フェアリ子いぢり
なんか倒したフェアリーが挙動不審なので一同が戸惑ってます
「どうするコボ?」
「お兄ちゃん?」
「あ~、悪いけどどっちか、生きてるか死んでるか確かめてくれるか?」
そう提案したのは仮に生きていて、俺が近づいてそれこそ自害でもされたら寝覚めが悪いからである。
「じゃあ、あっしが……」
とコボル子がおずおずとフェアリ子に近づいていく。
「失礼するコボよ……」
コボル子はどこで覚えたのか、まずは、フェアリ子の首筋に指をあてがう。
ビクンッとフェアリ子が動いた気がしたが、それ以上の反応はない。
「とりあえず脈はあるようコボ」
言いながらコボル子はどこから出したか薄い布を取り出してフェアリ子の口元にそっとかざす。
「息もしてるコボ。
大丈夫みたいコボね」
「ってことは気を失ってるぷるのかな?」
「しばらくしたら起きるかもしれないコボね。様子見るコボか?」
「そんな悠長なことをしている暇はないんだがな。
せっかく手に入れた仲間だとはいえ、代わりのフェアリーはすぐに見つかるだろう。
フェアリーの素材は確かそこそこの値段で売れたはずだ……」
俺が、素材に変化させることを匂わせた瞬間に、
「う、うーん……」
とフェアリ子がうめき声を漏らした。
「起きるコボか?」
しばらく三人で様子を見てみたが、フェアリ子は覚醒することはなかった。
「やっぱり素材に……」
「うーん。うーん」
素材の話をした瞬間にフェアリ子はやはり絶妙なタイミングで声を漏らす。
「コボル子、ちょっとそいつをこちょばしてみてくれ」
「気を失っているのにコボか?」
「まさかぷる??」
さっしのいいグリスラ子は気が付いたようだ。
「じゃあ、くすぐるコボよ……」
体長20センチちょっとの小さなフェアリーをどうやってこちょばすのだろう? と思っていたが、コボル子はわりと器用に指先でフェアリ子の体をまさぐり始めた。
幼女(にみえる18歳以上のお嬢さん)同士だからできる遠慮も容赦もない攻撃だ。
「はひゃ、はひゃひゃひゃ……ら、らめえ……」
フェアリ子が身をよじりながら、おかしな声を出す。
「気を失ったふりだな。あわよくば、俺が諦めて無視していくとか考えたんだろうが、浅はかなことだ」
「ちょ、わかった、わかったから……! この、この子、なんとかして……、あっ、ああん、だめ、そんなとこ……」
「やめるコボか?」
手を止めずにコボル子が聞いてくる。
以心伝心というわけではないが、俺の意図を組んで自発的に手を止めることをしない。
「いや、続けてやれ」
といいながら、俺はフェアリ子に向かって語りかけた。
「あん! そんな! それってこそばすとか……、そういう次元を……いや、だめ、おかしくなっちゃう……、あん……あ、ああぁぁっ!」
コボル子はいたって冷静な顔を貫きつつも、なんとなく楽しそうな目つきになっている。
というか、こそばせという命令なのに、触ってるとこさっきからおかしくないか?
「ああ、らぁ、らめえ!」
「いや、らめえはもういいんだけどな。
わかった、コボル子、少し緩めてやれ」
「わかったコボ……」
攻撃の手を緩めることで、フェアリ子は若干の余裕を取り戻したようだ。
「く、くすぐったいってば。もう、わかったから……」
「まあこっちの事情を言ってしまえば倒したモンスターを放置するなんてことは一切ありえないんだよ。残念ながらな。
フェアリ子はパーティに入れてみたが、使えないようなら、経験値玉に変えるか、素材に変えるか、パーティメンバーのモンスターの合成用の餌にするかの三択だ」
「待って! いうこと……、いうこと聞くから……」
どうやらナチュラルにフェアリ子は自分の運命を理解してないかったらしい。
「というわけだ。コボル子。よくやった。その辺でいいだろう」
「了解コボ。フェアリ子ちゃん、兄貴の命令とはいえ、無茶をして悪かったコボよ」
「コボル子ちゃん楽しんでなかったぷるか?」
「グリスラ子先輩! ひょっとしてやきもちですコボかい?
あっしの手わざでよければいつでも言っていただければコボ」
「そ、そんなんじゃないぷるって……!」
「あっ、すいませんコボ。そうですコボね。
グリスラ子先輩は、兄貴一筋コボからね」
などと、コボル子が意味深な視線を向けてくる。
それと同時に、グリスラ子が身をよじらせて恥じらいの表情を浮かべる。
いや、まあお前ら……。そういうのいいから。
俺はさっさと話を進めたいんだから。
「フェアリ子。お前の言いたいことはわかる」
「何よ?!」
「見ず知らずの相手に、勝手に仲間にされて文句のひとつもあるだろう」
「そりゃあね。こっちはずっと気ままに生きてきたわけだし。
それが、捕まったら何されるかわかんないし、こき使われるんだろうし」
「お兄ちゃんはそんなことしないぷる!」
「兄貴はそこまでの人間じゃないコボよ!」
なんとまあ、フェアリ子に対して二人同時に反論してくれた。
とにかく。
「お前がどう思おうとな。
パーティに入れてしまったもんは仕方ない。
脅すようなまねはしたくないが、俺の言うことをすべて聞けとは言わない。
が、俺が面倒になったり、不利な状況に陥ることはするな。
それだけ守れるのなら、このまま連れて行く」
「嫌だといったら、素材にされるんでしょ?」
「よくわかったな?」
「いいわよ! ついて行くわよ!
こう見えてもわたしは、将来性もあるし、進化もするし、回復魔法だけじゃなくって補助魔法だって覚えるし、装備次第では回避率も上がるし、いいとこだらけの種族なんだから!
こうなったらあんたのパーティに最後まで居座ってやるわよ!
べ、別にあんたの役に立とうなんて思ってないんだからね!」
「兄貴、あんなこと言ってますコボぜ?」
「大丈夫ぷるよ。少し一緒に旅をしたら、フェアリ子ちゃんもお兄ちゃんの魅力に気づいて仲良くできるぷるよ」
とかんとかで、とにかく、俺のパーティは3人(3匹?)のモンスターで埋まった。
素直で何故だか人望もあるグリスラ子。
ちょっとうざいが、まあまあ使い勝手のいいコボル子。
出会いは最悪に近かったが将来性と希少性の高いフェアリ子。フェアリーに関しては、もう少し扱いやすい性格のやつと出逢ったらチェンジするという手もあるが。
それはさておき。
これ以降は新たな仲間が増えるのなら、それは牧場へ送らねばならなくなるな。
まあ、コボル子にほぼほぼ決定しているのだが。
そんなことをあえて声を大にして言う必要はないので、そろそろ近くまで近づいてきた街を目指して移動を開始するのであった。




