次なる挑戦
窓から差し込む光が、部屋の埃をキラキラと照らしている。
まずは、今日の活動を決めるため、冒険者ギルドへと向かう。昨日ランクアップを祝福してくれたエマさんに挨拶し、改めてEランクの依頼掲示板の前に立った。
商人護衛、ダンジョン探索、貴族からの指名依頼……Fランクの頃とは比較にならない。
どれを選ぶか。護衛依頼は、他の人間との連携を学ぶ良い機会かもしれないが、数日かかるものが多いようだ。
指名依頼は、成功すれば大きな信用を得られるだろうが、依頼主とのやり取りなど、まだ慣れない部分も多い。
(となると……やはり、ダンジョン探索か)
掲示板の中に、特に目を引く依頼があった。
「廃坑ダンジョン深部調査:未踏破エリアの地図作成と、魔鉱石のサンプル採掘。危険度高。単独行動可。報酬:銀貨2枚+成果報酬」
廃坑ダンジョン。街の外れにある古い鉱山跡で、魔物が巣くっているという噂は聞いていた。
危険度は高いが、報酬も破格だ。
そして何より、「未踏破エリアの調査」や「鉱石採掘」という内容が、俺の【コピーアンドペースト】スキルを活かせる可能性を感じさせた。
「よし、これにしよう」
俺は意を決して依頼票を剥がし、エマさんの元へ持って行った。
「まあ、ソウマさん、最初のEランク依頼が廃坑ダンジョンですか! かなり危険な場所ですが……大丈夫ですか?」
エマさんは少し心配そうな顔をしたが、俺の決意が固いことを見て取ると、すぐに真剣な表情でアドバイスをくれた。
「廃坑内部は非常に暗く、迷いやすい構造になっています。必ず松明と予備の着火具、できればロープやピッケルのような道具も持っていくことをお勧めします。出現するモンスターは、大型の蝙蝠やスライム、鉱石を食べる硬い甲羅を持った虫などが多いですが、深部にはもっと強力な魔物や、アンデッドがいるという噂もあります。決して油断しないでくださいね」
「はい、十分気をつけます」
俺はエマさんの丁寧な説明に感謝し、依頼を受注した。
ダンジョン探索に必要なものを揃えるため、街の道具屋へ向かう。
松明を数本、火口箱、丈夫なロープ、そして小型のピッケルを購入した。これだけで銅貨十数枚が飛んでいったが、必要な投資だ。食料と水も、いつもより多めに準備する。MP回復手段がない以上、長期戦に備えなければならない。
準備を整えながら、廃坑ダンジョンで【コピペ】スキルをどう活用できるか、さらに具体的に考えた。
全ての準備を終え、俺は街の東門を抜け、廃坑ダンジョンがあるという丘陵地帯へと向かった。道中、同じくダンジョンへ向かうのだろうか、重装備の冒険者パーティとすれ違った。
彼らはEランクになったばかりの俺を一瞥すると、「新人が無茶しやがって」とでも言いたげな顔で通り過ぎていく。まだ、俺の実力は広く認められているわけではない。結果で見返すしかない。
しばらく歩くと、丘の中腹にぽっかりと口を開けた、不気味な坑道の入口が見えてきた。これが廃坑ダンジョンか。入口周辺には風化した鉱山の設備がいくつか残っており、寂れた雰囲気を醸し出している。
ゴクリと唾を飲み込む。Eランクとしての初仕事。そして、本格的なダンジョン探索への初めての挑戦。緊張と期待が入り混じった複雑な感情が胸に渦巻く。
俺はリュックから松明を取り出し、火口箱で火を灯した。パチパチと音を立てて燃える炎が、周囲の闇をわずかに照らし出す。
ショートソードの柄を握りしめ、深呼吸を一つ。
(行くぞ)
意を決して、俺は暗く、湿った廃坑ダンジョンの奥へと、最初の一歩を踏み出した。




