオークだ。
「オークリーダーの攻撃が厄介ですから、先に狙いを絞ったようがよさそうですわね」
「わかったにゃ! いくにゃ!」
まずはタマがオークリーダーに引っ掻き攻撃。
「せい!」
続けて俺が、剣で切る。
「ぷるぷる!!」
グリスラ子の体当たり。
さすがにリーダー格だけあって1ターンでは沈まない。
相手の四体の攻撃は、俺とタマに分散する。うち一回をタマが回避した。
「もう一撃にゃ!」
第2ターンの先陣を切ったタマがオークリーダーに攻撃をするがまだ倒しきることができない。
「フェアリ子、回復を頼む!」
「わかりましたわ、お兄様!
えーと、薄暗き……闇に閉ざされし暗櫃で……、
癒しを導く光を照らしたまん……
エキュア!!」
「せい!」
回復魔法を受け、その勢いでオークリーダーを斬りつけた。
「ブー!!」
オークリーダーがようやく倒れる。
「この調子で行くぞ。あとは雑魚だけだ。
一体ずつ確実に仕留める!!」
「わかったぷる!! ぷるぷる!!」
ゲーム的なシステムの制約上か増援が来ることもなく、オークリーダーを含めたオーク4体はあっさりと倒すことができた。
「なかなかやるなりブー。
しかし、お前らの好きにはさせないなりブー!!」
玉座からのっそりと立ち上がり、その巨大――2メートルちょっとあるので幼女にしたら破格のデカさ――な体を揺らしながらオーククイーンが近づいてくる。
いわゆる俺にとって。
この世界での。
初めてのボス戦の火ぶたが切って落とされた。




