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オークリーダー

 一難(ケルベロス)去ってまた一難()




 洞窟の奥で揺らめく光。その動きは炎のものに他ならない。


 俺は……、あいつを知っている。

 俺は……、あいつの恐ろしさを知っている。

 俺は……、あいつらの穢れを知ってしまっている。




「誰かいるブー?」


 奥から聞こえてきたのはそんな声だ。幼女の声のようでもあり、試合(どひょう)後の力士の声のようでもある。


「オークぷる!」


「オークリーダーにゃ!」


「オークリーダーですわね。どうします?

 戦って敵わない相手ではないですが?」


「もちろん、戦うさ」


 オークリーダーが近づいてくる。


「返事するブー。ケルベロスはどうしたのブー?

 持ち場を離れたら後で罰を受けてもらうブーよ!」


 俺達を仲間の一人(一匹? 一体?)だと勘違いしているのだろう。

 オークリーダーは、警戒も無く近づいてくる。


 このゲームの三大醜幼女として知られるオーク種。

 顔は可愛らしい幼女(っぽい18歳以上)なのだが、体は醜悪ソノもの。


 例えて言うなら、テレビの仰天速報的な番組にたまに出てくるピザばっかり食って体重が300キロとかそんなにになったおばさんみたいな体をスケールダウンした感じだ。


 腹回りの肉は、たゆんたゆんで、何段にも別れ、それがひだとなって重なって重力によってだらしなくぶら下がっている。

 腕周りも足回りもぶくぶくと肉が付き、顔だけが可愛い幼女なのである。


 それが、腰布を巻き、どうしてだかスポーツブラをつけた状態で出没するのである。


 こいつを倒せばスポーツブラが吹き飛び、腰布が消え失せる。

 考えただけでいたたまれない。

 それでも一部の愛好家からはほどよく愛された、ファンが皆無とはいえないモンスターなのである。人間の欲や趣味趣向というのは幅広く時に常人の理解を超越する。


「オークリーダーでしたら、レアリティは1ですわね。

 どちらかといえばレアリティ2に近いぐらいの能力を持ったモンスターですけれど。

 一匹ですから、そう苦戦することもないと思いますわ」


 というわけで、戦闘になり、あっけなく倒すことができた。


「仲間に……なりたそうに見てこないぷるね?」


「にゃにゃ?」


「どういうことでしょうか?」


「とりあえず、そいつを回復してやってくれ。

 身の程をわきまえたから、もう襲いかかっては来ないだろう。

 そいつのあられもない姿を見ているとなんともいたたまれない気持ちになる」


「わかりましたわ。回復いたします」


 フェアリ子が、オークリーダーに回復呪文を唱えた。

 それによって体力が回復したオークリーダーの衣服が復活する。

 本来ゲームでは必要なかった手順だが、真っ裸(まっぱ)の肥満幼女ほど見ていて不快なものはない。必要な措置である。


「さてと」


 と俺は気を取り直して、オークリーダーに向き直る。


「か、回復なんてしてブー! どうするつもりブー!!

 さては……、服を脱がすことに興奮を覚えるタイプだなブー?

 わたしをそんないやらしい目で見てブー。

 辱めを受けるくらいなら、死んだ方がマシぶー。

 ちょ、ちかよるなブー。

 くっ! ころ……」


 聞くに堪えなくなった俺はダメージが通らない程度にオークリーダーの頭を剣の峰で殴った。


「うるせえ。聞きたいことはひとつだ。

 ピンクスライムはどこだ?

 お前らはここで何をしている?

 あのケルベロスはなんだ?」


「さすがですわ! お兄様。どさくさに紛れて一度にいろんな質問をするなんて」


「まあ相手は逆らえないから、別にひとつに絞る必要もにゃいからにゃ」


「吐かねばどうするのいうのブー?

 さては、わたしを拷問にかけるつもりブー?

 あの手この手でいやらしくわたしの体を弄んでぶぅ。

 そんなことをされるのはプライドが……。

 くっ! ころ……」


「あーすまん、グリスラ子」


「どうしたぷるか?」


「こいつの相手するの面倒だからちょっと代りに聞き出してくれ」




「ということで、グリスラ子さんがちゃんと情報を引き出せましたわ。

 ピンクスライムは大量に捕えてこの奥の部屋に閉じ込めてあるそうですわ。

 見つけ次第捕まえているのでほとんどこの洞窟から姿を消したということ。

 それから、オークたちは他にもここに居ついているようですが、なんのためかというのは口を割りませんでしたわ。

 ケルベロスもオークたちが飼いならしていたようですが、どうしてそうなったかの経緯は知らないということです」


「わかった。ご苦労だった。

 じゃあ、ピンクスライムの居る部屋に案内してもらうことにしようか」


 グリスラ子がどうやって聞き出したのかとそれを何故フェアリ子が報告してくるのかという疑問は華麗にスル―してみた。


「わかったブー。案内するブー」


「どうしていきなり素直になった?」


「グリスラ子すごいのにゃ」


「……詳しく聞くのはやめておこう」


「こっちだブー」


 俺達はオークリーダー(改心)に先導され洞窟を進む。

 元々ピンクスライムしか出なかった洞窟である。

 そのピンクスライムが居なくなったのであればモンスターは出現しない。


 念のために他のオークと出くわした時に誤魔化せるように――無駄な戦闘にならないよう――、俺達がオークリーダに捕えられて、搬送されている途中のような小芝居を考えていたが、他のオークに出くわすこともなかった。


「ここブー」


「ああ、助かった。約束どおりお前は自由にしてやろう」


「ひゃひゃひゃ! ぶひひひひ!

 騙されたブー! 見事にだまされたブーね!!

 年貢の納め時ブー!!

 この部屋には確かにピンクスライムも沢山閉じ込めてあるブー。

 だけど、ブーたちの仲間も一杯いるブー!

 それに、ブーたちの真なる女王、オーククイーン様がおられるブー。

 お前達なんてけちょんけちょんにやられてしまえばいいブー」


「なんですって! 兄様! ピンチですわ!」


「まあ、数は多いかもしらんが、オークぐらいなんとでもなるだろう」


「それもそうですわね」


「やってやるにゃ!」


「がんばるぷるー!!」


 口ではああいったが……。


 多分おそらく中には数十のオークが控えている。

 とはいえ、その全部と戦闘にはならないはずだと見込んでいる。


 それはこの世界の法則ルールに期待するところが大きい。

 敵も味方も四体までのターン制バトル。


 相手がモンスターである限りそれは絶対条件のはずだ。


「オーククイーン様!

 侵入者を捕えて参りましたブー!!

 ただし、まだ抵抗する力が残っているブー!!

 ここはひとつオーククイーン様のお力で、こいつらに目に物見せてやってくださいブー」


「オークリーダーよ。それは捕えたとはいわないのではないなりかブー。

 まあよいなりブー。

 侵入者よ。入ってくるがよいブーなり。

 目に物見せてくれるブーなり」


 荘厳な幼女(風の18歳以上)と大一番後の力士のような声が混ざった声が室内から聞こえてくる。


「行くぞ。なにがあっても目を背けるなよ。

 心を強く持てば大丈夫だ。

 行くぞ!」


 俺は仲間を鼓舞してオークリーダの待つ部屋へと足を踏み入れた。


 ここからが本当の地獄の始まりなのである。

次回、グロ注意です!


あと、9月末のOVLの締め切りに向けてもう一作品書きたいのでこっちは終わらせるか更新頻度下げようと思っております。


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