花吹雪
王妃と私の母は年が近かった。王妃は妃になってからも控えめな性格であったが、その美しさから常に目を引く存在だった。母は公の場では目立たなくしていたが、積極的な性格だったので対照的だった。
母は王妃のことを尊敬しており、一番の友人になりたいと思っていたが、最後まで王妃は母に対して敬語で話していた。王妃は貴族の出身だが妃としては高い身分ではなかったため、母に気兼ねしていたのだろう。
二人とも同じ流行り病でなくなったが、王妃と総司令官の妻では葬儀の規模が違う。母方の祖父はすでに亡く、母の実家の大臣家はなくなり、葬儀を大きく行う理由もなかった。しかし、五年経った今でも王家の方々は母の葬儀が小規模であったことを気にしている様子があり、違和感を感じていた。
父は母の死を悼んでいる素振りを見せたことはなく、母の葬儀が密かに行われたことに疑問を感じたことはない。父が母を見初めて結婚したと聞かされていたが、私はそんなことは信じられなかった。父が母に愛情を持っていたとは思えない。
私は幼い頃から父が好きではなかった。父が任務で家を外すことが多く、母と比べ接することが少なかったからではない。母はやさしく温かい人だったが、父は冷たい人間だった。私に手を挙げたことはないが、いきなり怒りだし母を叩くことが度々あった。なぜ母がそのような扱いに耐えているのか分からなかった。
母が亡くなってから、父は都にいる時以外は北の僻地に勤めるようになり、十三歳だった私を一兵士として連れていった。父はさらに冷酷になり、私はさらに父を嫌うようになった。
次にシビルに会ったのは、王妃の五回忌の時だった。
王妃の法事となれば国中から人が集まっていた。一人娘であり、本家の唯一の女性である王女が取り仕切っており、話しかけるどころか側によることも叶わなかった。遠くから私を認め、笑いながら頭を下げられて、心が弾んだのを覚えている。
母の法事は大臣の娘としてではなく、軍人の妻として行われた。小規模だったが、王自ら姫を連れて自宅にいらっしゃったため、屋敷全体が戸惑った。
「先日は母の法事に来ていただきましたのに、ご挨拶もできず、申し訳ありませんでした。もうすぐ任地に行かれると聞いています。またお会いできるのを楽しみにしてます。」姫に突然会えたことに気持ちが浮かれ、自分が何を話したのか覚えていない。
いつからシビルに心を奪われたのか。初めて姿を見た時か、中庭で言葉を交わした時か。父の言葉の意味がわかっていたにも関わらず、私はシビルに心惹かれていた。その時は自分の気持ちがわかっていなかったが。
それがあの悲劇の引き金になったのだろうか。
桜の花言葉:あなたにほほえむ、心の美しさ、純潔