#2 消えない死体
その光景はモローの村でもあった。
死んだ村人が宙に浮き、どこかへと旅立っていく。
どういう理屈なのかはモローも分からない。
長老でさえ。
ただ、一つ分かっているのは。
「汚染されちまう! 死んじまうぞ‼」
死んだ人から毒素が発し、辺りの空気を汚していく。
結果、疫病が拡散されてしまう。
多くの村人が死に、浮いていった光景は、いまだにモローにはトラウマだ。
◆
モローは木に巻きついた蔓を取りに走った。
他の人間は、我関せずと見ている。
だが、一人だけ手伝いに来た。
「この蔓をどーすンのさ~~」
ちゃらそうなシロズニィだ。
にこやかな顔が特徴的で。
「大きく振りかぶってくれりゃあいい!」
ぶわ!
モローの体温がじわじわ、上がっていく。
「よっしゃ!」
モローとシロズニィが大きく振りかぶり、宙を蔓でまわした。
グルングルン!
すると、ゆらゆらと死体が宙高く上がっていった。
どうやら、毒素は免れたようだ。
へた……。
モローが、へなへなと地面にへたり込んでしまった。
「はーー終わったぁ……」
安堵するモローをよそに、
「で。手前はなんなんだよ!」
ギィドロニカが雄叫びを上げた。
そんな彼の首筋をジャが掴む。
デンとランの真ん中の兄弟だ。
「はいはいー行こうねードロ」
「っざけんなや‼ ジャ、手前‼」
強制連行、乙!
しかし、全くことの解決にはなってはいない。
むしろ、疑問だらけだ。
どうして、ここに赤の他人が集められているのか、とかだ。
嫌な予感はあるが。
ーー生き残るんだ! 絶対に‼
状況は分からないが、モローは胸にそう吐き捨てた。
そして、宙を見上げた。
まだ、さっきの死体が目に焼きつき離れなかったからだ。
もういないのだと、安心を確認したかったから。
「……死にたくねぇよ」