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ゴスロリ・スピカ! その1 ~せめて女の子にしてください!~  作者: 首藤えりか
~せめて女の子にしてください!~編・第五部
21/30

第二十話・彩花の心配?

再リメイク版と差し替え

今回はかなりドタバタしています。

早とちりと誤解が大きな悲劇を生む予感が!

 降り続いた雨も日曜日にはやみ、太陽が雲間から顔を出しました。

昨日の電話が気になった私は、留崎とめさき君の家に改めて電話をしてみて


「あ、シオン君ですか? 瀬戸せとですけど」


彩花あやかさん? 今日は何?』


怪訝そうに聞いてくるシオン君。声のトーンが低いところを見ると、まだ仲直りは出来てないみたいです。


「元気ないみたいですけど、大丈夫ですか? もしよかったら今からそっちに行って、シエリちゃんのお話、聞いてあげようと思うんですけど」


私がシオン君にそう提案すると、彼の声のトーンが一気に変わって


『ホント? 来てくれるの!? じゃあお願いしていい?』


凄く嬉しそうな反応。電話してみて良かったです♪


「場所を確認してから行くので、たぶん着くのは十時頃になると思うの。待っていてもらえるかしら?」


『もちろん! 僕待ってるから!』


「それじゃああとで」


……


これでうまく仲直りさせてあげられると良いんですけど……


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「こんにちは!」


シオン君の家は分譲団地の少し上の方で、曲がる路地を間違えると迷子になるかも、と心配したのだけど、思ったよりはスムーズ着くことが出来て良かったです。おかげで十五分位早めに着いてしまいました。

彼の家は特に大きいというわけでもないのですけど、ごくごく新しい、最近流行の洋風デザイン。それでいて落ち着きがあるブラウンの外装が何か憧れてしまいそうです!


「彩花さん! 早かったね、道に迷ったりしなかった?」


「大丈夫、思った以上にスムーズに着きすぎて、ちょっとびっくりしてるくらいよ」


「そうなんだ、でも来てくれて助かったよ!」


「お役にたてるかどうか分かりませんけど♪」


今日の私の服装は、上品なレース使いの白いシフォンワンピース。スカートも膝丈の落ち着いたデザインなんだけと、シオン君、気に入ってくれるかしら?


「とにかくあがって!」


……そう、やっぱり男の子だものね、私の服装は見てくれてないようです……


「お邪魔します……」


少し気落ちしながらも、家の中に入れてもらう私。やっぱり家の中もすっきりしていて憧れそう。和風の旧家である私の家とは大違いです。

入ってすぐ右にあるLDKに通され、少しお喋り。


「それじゃあ、シエリちゃん昨日から部屋に閉じこもったままなの」


「そうなんだ、声かけても『ほっといて!』の一点張りだし、僕どうして良いか分からなくて……」


きっとお腹も空いてるはずだけど、酷くへそを曲げてしまったのね。妹さん思いのシオン君が悩むはずだわ。


「キッチン借りていいかしら?」


私は思うところがあって、シオン君にそう聞いてみたら


「いいけど、何か料理するの?」


「ええ、食欲のない女の子には、手作りお菓子が一番効果的なのよ♪」


「うわぁ、ありがとう! 何作るのかな? 僕は何をすればいい?」


私の提案に目を輝かせるシオン君、喜んでくれる顔がとってもかわいいのですけど、ちょっと気が早すぎだわ。

それじゃあと食材をチェックさせてもらうと……


「無難にクッキーでも良さそうだけど、少し頑張ってシュークリーム作ってみましょうか!」


「いいね! 妹も大好物なんだ!」


というわけで、さっそくお料理を始める私とシオン君。えっ? シオン君って男の子にしてはお料理の手際が良すぎない?


「これを混ぜればいいんだね?」


「ええ、ダマにならないようにしっかり混ぜてもらえる? そうそう、そんな感じ♪」


生地とクリームをそれぞれお鍋でコトコト煮詰めて、これがけっこう大変なの。ちょっとでも油断するとすぐ焦げ付くし、煮詰めようが足りないとふわっと膨れてくれないし……


「あとはこれをオーブンで焼いて、クリームを入れれば完成よ!」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「いい匂い♪」


二階の自室で一人塞ぎ込んでたあたしのもとに届いたのは、とっても甘くて香ばしい香り。

お兄ちゃん、珍しくお菓子でも作ってるのかな?


カチャリ……


そっとドアの鍵を開け、一階まで降りていくと、何やら楽しそうな話し声。


「……誰かいるの?」


あたしがこわごわ声をかけると、そこには長い漆黒の髪の似合う、とっても美人のお姉さん。

ちょっと目元がきついのが残念だけど、あたしと違っていかにも大人って感じの上品さが漂うお兄ちゃんの同級生がいて。


「シエリちゃんこんにちは! お邪魔してますね!」


「瀬戸……先輩?」


「ええ、今シュークリーム作ってるんだけど、あとで一緒に食べませんか?」


「シュークリーム!?」


美味しそうな単語に思わずゴクリ、そういえばほとんど丸一日、何も食べてなかったのよね。


そのままリビングに入りかけてふっと自分の服装に気がつくあたし。さすがにパジャマのままじゃみっともないよね。


「着替えて来ますっ!」


叫んで自室に駆け戻り、おとなしめのブラウスとキュロットパンツを出したのはいいんだけど……


「痛いっ!」


袖に手を通す時に、指の傷口に巻いた包帯が当たったみたい。スゴくズキズキしてるよぉ!


「ふええぇぇん!」


痛さに耐えきれず、涙がぽろぽろ。あたしの泣き声に気づいた二人が階段を上がってくる足音がして。


「大丈夫かっ!?」


いきなりドアを開けて飛び込もうとするお兄ちゃん、あたし、まだ着替えの途中なのにっ!


「いやあっ! お兄ちゃんのえっちっ!」


思わず叫んだあたしに驚き、慌ててお兄ちゃんが引っ込むと


「私なら大丈夫よね? 怪我してるんでしょ、見せてくれる?」


「うん……」


やさしく声をかけて、瀬戸先輩があたしの部屋に。傷をいたわるように服を着せてくれた先輩は、あたしの指に巻かれた包帯を見るなり


「シオン君! なんでこの子を病院に連れて行ってあげなかったのっ!?」


いきなり部屋の外にいるお兄ちゃんを叱りつけたの。


「え!? そんなひどいとは……」


しどろもどろで目を泳がせているお兄ちゃん、一応手当てもしてくれてるし、怒らなくても良くない?


「ちょっとよく見なさいよこの膿み! たぶん指も腫れ上がってるわよ? 壊死でもしたらどうするのっ!?」


「そ、そう……だよな……」


「分かったら早く病院に行く準備して!」


なんてバタバタした挙げ句、あたしたちはちょっと遠出して休日外来のある市民病院へ。

包帯を解いてもらったら、ホントに瀬戸先輩の心配した通りで、少し先生に怒られちゃった。


「シエリちゃん、あなたも女の子なんですから、体は大事にしないとダメですよ?」


「はいぃ」


瀬戸先輩はあたしにもやんわりお説教。でも先輩って、なんでこんなにあたしたちの世話焼いてくれるの?

あんまり考えたくはないけど、まさか……?

とりあえずうちに帰ってみんなでシュークリームをごちそうになったら、これがすごくおいしくて!

さっくりふわっと膨らんだシューと、とろ~り甘いカスタードクリームが口の中で踊ってるの♪


「美味しすぎるうぅっ!」


あまりの感激に涙がポロリ、人間ってうれし過ぎても涙出ちゃうのね。


「ありがとシエリちゃん、これからも仲良くしましょうね♪」


って、仲良く? それ、どういう意味!?

……つまり、「近い将来、私はあなたのお姉さんになるのよ」ってこと?

そんな……まさか、そんなことって……!!

やだよ、瀬戸先輩がお兄ちゃんの彼女だなんて!

もちろんお兄ちゃんとは一応兄妹の間柄だから、お兄ちゃんが彼女作ってもあたしが文句言える立場じゃないけど、こんなタイミングでなんて、あんまりだよっ!

じわりと目に浮かぶ涙が頬を次々と流れ落ちる。あたし、お兄ちゃん以外の人の前で泣いちゃってる!

ダメだよ! もうこんなとこいられないよ!


「お、お幸せにっ!」


あたしは無理やり叫んで家を飛び出す。けど行く宛なんてどこにもなくて。

近所のおばさんたちにお世話になるのも変に噂されそうで嫌だし、かと言って友達なんて一人もいないし、どうしたらいいかわかんないよっ!

……

結局あたしは行く先が思いつかないまま、近所の公園のブランコに座ってた。

遊ぶつもりもないし、遊べる気分でもない。ただ一人、あふれる涙を持て余してしゃくりあげてるだけ。


「あたし、いらない女になっちゃった……」


悲しい現実があたしの胸に深く突き刺さる。お兄ちゃんはずっとあたしだけを見ててくれる。そう信じて生きてきたのに。

でも実際はそうじゃない。お兄ちゃんだって男の子だもん。恋くらいはするよね。

瀬戸先輩って、すごく美人だし、面倒見もいいし上品だし、それに何より、料理も上手だし……

それに比べてあたしは……


「勝てるわけないよ……」


いつも甘えて泣いてばかり、料理の一つもできないあたし。

お兄ちゃんに愛想つかされたって文句言えないの。

お兄ちゃん、いつも世話焼かせてごめんね。

いつも迷惑ばかりかけてごめんね。

あたし、全然お兄ちゃんの役に立てなくて……

生きてるのがすごくつらいよ……

死んだら天国にいけるかな?

それとも地獄に落とされちゃうのかな?

でも天国にいけたとしても、そこにはお兄ちゃんいないの。

あたしの、あたしだけのお兄ちゃんは、もうどこにもいないの……


「ぐすっ、お兄……ちゃん……」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「まさか!?」


シエリちゃんの反応はもう予想外でした。

私は「お友達になりましょう」って意味で仲良くしましょうねって言ったつもりだったのに。

「お幸せに」ってどういうこと? まさか、私とシオン君が付き合ってるとでも思ったの?

だとすると、シエリちゃんは今、すごく傷ついてるわ! だって、あれほどまでにお兄さんを慕っているんですもの!


「シオン君、シエリちゃんの行きそうな場所教えて!」


「そんなこと言われても、あいつ、行く場所なんてどこにもないよ!」


「お友達とかいないの?」


「たぶんいない、いつもあいつ、爪弾きにされてたから!」


「そんな……!」


私、なんてことしちゃったの!

シエリちゃんを慰めてあげるつもりが、こんなにも傷つけてしまうなんて!

とにかく彼女を見つけなければ、見つけて誤解を解いてあげなければ、シエリちゃんは下手をすると立ち直れなくなってしまうわ!


「手分けをして探しましょう! とにかく早く見つけてあげないと、とんでもないことになってしまうかも!」


「わかった!」


私はシオン君をけしかけて、少し日の暮れ始めた通りに飛び出します。

人影はまばらで、少なくともシエリちゃんらしいものは辺りにはなくて。

本当にこれは急がなくてはならないわね。とにかく彼女を見つけ出して、少しでも早く落ち着かせてあげないと!

シエリの指の怪我についてですが、これは作者自身の体験談です。

皆さんも怪我をあまり甘く見ないようにしましょう!


お読みいただき、ありがとうございました。

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