↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴスロリ・スピカ! その1 ~せめて女の子にしてください!~  作者: 首藤えりか
~せめて女の子にしてください!~編・第一部
4/30

第四話・実は料理が?

だんだん僕の妹の本性が明らかに。

うーん、僕の妹は一体何なんだろう?

「あちゃー……」


帰宅した妹の第一声は、いかにも残念そうな嘆息。

せっかく買ったもみじ饅頭のうち一箱が、あの誘拐未遂事件で綺麗さっぱり潰れていたんだ。


「これ、食べられないね?」


「さすがに無理そうだなあ」


見事なくらい綺麗に潰れ、フィルム包装の中でもぐちゃぐちゃ(スプラッタ)な様相を見せている。味くらいなら分からないこともないだろうけど、見た目がアレなので食欲なんて期待できないね。

まあ二人とも何とか無事だったんだから、この際目をつぶるべき些細な出来事と見た方がいいのかも。


「けど……」


僕を見つめるなり途端に無口になるシエリ。見るとアメジストの瞳がひどくうるうるしていて……


「お兄ちゃんのバカッ!」


叫びながらいきなり僕に抱き着くシエリ。想いの丈を大量の涙で表わし、縋るような眼差しを僕に注ぐ。


「あたし、心配したんだからねっ! すっごくすっごく怖かったんだからねっ!」


「ごめん……」


「お兄ちゃんが無事だったから許してあげるけど……」


目を真っ赤にして上目使いに僕を見つめ、涙という宝石を惜し気もなく僕の胸に浴びせ続けるシエリ。だ、ダメだよ、そんなかわいい顔で見つめられたら、僕の理性ががが!


「……もうあんな無茶したら、あたし許さないんだからっ!」


「それもごめん」


「けど、ホントありがとう。お兄ちゃん、あたしを守るために頑張ってくれて。やっぱりお兄ちゃん、大好き♪」


やさしい笑みを涙で飾り、妙に艶っぽく訴えるシエリは、思った通り破壊力抜群だったわけで……


「シエリぃっ!」


「あ、ダメッ! あたしたち兄妹なんだよっ!?」


……あっ! やばいやばい、ここは精神統一、ヒッヒッフウッ……


「それ、ラマーズ法! 女の子が出産するときの呼吸法だよ?」


「あれ? そうだっけ?」


完全に舞い上がっててそこまで頭が回らなかったよ!


「うふふっ」


「あはは」


体を離して少し笑い合うと、あの怖かった一部始終が夢のように思えてくる。

よしっ、決めた! 僕頑張るよ! このシエリの笑顔のためには何だって……女装だってしてみせるっ!


「でも疲れ過ぎちゃったかな? お腹すかないね?」


「ああ、じゃあお風呂だけ入って寝るか?」


「うん、でもその前に」


そこで僕の顔を訝しむようにじっと見つめたシエリに、思わず僕は姿勢を正す。


「お風呂覗いたりしたらあたし、お兄ちゃんのこと嫌いになるからねっ!」


「りょ、了解っ!」


うわあ、ジト目で睨まれちゃったよ! こいつけっこう怖いかも?

も、もももちろん覗きなんてしなかったからなっ! 脱ぎたての下着以外……あっ! ダメダメッ! 白い下着だったなんてばらしちゃダメだってばっ!


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


チチチ……


小鳥たちの囀(さえず)りにまどろみタイムを邪魔され、少しだけ不機嫌になる僕がいる。

もちろん昨夜はとっても健全な夜を別々の部屋で満喫したから! お陰で僕の下半身は今、とんでもなく立派(ピー)になってるけどさ。


……ボンッ!


「きゃあっ!」


えっ? 今のはシエリの悲鳴じゃあ……!

慌てて飛び起き、パジャマのまま声のした方へ向かう。確かに一階のキッチンから聞こえたはず!


「シエリ! 大丈夫……!?」


「グスッ、お兄ちゃん……!」


見るとそこには煤けた顔でへたり込み、今にも泣きそうな顔で僕を見つめているシエリがいた。

IHクッキングヒーターの上に置かれたフライパンからは真っ黒い煙、彼女をこんな姿にした犯人は、どうやらこいつらしい。


ピッ


スイッチを切って中を覗くと、そこには真っ黒に炭化した……これは?


「これ、何?」


「目玉焼きぃ……」


う、嘘だよな? 目玉焼きといえば料理では初歩の初歩、難しいものではないはずだけど。


「ホントに目玉焼きか?」


「うん……」


涙をぽろぽろこぼしながら頷くシエリ、確かに形は目玉焼きのように見えないこともない。


「グスッ、せっかくお兄ちゃんのために頑張ってたのにぃっ!」


しゃくり上げながらも訴えているシエリに、僕は返す言葉が見つからない。


「うええええんっ! あたし、もうこんなのヤダーっ!」


おいおい、泣くことないだろ? まあその顔もすごくかわいいんだけどさ!


「よしっ、あとは任せろっ!」


お兄ちゃん、ヤル気……じゃなくてやる気出ちゃったからねっ!


「……心の声、ダダ漏れだけど……?」


「えっ!?」


先程の姿勢のまま、今度はジト目で僕を睨んでいるシエリ。

群青色(ウルトラマリン)の髪を後ろでポニーテールに纏め、上はラフな白いTシャツにグレーのミニ丈プリーツスカート、ボーダー柄のオーバーニーソ、あらわになった絶対領域(フトモモ)がすごく眩しいですっ!


ゴクリ……


「お・に・い・ちゃ・ん!」


「は、はははいっ!」


「お兄ちゃんのえっちっ! 大っ嫌いっ!」


ガーン!


シエリから大嫌いなんて言われちゃったよ! この先僕は何を支えに生きていけばいいんだよっ!?


「うわああぁんっ!」


「お兄ちゃん!?」


思わず膝をついて泣き出した僕に、あからさまに動揺しているシエリ。何かを探すような、それでいて救いを求めるかのような目線を宙に泳がせ


「ごめっ! 今の嘘っ! あたしお兄ちゃんのこと大好き! うん、大好きだから、ねっ? だから泣かないでよっ!」


「クスン……ほんとに?」


「うんっ! ホントだよ?」


「ホントのほんとに?」


「ホントだってばっ! だから……」


意を決したようににじり寄ると、僕の頬に手を添え


チュッ!


僕の唇に軽いキス!


「わああっ!」


「ねっ? あたしもう怒ってないから! だからお兄ちゃんも……ねっ♪」


甘ったるい笑みを顔いっぱいに広げ、やさしく囁きかけるシエリ。ダメだっ! そんな顔されたら萌えてしまうってばっ!


「……でも、やっぱりお兄ちゃんってえっちなんだあ!」


「え……?」


言われて初めて気づく。妹の視線が僕の猛烈(モーレツ)に元気な煩悩(パトス)に注がれていることに!


「男の子って、適度に発散しなきゃダメなんでしょ? お兄ちゃんなら、その、あたしをオカズにしても許して……」


「わーっ、待て待てっ! お前何言ってるんだっ!?」


「何って、オ○……」


「言うなーっ!」


いきなりなんてこと言い出すんだよっ! これ以上言ったら公開禁止に……じゃなくて! イケない関係になっちゃうじゃないかっ!


「と、とにかくっ! しばらく料理は僕が作るからっ! お前はとりあえずダイニングテーブル拭いて皿並べといてくれ!」


「そうだね、お兄ちゃんがそういうなら……」


にしても目玉焼きって、そんな難しい料理だったかな?

疑問に思いつつ自分でチャレンジ、スライスハムの上に卵をポンッ、蓋をして蒸らすことしばし……

香ばしい香りを漂わせつつ、あっさりできる二つのハムエッグ。

うーん、どこで失敗したんだろ?


「お兄ちゃんすごい!」


「どこが?」


「目玉焼きがハムエッグになってるっ!」


「いや、普通そうしない?」


「そうするものなの?」


あっさり普通に答える僕に、いちいち驚嘆しているシエリがいる。もしかしてこいつ、アメリカじゃ料理したことないとか?

うーん、ママと一緒に住んでたんだし、ないこともないと思うけど……


「お前、向こうで料理習ってた?」


「習ってないよ?」


「……だよなあ、習ってたらこれくらい出来……って、習ってないぃっ!?」


「そうだけど?」


逆に驚愕している僕に小首を傾げ、不思議そうに見つめてくるシエリ。いや、それ普通有り得ないだろ?


「いったい向こうで何やってた?」


「えと……ファッションモデル?」


「え……!?」


それじゃ、家事は一体誰がしていたんだ?

ママは超多忙なモデルだし……


「向こうじゃお手伝い(メイド)さん雇ってたなぁ、ママも私も超忙しかったから」


「マジかよ!?」


それじゃあ日本で慎ましく暮らしてた僕と親父って、一体何なんだ?

家だってあまり立派なものじゃないし、家事も父子交代でこなしてたし……


「まぁ、この世の不条理ってことで♪」


「ちょっと待て、なんで僕の思ってたことがすべてわかるんだよ?」


「なぜって、ずっとブツブツ呟いてたよ?」


「そ、そんな……!」


がーん! これじゃ僕たち、何のために苦労してたんだよぉ!


「とにかく……食べよ? ハムエッグ冷めちゃうよ?」


「あ、ああ……」


食パンをレンジで温め、バターを付けて、と。飲み物はコーヒーでいいよな?

僕は甘党だ。コーヒーにはクリーミングパウダーと砂糖が欠かせない。


「ちょっと待っ! あちゃあぁぁぁ……」


「どうかしたのか?」


「砂糖入れちゃった……シクシク……」


「コーヒーに砂糖って普通じゃないか?」


「糖分の摂り過ぎは太るんだよぉ! パンもハムエッグもカロリー高いし!」


「これくらい良くない?」


「やだっ! 太ったらモデルできなくなっちゃうっ!」


男なら「これくらい」と思うことでも女ってのは気になるんだなあ。仕方ないのでシエリのために淹れたコーヒーを捨て、好きなように作らせようとすると


「あっれえぇぇ? お兄ちゃん、ブルーマウンテンコーヒーないの? ドリップするやつ!」


「うちにあるのはその粉末コーヒーだけだが?」


「うっそーっ!? 信じられないっ!」


悪かったね、うちは貧乏だから三本でいくらとかいう超安売りインスタントコーヒーしか買ってないんだよっ!

なおもブツブツ不平を言ってるシエリを無視し、僕はそそくさとパンとハムエッグを口に流しこむ。


「ごちそうさま!」


「え? あたしまだ何も食べてないのにっ!」


「拘ってたらいつまで経っても飯食えないぞ?」


「ううっ……」


半分べそをかきながらインスタントコーヒーをブラックで淹れ、シエリは顔をしかめながらパンとハムエッグを口に運ぶ。

いや、不味そうな顔しなくてもコーヒーが不味いのはよく知ってるからさ。


「ううっ、ごちそうさまですぅ……」


「おそまつさん!」


「せっかくハムエッグ美味しかったのにぃっ! コーヒーで台無しだよぉ!」


「そりゃどーも!」


なおもグズるシエリを無視して自室に戻り、手早く着替えを済ませる僕。まあ今日は普通にお出かけだからラフなジャンパーにジーンズだけど。


「どこか行くの?」


「お買い物!」


「え? なになに? 何買うのっ!?」


「晩飯の食材だよ」


「じゃあ……あたしも行っていい?」


甘えた子猫のような表情を浮かべ、シエリが紫水晶(アメジスト)の瞳をうるうるさせて上目遣いに僕を見る。

いや、いいけど、いいんだけど、その眼差しは萌えてしまうってばっ!


「いいけど、早く準備しろよな!」


「やたっ! お兄ちゃん大好きっ♪」


今思えばこれが新たな事件のキッカケだったのかも知れないな。

さて次回のスピカさんは!


「えと、シエリです。なんか本編では散々言われてるけど、あたしだって女の子なんだよ? だからあんなことやこんなこと、果てはあーんなこともできちゃうんだからっ!」

「シオンですっ! だからやめろ! その言い方は読者が変な誤解するだろ!?」


ではお後がよろしいようで♪

再リメイク版に差し替え済み。

ご意見、ご感想、採点、果てはご指摘までなんでも待ってます!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。