第1話
「やってしまった」
僕は指山花音と協力して、会社から1000万円ほど盗んでしまった。パチンコとタバコにハマり、金欠だったのだ。でもそれは理由にならないだろう。
そして、指山と飲みに行った。ベロベロに酔ってしまった僕達は家につくと、そのまま寝てしまった
ピンポーン
インターホンの音で飛び起きた。
「誰だろう……」
ベッドから体を起こし、ドアを開けると、警察官が立っていた。
「……!?」
「まさか、警察!?」
「署まで来てもらおうか」
指山は素直に頷いた。盗ったのは僕だ……指山は何も悪くない。
「いや、指山は何も……」
僕の小さいミミズのような声は届かなかった。
沈黙が流れた。しばらくしてから突然、指山が叫んだ。
「逃げて!」
指山は自分一人で罪をかばおうとしている。何もしていないのに。
どこまで優しいんだろう。いつも助けてもらってばっかりだ。
「……」
僕は何もしていない指山を置いていけない。黙っていると、警察と目があった。
「私のことはいいから!」
僕はとっさにスマホとカバンを持って走り出した。庭から外に出て、狭い路地を曲がり、走っていく。頭よりも先に体が動いた。
警察は当然、僕を追いかけてくる。僕は曲がり道をうまく使って店員を巻いたようだ。
僕は身を潜める事のできる場所を探し、狭い路地を歩いた。
息が整わないまま、路地を抜ける。
たどり着いた場所は僕の家だった。こんな所にあるはずもない僕の家。