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ゴスロリ・スピカ! その1 ~せめて女の子にしてください!~  作者: 首藤えりか
~せめて女の子にしてください!~編・第二部
6/30

第六話・妹の真実?

再リメイク版と差し替え

これはやはり、けっこう重要なシーンではないかと

「えーと、入学願書に必要な物は、と……」


帰国して程なく、無事にお兄ちゃんの通う高校の入試を済ませたあたし。2月に入って待っていたのは、合格通知の来た高校へ提出する入学願書に添付する書類集め。

まあ通知に書いてあった書類は添付のものに必要事項を書くだけだったので、あとは戸籍簿をもらってくるくらいかな。

というわけで、お兄ちゃんが学校に行っている間に、あたしは近所の役所まで戸籍抄本を貰いに行ったんだけど。


「……あれ? なんであたし、養女なの?」


そう、筆頭者は確かにお父さんなのに、あたしの立場は「養女」、つまり実の娘じゃないってこと?

不安になって戸籍謄本も貰ってみると……


「うそ……!?」


見た瞬間に自分の目を疑っちゃいました。だって、お兄ちゃんとあたし、ホントは兄妹じゃなかったんだもの!

けど、今のママは本物だし、あたしのお父さんになっている留崎次郎とめさきじろうと、お兄ちゃんのお母さんになるクレア・ケープって、誰なんだろ?

首を傾げながらも家に帰ってママに国際電話をしてみると


『Hallo?』


「あ、ママ? フレア・ケープって人と留崎次郎って人、一体誰なの?」


シエリシェリー? そっか、高校入学準備のために戸籍見たのね。それは……』


そこからママが説明してくれたのは、あたしとお兄ちゃんの複雑な関係。実はあたしのお父さん、留崎次郎とシオンのお父さん、留崎一馬かずまは双子の弟と兄で、あたしのママ、フローラとシオンのママ、クレアも同じく双子の姉と妹。つまり双子同士のダブル結婚だったらしいの。

そっか、双子同士の子供だから似て当然、あたしたち兄妹も似てるはずだよね。

 あたしたちが産まれて間もない頃、にとある事故に巻き込まれた二組の両親。互いの伴侶を失って残る二人は失意のままに別々の暮らしを始め、ママはファッションモデルとして再びアメリカに戻り、シオンのお父さんはフリーのプロモーターとして日本に留まった結果が今なのね。そして「お義父とうさん」……つまり一馬おじさんが多忙なママの頼みを聞く形で、あたしの親権を代理してくれてるってわけ。ちょうどあたしはお兄ちゃんともすごく仲が良かったしね。


「それじゃあ、お父さんとママは本当の夫婦じゃなかったんだ」


『そうなのよ、まあちょっとは互いに入籍も考えたんだけどね、ママの家系のこともあるし、第一仮面夫婦みたいで二人とも抵抗があったのよ』


「そっか、こればっかりはあたしが口を挟める立場じゃないものね。って……ママの家系って何か秘密とかあるの?」


『あ、ごめんなさい。これはホントは言わない約束だったんだけど……』


「え? 言いかけてやめちゃうの? あたし当事者なのに!?」


『そうね、言いかけた以上言わなければならないみたいね。実はね……』


……


「……えっ!? う、嘘……でしょ?」


『本当よ? ケープ家が代々失われた魔術師の一つ、精霊魔法スピリチュアルの使い手だって言うのはね。ただ魔法自体は他の人に悪用されないためにと、先々代くらいから呪文の伝承はされていないの』


うーん、人生って色々複雑で上手くいかないものなのね。あたしのお父さんとお兄ちゃんのママが死んでたってこともショックだけど、今のお父さんとママが結婚してなくて、しかも魔術師の家系だなんてまるでパズルみたいなお話なんだもの!


『けどね、シオンショーンにはどっちもまだ言っちゃダメ、あの子優しすぎて傷つきやすい子だから』


「そう……だよね……」


ホントはあたしもけっこうショックで傷ついてるんだけどな。

お兄ちゃんよりは立ち直り早いから大丈夫だとは思うけど。

じわっと溢れる涙を拭って、ちょっと無理してSmile! シエリがんばっ♪


「忙しいとこゴメンね、そっちは今真夜中だもんね」


『Don't mind! シェリーの声が聞けて嬉しかったわ!』


「あたしもだよママ。それじゃGood night!」


あたしは電話を切った。

切った途端に、また涙が溢れ出した。


「ママの……バカ!」


あたしは一人、心の叫びを小さく吐き出す。

こんなの、こんなのって無いよっ!

実の兄妹ならこんな思いにならずに済んだ。

魔法使いの家系じゃなければ、抱えている秘密、という不安に苦しめられなくて済んだ。

兄妹なら「結婚は無理」だけど、「家族であり続ける」ことは出来るもの。

魔法の使えない普通の人間なら、秘密を守る苦痛なんて感じなくていいもの。

ママはお兄ちゃんの心配はしてたけど、あたしの心配はしてくれないんだ。

あたしだって傷つきやすいんだよ?

そりゃお兄ちゃんのようにエンエン泣かないけど、心の中ではいつも涙を流してた。

それに気付いてくれてたのはいつもお兄ちゃん。

あたしの、たった一人のお兄ちゃん……

お父さんもママも、いつも気付いてくれなかった。

お兄ちゃんが気付いて初めて、それに気付いてた。

そして「シエリは強い子だね」って誉めるだけ。

これじゃあ泣けるわけ無いじゃない!

だからいつも、あたしはお兄ちゃんの前でだけ泣いてた。

お兄ちゃんも一緒にいっぱい泣いてくれた。

あたしが泣いてる理由を知らなくても泣いてくれた。

ホントの兄妹なら、いつだって会って、それが無理なら電話でお兄ちゃんが一緒に泣いてくれる。

でも、あたしたちは従兄妹同士。

結婚が出来るということは、その分距離が遠いということ。

ずっと兄妹のままでいなければならないなら、この距離は決して埋まらないの。

お兄ちゃんに好きな女性ひとが出来たら、あたしは赤の他人になってしまう。

そんなのヤだよ!

お兄ちゃんと離れるなんて出来ないよっ!

一人で魔法使いの家系を隠し通すなんて、あたし、そんなの無理だよっ!

今は甘えてるしかできないけど、お兄ちゃんのためにあんな事、こんな事、喜んでくれそうな事、いっぱいしてあげたいよっ!

お兄ちゃん、一緒にいてよ……一生離さないって言ってよ……あたしのキモチに気付いてよっ!

そっか、気付いてくれても兄妹じゃあ、いつか離れなくちゃなんだよね。

別々の道、歩いていかなきゃならないんだよね……


「お兄ちゃんの、バカ……」


強がりの言葉しか出てこない。

本心からそう思ってる訳じゃないのに。

たぶんあたし、お兄ちゃんが他の人に取られるの、耐えられないと思う。

けど、あたしその時、どういう顔すればいいの?

「おめでとう!」って笑うの?

無理だよ、あたしそんな強い女の子じゃ無いもん!

泣くと思う。きっといっぱい、泣いちゃうと思う。

でもね、それじゃあお兄ちゃんを困らせるだけ。

祝福して欲しい妹に泣かれて、平気な顔でいられるお兄ちゃんじゃないもの。

だから一緒に、泣くと思う。

喜ばなきゃならないのにね。


「お兄ちゃん……」


お昼のテレビドラマなんて、ちっとも笑えない。

ドロドロした人間関係、愛憎劇、恋人の奪い合い……

あたしがそんな立場に追い込まれると、絶対耐えられないと思う。

泣いて暴れて、お兄ちゃんや周りのみんなに、いっぱい迷惑かけると思う。

ママはそうなって欲しいの?

それともそうならないって信じてるの?

あたしの頼れるのはお兄ちゃんだけ。

鈍感な振りしてしっかりあたしの気持ちに気付いてくれてた、たった一人のお兄ちゃん……

離れ離れになるなんて、やっぱり考えられない!

お兄ちゃん、大好き! 早くあたしのキモチに気付いてよっ!

……


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「ただいまシエリ、入学手続きの方は順調か? 独りじゃ無理そうなら僕が休んで一緒に行くけど」


「ダイジョブ! 準備だけなら一通り済んだから! 明日書類の提出に行くつもりだよ」


心配そうに聞いてくるお兄ちゃんに、あたしはニッコリ笑って答える。あ、またちょっと涙が溢れそうになってるみたい、元気出さなきゃ!


「学校で疲れたでしょ? コーヒー淹れてくるね!」


あたしは誤魔化すように急いでキッチンへ。今はとにかく、お兄ちゃんにこれ以上心配かけたくないもの。

けど、お料理であたしが出来るのって、コーヒーくらいなものだもんね、ホントは色々お料理覚えて、お兄ちゃんにも楽させてあげたいのに……


「シエリ、泣いてるのか?」


「ううん、目にゴミが入っただけ!」


やばっ! あんな事があったから、あたしナーバスになっちゃってる。お兄ちゃんのためにもしっかりしなきゃ!


「そうか? なら良いんだけどさ。悩み事あるなら遠慮しないで言えよ?」


「うん、ありがとお兄ちゃん♪」


そうは言ってくれてもコレばっかりは話せないけど、気持ちだけ貰っとくね!


コポコポ……


ドリップコーヒーの雫の音が静かに響く。二人で無言の時間を過ごしてるとまたナーバスになっちゃう、何か言わなきゃ!


「シエリ?」「……お兄ちゃん」


……あ、タイミングダブっちゃった。


「……ドゾ?」


「あ、ああ。今日のお前、ちょっと変だぞ? 熱でもあるのか?」


え? やっぱりショックが顔に出てたのかな? はうぅっ、しっかりしなきゃなのに。


「だ、ダイジョブだよっ! 一人になってちょっと寂しかっただけだから!」


「そっか、側にいてやれなくてゴメンな」


……ヤだよお兄ちゃん、このタイミングでやさしい台詞言わないでよ! そんなこと言われるとあたし……


「お兄ちゃん!」


あたしはたまらず、お兄ちゃんにギュッと抱きついた。だって、だって……


「シエリ、お前やっぱり泣いてるじゃないか!」


「グスッ、だって、一人で寂しかったんだもん!」


「だよな、ホントゴメン。明日は早く帰るようにするから」


「ううん、ありがとお兄ちゃん、やっぱりお兄ちゃん大好きっ!」


チュッ!


胸いっぱいのキモチを込めて、あたしはお兄ちゃんの唇に自分の唇を軽く重ねる。でもお兄ちゃんはあたしの本心には気付いてくれないんだよね? 応えてはくれないんだよね?


「おわっ! いきなり何するんだっ!」


「えへへ、感謝の気持ちだよっ♪ 心配してくれてありがとっ!」


「だからって、なにもキキキスなんて、することないだろっ!?」


「お兄ちゃんったらウブなんだ、かわいいっ♪」


「怒るぞ本気で! いいのかよっ!?」


「ごっめーん、冗談だよぉ!」


そう、今はまだ兄妹だもんね、でもお兄ちゃん、いつかはきっと……気付いてくれるといいな、あたしのキモチ……


お読みいただき、ありがとうございました。

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