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待ち合わせ

 年増のお姉さん(←失礼)に誘惑されてますが、ロリコンなので大丈夫のようです




「すいません、冗談です。

 ピンクスライムの生息する洞窟はどこにあるんですか?

 明日ちょっと行ってみて、そのピンクスライムゼリーっていうのが手に入るようなら持ってきますよ」


「えっ?」


「えっ?」


「話聞いてた?」


「聞いてました。冗談ですし、冗談ですよね?

 ええ、出来る限り取れるように努力しますよ。

 ピンクスライムゼリー」


「ピンクスライムゼリー……」


 サラサさんは、いい年をお召しになっていられるので、「もう! 馬鹿! 別にあんたに抱かれたいわけじゃないだから!」とか怒りださない。


 ただ静かに……。


「そう……、それは助かるよ。まあ期待しないで待ってるからね……」


 といってグラスを傾けた。そしてぽつぽつと洞窟情報について説明してくれた。


 話を聞くだけ聞いた俺は、マスターに勘定を支払って、酒場を後にしたのだった。




 サマルトリなんとかの王子といえば悪評が高いことで有名である。

 サマルトリなんとかの王子(略してサマ王)を知らない人に説明するのなら、とある某有名ゲーム――俺が入り込んでしまったエロゲでも散々オマージュが繰り広げられている――のパーティメンバーの一人、言ってみれば主人公格のキャラである。


 そして彼は元々パーティに居るのではなく、旅をして彼を仲間に加えるためのイベントをクリアしてやっと仲間になるのだ。


 だが、城に居ればいいものの、あちこち出歩き、なかなか出会うことができない。

 Aという地点に居ると聞いて行ってみれば、あああいつならBに行くといってたよとかBに行けばさっきまでは居たんだけどCに行ったみたいだ。

 と、行方を探すためにウロウロさせられるのだ。


 どうしてこんな話をしたかというと……。


 今回サラサさんから受注を受けたクエスト(のようなもの、イベント)も、面倒なことで悪評が高い。

 高い金を払って買ったし、ゲームクリア以外のモチベーションもいろいろあるために皆しぶしぶと進行させるのだが、実際にあっちいったりこっちいったりとさんざん歩きまわされる、お使いたらい回しイベントのようなものなのである。


 ゲームであれば実際に自分の足で歩くわけじゃなくて、単に方向キーを操作するだけであり、移動距離も移動時間もたかが知れている――数分程度の移動と数回の戦闘で到着する――のだが。

 サラサさんに聞く限り、洞窟まで普通に歩いて数時間はかかるという。

 しかもそれにはモンスターとの戦闘時間は含まれていない。

 高速移動できる便利な乗り物も持っていないとなれば、できるだけ労力を減らしたいのが人情というものである。


 幸いにして、俺はゲームで一度イベントをこなしているために、シナリオを進めるためのアイテム入手のために準備が必要なものをほとんど記憶している。

 ただ、先立つものがないために、すぐに全部そろえるわけにはいかないのだが。

 明日はそのための資金稼ぎと準備に費やすことになりそうだ。

 それにしたって、行ったり来たりを繰り返すよりもよっぽど効率的になるはずである。


 というわけで。


 買い物中のグリスラ子たちとの待ち合わせ場所へと向かった。といっても普通に宿屋の真ん前なのだが。

 布やらなにやらなのだろう。まあまあでっかい袋を抱えたコボル子と中くらいの袋を持ったグリスラ子と、手ブラ(ブラジャーを外して手で隠す方じゃないほう)のフェアリ子の姿があった。

 サラサさんと話し込んでいたおかげであっちの用事はすべて終わったようである。


「先に入ってくれてても良かったんだぞ」


 と、俺は今思いついた思いやりのある風の言葉をかけた。そもそも宿の前で待っててくれといったのは俺なのだが。


「あっしらモンスターコボからね。手続きとかが面倒になるかもしれないコボし……」


 と、普段は歯切れが良いコボル子が急に語尾を萎ませた。


「あのね……お兄ちゃんに、謝らないといけないことがあるプル」


「どうした?」


「あ、あたしのせいじゃないんだから!」


 とフェアリ子が口を挟むが、一切無視してグリスラ子の顔を優しく見つめてやる。


「怒らないからいってみな」


「お兄ちゃんに貰ったお金、全部使っちゃったぷる……」


「なんだ。そんなことか。

 全部使っていいって言っただろう。確か。

 足りなくて借金でもしてきたのなら別だが、そういうわけじゃないんだろう?」


「…………」


 グリスラ子がいいにくそうにしている。

 変わってコボル子が説明を始めた。


「それなんコボけどね。

 元々グリスラ子姉さんの見積もりでは十分足りてたコボよ」


「なに? 借金作ってきたのか?」


「そうじゃないぷる!

 あの、お洋服をつくるのに、みんなと同じ部屋じゃなくってわたしだけのお部屋を用意して欲しかったぷる。

 だから、そのお部屋の分のお金を残しておこうと思ってたプルが……」


「フェアリ子がその分を勝手に高い布地に使ってしまったコボよ」


「だって、肌触りが全然違うんだもの!

 折角着るのなら、そっちのほうがいいでしょ!」


「いや、フェアリ子の服に必要な布の面積なんてたかが知れてるんじゃないか?

 なにも魔法が込められたとかそんな特殊な布を買ったわけでもないんだろう?」


「三人分の布地を高級品に変えちゃったぷるよ……」


「だって、それでちょうど金額がいい感じだったんだもの!」


「つまりはこういうとか。

 金は全部使った。

 あと予定外の出費としてグリスラ子の裁縫ルーム代が別に発生する……と?」


「そういうことコボね」


「ほんとにごめんないぷる。

 あの……、一緒の部屋じゃお洋服は作れないけど、急ぐものでもないプルから、また今度お金に余裕があるときか、何かのきっかけでわたしにお小遣いをくれることになった時でいいぷるよ」


「え~!! せっかく楽しみにしてたのに! それだと何時まで待つことになるかわかりませんわ!」


 自分勝手なフェアリ子は放っておいて。

 鶴の恩返し的ななぞ制約を何事もない、さも当然のように主張するグリスラ子についてもそっとしておいて。


「ああ、そういうことなら。

 どうせしばらくはこの街に居ることになるから。

 宿は連泊することにするから明日の昼も借りっぱなしだ。

 だから昼間なら部屋には誰も居なくなる。

 グリスラ子だけ別行動になってしまうが、その間に服を作るとかそういう感じの進め方でどうだ?

 じゃなかったら夜なべでもして作る気でいたんじゃないのか?」


「あんまり迷惑かけたりわがまま言えないプルから……。

 それだったら別のお部屋は要らないぷる。

 でも、わたしだけ留守番とかでいいプルか?」


「気にするな。先は長いんだ。多少の横道は想定内だ。それにグリスラ子一人いなくてもそうたいした戦力ダウンにならないだろう。

 その間だけ適当なモンスターを仲間にしとけばいいわけだし」


 というわけで、金に余裕がないわけではないが特に必要もないので、今夜は四人で同じ部屋に泊まることになったのであった。

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