表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

だいすきっ!! 『お散歩ですよっ!!』

作者: 犬兎

 ゆあ。


 それが私の名前です。


 ゆあはお兄と一緒に住んでます。

 お兄にとってもかわいがられてます。

 お兄はとっても優しいの。

 毎日ちゃんと服を着せてくれるし、三食ご飯も出ます。

 お散歩にだって連れてってくれる。赤色のお気に入りの首輪をつけてくれます。


「お兄~っ! お帰りなさい!」


 帰ってくる頃には玄関の前でお出迎え。元気そうなゆあを見て、お兄も嬉しそうに微笑んでくれます。


 ゆあはそれで幸せ。


「ただいま、ゆあ」





だいすきっ!!



 だいいちわ 『お散歩ですよっ!!』




 ゆあは里見家の『いぬ』。でも、この世界の『いぬ』は普通の犬じゃないのです。デミヒューマと呼ばれる人間と同じような姿をした動物を指します。もちろん見た目が人間だから頭もいいですし言葉も話せます。でも、人間とは違って獣耳。これがデミヒューマの特徴。漢字をあてるときはそっちの世界にもいる動物を指して『ひらがな』で表記したらデミヒューマを意味します。ゆあたちの世界の常識です。

 つまり、ゆあは動物です。人間じゃありません。なので里見家の皆さんにペットとしてかわいがってもらってます。特に、ゆあを拾ってきたお兄はゆあとたくさん遊んでくれます。

 お散歩も毎日お兄が連れてってくれます。今日も夕方六時。ゆあが玄関の前で首輪をくわえて待ってますと、お兄が学校から帰ってきました。


「お兄、お散歩っ!」


「人が帰ってきたら何て言うんだ?」


「あ、う・・・お帰りなさいっ、お兄!」


「はい、ただいま。―――待ってな。着替えたらすぐ行くよ」


「わぁい!」


 ゆあは楽しみで仕方ないです。だって、お兄は昼間は学生だから家にいません。同じく里見家ペットのともくんはゆあに構ってくれませんし、おかあさんは掃除やお洗濯で忙しくて、ぜんぜん遊んでくれません。一番たくさん遊んでくれるのはお兄だけなのです。


「おまたせ。さ、行くぞ」


「首輪、つけてください」


「はいはい・・・って、いうかゆあ、お前、別に首輪しなくてもいいんじゃないか? 誰かに噛み付くってワケでもないんだから」


「お散歩のときの気分ですよう。―――小さいときからずっと首輪をつけてお散歩してる犬を見て羨ましかったんです」


「おまえは『いぬ』だろうが・・・」


「同じようなもんです。―――ルーツは一緒なんですから、見た目が違っても同じなんですよ」


「そういうもんか?」


「そういうもんです」


 そんなわけでお散歩開始。今日歩く一時間コースAは、夕日がきれいな堤防の上を歩く一番素敵なコースです。ゆあは気分上々。お兄はくたくただけどそんなの気にしないのです。


「お兄! タンポポ咲いてる!」


「ああ、もう冬じゃないからな。それくらい咲くさ」


「おおっ、大きな水溜り発見! 飲んでもいい!?」


「のど渇いたなら後で何か買ってやるからはしたない真似はするな」


「お兄~っ! もっと早くぅ!」


「お前のペースで走ってたらこっちの身が持たんっ!!」


 そんな感じですっかり日も暮れました。そろそろお帰りの時間です。しかし、そんなタイミングで来るのはお散歩の定番とも言えるアレ。主さまを一番困らせる面倒なあれですよ。


 急にゆあが立ち止まるとお兄は一瞬で察したのかリードを引っ張ります。でもゆあも我慢はできません。人間と違ってそういう我慢強さはないのです。ただ本能の赴くままに脱糞するのみ!!


「ゆあ! 頼むから止めろ~っ!!」


「ん~っ! 無理ぃ~っ! 絶対家まで我慢できない~っ!!」


 こうなったときの動物の強さはもはや言うまでもないです。それにデミヒューマは人間サイズなのでそりゃあ重いのです。てこでも動きません。結局お兄も諦めてポケットにしまってたビニール袋を取り出します。


「でた~。いや~すっきり快調ですよ、お兄」


「後始末するほうの身にもなってくれよ・・・なんで散歩の前にしておかないんだお前ら動物は?」


「そういうもんです」


 得意げに胸を張るゆあにお兄はため息一つ。ペットのフンの後始末するのは飼い主のマナーであり、宿命って奴ですよ、お兄。


「ただいま~っ!!」


 帰ってきてすぐにともくんのところに行くゆあ。構ってくれないけど、ともくんはやっぱりゆあの親友なのです。


「ね、ともくん。お兄ってやっぱいい人だよねっ!」


「――――」


「私、お兄のことだいすきっ!! ね、ともくんも―――」


「ゆあ、何やってんだ? 夕飯だぞ?」


「あ、は~いっ! じゃ、ともくん、後でね」


 ゆあはともくんに挨拶して部屋を出ます。そしておいしい夕飯の後はまたお兄といっぱい遊ぶんです。そうして、今日もまた幸せに過ごすのでした。おしまい。











次回(予定)予告


「ゆあ、新しい友達だぞ」


「あ、あれは・・・『きつつき』っ!?」


 嘘です。そんな次回はないです。

 ゆあは散歩中にするのが好きです。あの開放感がたまらないのです。でも、トイレのしつけもばっちりです。普段は人間と同じトイレを使ってますよ!!

 次回、『だいすきっ!!』は、



『お姉ちゃんズっ!!』



 とっても優しいお姉ちゃんたち。

 暇なので、ゆあが紹介します。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ペットの面倒な部分がなかったら絶対欲しい。 女の子に首輪なのでR15なのか、別の意味でそうなのかわかりませんがーーおにいと呼ばせている飼い主を一発殴ってやりたいです。 大変ユニークで…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ