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クラスから追放された最弱の俺。最強スキル【コピペ】で成り上がる。  作者: あーる


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8/21

スキルの応用

 ひんやりとした湿気が肌にまとわりつき、鼻をつくような淀んだ悪臭が容赦なく襲ってくる。壁からは絶えず水が染み出し、足元はぬかるんで歩きにくい。


 チャプチャプという自分の足音と、どこからか聞こえる水路を流れる水の音が、不気味に反響していた。


(……本当に嫌な場所だな)


 気分が滅入るような環境だが、依頼を受けたからにはやるしかない。


 俺は頭の中で「ペースト」した下水道の地図情報を頼りに、巨大ネズミが多く目撃されるという区画を目指して慎重に進んだ。


 いくつかの分岐を抜け、少し開けた場所に出た時だった。通路の角を曲がった瞬間、目の前に数匹の黒い影がうごめいているのが見えた。


(いた!)


 松明の光を向けると、赤黒い目をした三匹の巨大なネズミが、こちらを睨みつけていた。猫ほどの大きさはあるだろうか、いや、それ以上かもしれない。


 剥き出しになった黄色く鋭い牙が、松明の光を鈍く反射している。キーキーと威嚇の鳴き声を上げ、明らかに敵意を向けてきていた。


 俺は即座に腰の短剣を抜き放つ。ネズミたちは訓練されているかのように素早く散開し、俺を三方から取り囲もうと動き出した。


(まずい、囲まれたら厄介だ!)


 俺は咄嗟に後退し、ネズミたちが横一列に並ばざるを得ないような、通路の狭い部分へと誘導しようと試みる。


 その動きを読んだのか、一番近くにいた一匹が、低い姿勢から弾丸のように飛びかかってきた!


(速い!)


 だが、ただ目で追うだけじゃない。俺はスキルを発動させる。


(コピー!)


《[巨大ネズミの突進パターン]をコピーしました。クリップボード容量:8 / 10 》


 脳内に、ネズミが描くであろう突進の軌道が、淡く光る線のように浮かび上がる! 俺はその線をなぞるように最小限の動きで身をかわし、ネズミの突進を紙一重で回避した。


 そのまま、すかさず反撃に移る。足元に転がっている瓦礫に意識を集中。


(コピー&ペースト、連続!)


 MPを少しずつ消費しながら、コピーした瓦礫を次々と生成し、後続のネズミたちの足元めがけて投げつける!


「キィ!?」

「チィッ!?」


 突然の投石にネズミたちは怯み、動きが一瞬止まる。その隙を逃さず、俺は最初に突進してきたネズミに駆け寄り、短剣を横薙ぎに振るった!


 ザシュッ!


 浅いながらも確かな手応え。ネズミは甲高い悲鳴を上げ、脇腹から血を流して後退した。


 だが、それで終わりではない。残りの二匹が、左右から同時に襲いかかってきた!


(くそっ、二方向は対処しきれない!)


 咄嗟の判断。俺は近くの壁――一部が脆くなって崩れかけている箇所――に意識を向けた。


(コピー! そして、ペースト!)


 MPをごそっと消費する感覚と共に、俺の目の前に、瓦礫が積み重なったような粗末な石壁が瞬間的に生成された!


 ガンッ!


 左から来たネズミの突進が、生成されたばかりの石壁に激突し、動きを止められる。よし!


 だが、右からのネズミは止められていない! 鋭い牙を剥き出しにして、俺の腕に噛みつこうと迫る! 俺は短剣でその攻撃を受け流した。キィン、と牙と剣がぶつかる甲高い音が響く。


(この牙……!)


 受け流した瞬間、閃きが走った。


(コピー!)


《[巨大ネズミの鋭い牙]をコピーしました。クリップボード容量:9 / 10 》


 できた! これを、俺の短剣にペーストできれば……!


(ペースト!)


《対象への直接的な特性付与はできません》


 やはりダメか! スキル説明にもなかったし、そう甘くはない。ならば!


(空間に、ペースト!)


 MPがさらに減少するのを感じる。そして、俺の手の中に、ネズミの牙とほぼ同じ形状の、硬質だがどこか粗雑な作りの「牙のようなもの」が出現した!


「キシャアア!」


 石壁に阻まれていた左のネズミが、壁を乗り越えようと身を起こした。その無防備な目に、俺は生成したばかりの牙を、全力で突き刺した!


「ギイイイイイイッ!!」


 断末魔の悲鳴。目を潰されたネズミは、その場で転げまわり、やがて動かなくなった。


 これで残り二匹! 俺はMP残量を確認する。半分近くまで減っている。長期戦は不利だ。


 最初に手傷を負わせたネズミが、再び突進してくる。俺は瓦礫のコピー&ペーストで牽制しつつ、その動きを慎重に見極める。相手は手負いだ、動きに精彩がない。


 隙を見て距離を詰め、渾身の力を込めて短剣を突き出す! 狙い通り、ネズミの喉元を貫いた。


 残るは、石壁で足止めされていた最後の一匹。俺は油断なく短剣を構え直し、対峙する。ネズミは仲間たちが倒されたのを見て、少し怯んでいるようだった。


 俺はその隙を逃さず、一気に勝負を決める!


 数合打ち合った後、俺の短剣が、ついに最後の一匹の心臓を捉えた。


「はぁ……はぁ……っ……」


 三匹の巨大ネズミの死骸が転がる中で、俺はその場にへたり込んだ。全身汗だくで、息が切れている。下水道の悪臭と、生暖かい血の匂いが混じり合い、強烈な吐き気を催した。


 しばらく息を整えた後、俺は気を取り直して立ち上がった。依頼達成のため、そして報酬のために、やるべきことをやらなくては。


 ネズミの死骸に近づき、短剣を使ってその鋭い牙を一本ずつ丁寧に切り取っていく。これが金になるのだ。切り取った牙を、用意していた布袋にしまう。


 ふと、ネズミの毛皮に目が留まった。意外と厚みがあって、しっかりしている。何かの防具の代わりくらいにはなるかもしれない。


(これも、コピーしておくか)


 俺は毛皮の一部に触れ、コピーを実行した。


《[巨大ネズミの毛皮(一部)]をコピーしました。クリップボード容量:10 / 10 》


 これでクリップボードは満杯だ。まあ、必要なら後で整理すればいい。牙と、毛皮のデータ。今日の成果としては上々だろう。


 さて、帰るか。そう思って立ち上がり、松明を掲げて周囲を見渡した、その時だった。


 ゴソ……ゴソ……


 通路のさらに奥。暗闇の中から、何かを引きずるような、湿った音が聞こえてきた。それは、今しがた倒したネズミたちの立てる音とは明らかに違う。もっと重く、大きく、そして不気味な響きを持っていた。


(……まだ、何かいるのか?)


 背筋に冷たい汗が流れる。松明の光は頼りなく揺らめき、MPもかなり消耗している。この状態で、新たな敵に遭遇するのは危険すぎる。



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