第二十六話・秘められた思いと決意?
すっかり更新が遅れてしまいました。
ただ今回はストーリー上毛色の変わったお話なので、あまり面白みはないのですが……
「色々気を使ってくれたようだな、済まない」
ひと通り買ってきた衣服に袖を通した元フンドシ男、虎縞さんは如何にも申し訳ないといった様子で僕たちに頭を下げてくれた。
まあ少し小さめのジャージだから見栄えはあんまり良くないし、ノープラだから、その、ポッチがしっかり目立ってるけどさ。
「こんな物しか見つけられなくてごめんなさい」
「気にするな、見た目はどうあれ、男の身で女性の服を買いに行けば誰だってこうなる」
シュンとしながら謝る僕に、優しく答えてくれる虎縞さん。怖い人かなって思ってたけど、意外と穏やかな人なのかな?
身体のラインがぴっちり強調された、ある意味スゴくえっちな姿の虎縞さんは、見知った間柄であるリゲル、吉田さんの隣にどっかりと腰を降ろす。
座卓に並んでいるのは人数分の缶ジュースに数種のスナック菓子、みんなはまだ遠慮があるのか誰も手をつける様子はないけど。
そこそこ整理されているとは言え、狭いアパートの一室に男女合わせて八人が座ればさすがに窮屈で、みんなは肩を競り合わせるようにひしめき合っている。上座にシリウス、犬山先生が座り、その右隣に吉田さん、虎縞さん、典部一平、アリサさん、瀬戸彩花さん、シエリ、そして僕がぐるりと座卓を囲んでいるから、僕の右肩にはグイグイと犬山先生の左肘が押しつけられている状態だ。狭過ぎて胡座なんてかけないからみんな正座、座布団も無いからこのまま長居すると足が痺れちゃいそうだ!
「けどさ、お前芸人目指してた筈だろ、それが何でこの子たちを襲ってたりしたんだ?」
懐疑的な横目で睨みながら問う吉田さん、遠慮のない話しぶりからかなり親しい間柄だったみたいだね。
「俺にも妹がいるんだよ、ずっと入院したままだがね。あいつの治療費を稼ぐためには仕方ないと思っていた」
「お前の妹さんか、一体何の病気なんだ?」
「心臓に問題があって、移植以外に完治はないらしい。だから手術するのに大金が必要なんだ」
うわあ、心臓移植って話聞くだけでも大変そう。確かに危ない橋を渡ってでもって気持ちは理解出来るよね。みんなで何とか力になって上げられないかな?
「つまり、その手術費用を稼ぐためにこの子を狙う仕事を引き受けた、というわけか」
「そうだ。だが、俺は視野が狭かった。俺が自分の妹を大切に思うように、この子も妹を大切に思っている。俺はそれに気づかずひどいことを続けていた。だからこんな姿になったのも自業自得だ、妹に合わせる顔がないよ。これ以上悪事を働くくらいなら、いっそ俺の生命保険金に頼った方がマシだな」
「お前、死ぬつもりか? それじゃあ妹さんはどうするっ!? これから先、誰が面倒を見るっていうんだっ!?」
バンッと座卓を叩いて、吉田さんが思わず立ち上がる。あまりの剣幕に僕たち全員ドン引きしたりして。
「犯罪者で、しかもこんな姿にされた俺には妹の前に立つ資格なんて無い。だからあとの面倒はお前に任せるよ。その代わり俺の余った保険金はお前の判断で好きに使ってくれて構わないさ」
「ば、バカなことを言うなっ! 言っとくがな、俺はお前じゃあない、どんなに面倒見てやってもお前にはなれないんだ! 違うかっ!? この意味が分からないお前じゃないだろっ!?」
「リゲル……じゃなくて吉田さん、もうその辺にしてあげようよ?」
激昂しきっている吉田さんに、僕は遠慮がちながらたしなめてみると。
「……済まん、ちょっと興奮し過ぎた。じゃあ話を変えよう。お前を雇った組織がこの子を狙う理由はなんだ?」
「世界制覇のために必要だ、とか言ってたな。この子には何か特別な力があるらしい」
「私に特別な力? そんな話、初めて聞いたんだけど?」
「シエリちゃんの力って何だ?」
虎縞さんの意外な発言に、思わずキョトン、とするシエリと興味津々の一平。それについては僕も同感で、逆にどんな力があるか聞きたいとこなんだけど。
そう思ってじっと虎縞さんの次の言葉を待ってはみたんだけど……
「三人とも何か期待しているようだが、俺はこれ以上は知らんよ?」
「えーっ、それ困るぅ!」
いや、駄々こねたい気持ちもわかるけど、知らないものは教えようがないよな。そう理解した僕がシエリたちに頭を振ると、妹はがっくり肩を落としてしょげ返り、一平は一平でぶすっとむくれている。その隣では瀬戸さんとアリサさんがさも呆れた、というため息をついてるけど。
「やはり直に乗り込んで本人に聞け、ということだな!」
「シリウスさんの言う通りですね、俺もこうなったら真実を知るついでにここで雌雄を決するのもありだと思う」
犬山先生の提案に乗る吉田さん。せっかくメンバーが揃っていることだし、ここで一気に! というのもいい判断かも♪
「……この人数じゃ無理だな。あの女は魔法使いだぞ? お前たちみたいに小手先技だけで戦うならもっと人数がいるだろう」
「人数って……シリウスさん、メイドスターズのメンバーはあと何人いるんですか?」
「悪いね、今のメンバーはここにいる俺とスピカと君、リゲルだけだ。あと二人入れるつもりだったが、いい候補者がいなくてね」
「先生、じゃなくてシリウスさん、俺じゃダメかな?」
「典部は……すまん、君には基礎魔力がないから変身すら出来ないな」
「私はどうでしょう?」
「私も力になれるならぜひ!」
「女の子たちにこの戦いは酷だと思う。瀬戸、それと、アリサさんだったかな? 君たちに無理はさせたくない」
犬山先生はやはり女の子である彩花さんとアリサさんには無茶をさせたくないって。その気持ちは僕もよく分かる。力技の使えないこっちと違って、向こうは力づくで戦いを挑んでくるんだから!
いくら体が強化されたとしても、女の子があのダメージを受けたら……って、女の子はもっこりしないぞ! 強化なんて出来るの!?
「……ならば俺が仲間に加わってはダメか?」
「「「「……虎縞さんが!?」」」」
意外な人物の立候補に部屋にいる大半が驚きを隠せない。冷静な顔をしているのはリゲル、つまり吉田さんだけで、シリウスこと犬山先生ですら目を丸くしているんだから!
「まさか! こいつ敵だろ? それがあっさりこっちに寝返られても信じられるかよっ!」
「私もにわかには信じられませんわ!」
「そうよ! この人が戦いのさなかにまた向こうに寝返られたら、あなたたち取り返しの付かないことになるわよ!?」
一平、彩花さんにアリサさんまでが猛反発! 僕は……どう判断していいかわかんないし、シエリはシエリでオロオロしてるだけだし、どう考えても虎縞さんがメイドスターズに参加するのは無理でしょ?
「……それは名案かもしれないな!」
そんな中で、妙に喜色満面に頷いている吉田さん。どうして?
「こっちは敵の手の内がまだほとんどわからないのに対して、虎縞がこっちに参加すればある程度とはいえ敵情が掴めてくる。しかも向こうは仲間だという意識がいくらかあるはずだからむやみに襲ってこないだろうし、そう考えればスピカの妹さんを護衛させるのがもっとも効果的な配役だと思うな!」
「リゲル! それは本気で言っているのかっ!?」
吉田さんのとんでもない提案に、犬山先生はもう激怒の絶頂! 先生って、本気で怒るとなんかすごく怖いよっ!
「少なくともコイツは俺たちの敵だった男だぞ!? それを信じるだけじゃなく、彼女の護衛に付けようというのは、話があまりにも飛躍しすぎだ!」
「大丈夫ですよ、コイツは不器用だけど誠実な男。そして、今のあいつらには女にされた恨みこそあれ義理立てする理由が無いでしょう。決して裏切ったりしませんよ」
吉田さんはそう言ってるけど、僕たちは虎縞さんのこと、何にも知らないんだよね。
けど……
「じゃああたしがメイドスターズに入る! お兄ちゃんだけに怖い思いさせたくないのっ!」
「シエリ……!?」
いきなりのシエリ発言に、その場のみんなが凍りつく。けど……
「ふむふむ、それは名案かも知れないな!」
「先生……!?」
犬山先生の予想外な相槌、僕を含めてみんながびっくりしたものの、いざという時に自分の身を守ってくれるだけでもこっちはスゴく楽になるよね!
「それじゃあこうしよう、虎縞さんをナデシコ・ベガとしてシエリちゃんの護衛に、シエリちゃんはヒメミコ・アトリアとしてみんなの回復、支援に当たってほしい。これでどうだね?」
犬山先生は虎縞さんとシエリの二人に杖を渡しながら、残るみんなに念を押した。それに続いて静かに礼をする虎縞さんとは対照的に、元気よく手を挙げ応えるシエリ。
「わかった、この子のことは任せてくれ!」
「りょーかい! これからよろしくねっ♪」
元々は男だったとはいえ今は女の虎縞さんと、生粋の女の子であるシエリが加わったメイドスターズ、一体どういう戦い方ができるんだろう? それ以前にどうやってパワーを発揮するのかも疑問なんだけど……
お読みいただき、ありがとうございました。
次のお話から最終決戦! になるかと思います。
連休中に完結まで持ち込めれば、とは思っているので、もうちょっと待って下さいね。




