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終戦記念日に考える国の指導者選び

作者: 一色強兵

自民党の党首選挙スケジュールを決めた時に、こうなることはある程度予想はついたのかもしれないが、終戦記念日に国のリーダー選びを考える機会が生まれた。


戦前の日本も一応議会制民主主義は機能していて、軍部が暴走した、といっても、ちゃんと国会も首相も納得していたんだから、どっかの国の独裁体制とは同じではないのである。

で、あからさまにこういう評価をしている人は少ないだろうけど、戦前の首相達のいったい何がまずかったのか、あるいは、その首相を選んだ大衆とはどういう考えだったかを冷静にふりかえることも今の時代大事だと思うのである。


私に言わせると、戦前の日本の間違いは、選挙権を持った大衆があまりにも世界情勢に無知でありすぎた、ということがまずあって、それに輪をかけたのが、大衆の意見に忠実であろうとした政治家の存在だったということがある。

この点、アメリカでは、ルーズベルトが、欧州やアジアの戦争に無関心な米国世論を対独参戦にむけてなんとか変えようと、あれやこれや四苦八苦していたのとは対称的だ。日本では国論が戦争の積極的推進に大幅に偏っていたから、軍部が暴走できたのである。つまり民主主義に忠実な政治をやっていたのは、アメリカではなくて日本なのだ。

ここから何らかの教訓を得るとすれば、大衆の意見は国の存在をあやうくするほど無責任になる場合があり、そういうことを無視して大衆の意見に迎合する政治家は文字通り国を滅ぼすということだ。

では、そういう危険を回避できる国のリーダーを常に選択できるようにするにはどうしたらいいのか。


この命題に最初に向かい合ったのはどうも共和制ローマの元老院の貴族たちだったらしい。そして彼等が達した結論は、執政官/独裁官/のちの皇帝になるべき人間に対しキャリアキャップを設けたのである。

こういう地位につくためには、軍務経験と法務官経験とそしてさらにできれば外交官経験を持っていること、というような不文律があったようだ。


この観点で戦前の日本を見ると、内閣も軍部も圧倒的に内政ばかり重視する人間だらけだったことがわかる。なので外交政策が内政アピールの道具として考慮され、最悪の選択を繰り返すことになったのである。

三国同盟断固反対を貫いた、米内光政内閣の場合は、まさにその愚直なまでの外交姿勢が、世論にフクロ叩きにされて倒れたのだ。共和制ローマの元老院議員からすれば、絶対あってはいけない選択が行われたのである。


問題は、日本人がこのことを反省しているかどうかだ。今の選挙も大枠では戦前の選挙とたいして変わらない。人気や人柄、公約などが主に評価され、どんなキャリアを積んできたのかを重視する人は少ない。そして大衆の人気がある政治家が正義、という扱いをされることが多い。

つまり、第二第三の近衛文麿を選ぶ可能性は当時と同じくらいある、ということだ。


ローマ人の定めた不文律の中身は、たぶんこういうことだろう。

軍歴は、発言と行動がどれだけ結びついているかを測る上で適切だ。行動を巡る判断ミスは、勝敗や、犠牲者の多寡に大きく影響する。そこで少なくとも大きな失敗をしていないことは、彼の判断には信頼性があることの証左だ、と受け取っているのだろう。

法務官経験は、法律への理解度、現実適応能力があることの証左という意味だろう。

外交官経験は、外側から自国がどう見られているか、どんな備えが必要かが分かっていることの証左ということだろう。

日本の場合、人望があってもこういう能力保証的な実績を重視しなさすぎたのである。

戦後、戦前では首相候補などとは全く考えられることも無かった外交官出身の吉田茂が首相となり、戦後日本の復興に貢献したのは、敗戦があったからこそ可能となった例外的な人事だったのである。


アメリカの場合、なにしろ議会や政府機関に帝政ローマの政府機関の名前を丸パクリしたような名前を与えていること、大統領候補の大部分を上院議員から選ぶ慣習があることからも、ローマに近いキャリアキャップを行ってきたと見てよいだろう。


さて、自民党の総裁選は、実質的に次期首相選びに直結しているわけだが、候補者がたくさんいる、と言われているけど、果たして本当にそうなのだろうかは、大いに疑ってかかるべきだろう。


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